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谷啓で行こう。

お父さん、なんで個人事業主になろうと思ったの?
数ヶ月前に娘から尋ねられました。

会社を辞めた理由は700くらいあるとは前に書きました。
対して、個人事業主になろうと思った理由は10くらいしかありません。

ひとつは死ぬまで食べていくため。
身も蓋もないのですが、生きていくために金は必要です。
年金もらうまではまだ数年あるし、年金もらったところで生活にはとても足りる金額ではありません。
退職金もあっという間になくなりましたし。

あと、僕がやってきた仕事の延長であれば、仕事をするということは体力的には苦しむけれど、精神を集中してワクワクをカタチにするためだし、それによって誰かのお役に立つことです。
仕事≒生きがい、仕事≒社会貢献、仕事≒経済活性、仕事≒未来創造という点で、自分の人生のために必要なことというのがふたつ目かな。


では、どういう仕事ならばいいのか。
とりあえず早期退職キメたあと、それを求めて失業給付金をいただきつつハローワークへ8ヶ月間通いました。

58歳。
企画職。
希望欄にはマーケティング等の記載をし、毎回その条件であてがわれた端末で検索します。

レストランのマネージャー。
学習塾の幹部候補生。
販売員。
ガードマン。
いろいろリストに上がってきます。
技能実習生の派遣先の実態調査員という仕事もありました。


どうも違う。
何か違う。


求人用紙をプリントアウトし持ち帰って眺めていたときに、求めていたのは仕事に関わる関係性の見直しだということに気がつきました。

そのときに浮かんだイメージは、
これからの人生を、伊武雅刀で行くか今井雅之で行くか、それとも谷啓で行くか。

気づく人は勘所がいい。
もちろん映画『彼女が水着にきがえたら』の話です。
制作はホイチョイプロダクション。
1989年6月公開。


伊武雅刀は豪華クルーザーのアマゾン号のオーナーで金持ち。
人間味もある。
だが。そこに集まる男や女は結構クソ。
金と享楽を求めて船に乗船してきます。
とはいえオーナーの統率力もあって、直の手下はバンバン動く。

今井雅之は謎の中国人。
いちおう保険会社という設定。
ここも今井の統率力で手下は不法行為を厭わずバンバン動く。

対して谷啓
どちらかというと頼りない。
やたら離婚歴を語る。
やたら他国でやってきた謎商売を語る。
統率力はない。
だがイザというときはやる。
若い仲間と一緒にいて皆で楽しんでいる。
そして。
ココが大事なことなんだけど、若い衆も谷啓も、ミッションが明確になったり危機が迫るとバディを組んで仲間と解決する。
最終的に鍵でありクライマックスとなるのは織田裕二と原田知世のバディでありカップルなのですが、乱闘シーンでは臨機応変にそれぞれバディを形成して敵をやっつけます。

映画『彼女が水着にきがえたら』より


そういう人間関係で仕事ができないかと考えたのです。
今までの経験の中で、谷啓と仲間たちのような、居心地良くて集中できて厳しいけれどもしっかり仕事ができた経験を思い返してみました。


最初に入った会社での経験なのですが、文系人ばかり集まった僕らの広告会社に、京セラから転職してきた人がいました。
有松さん。技術職バリバリの理系の人。

その有松さんが僕らの企画チームにプロデューサーとして入ることになりました。
すると、いきなりブレストが円滑に進むようになったのです。
停滞した時の見切りが早い。
決断も早い。
そうして皆のストレスが減りました。
企業のCI(コーポレートアイデンティティ)、CC(コーポレートコミュニケーション)の提案作業でしたが、クリエーティブ案までしっかりまとまりました。

そのときの驚きと経験は僕の中に今も生きています。
例えばマンションの管理組合の理事長になったときには、議長としてほとんどの会議を30分で切り上げたりしました。
「意見を引き出す、整理する、結論を出す」をクリアに進めたためです。
この進め方は参加者をバディとして信頼し、それぞれを尊重したときに最大の結果を導きます。

議論の机上に上下関係とか忖度とかが生まれると、セッションの後に禍根が残ります。

そこで、皆を尊重し皆と結論までのプロセスを楽しむ、そんな仕事の仕方が理想だと考えたのです。

すると、ハローワークで勧められる仕事ではなく、自分が進んでそのような仕事を作る側に回らないとダメだよね、という結論になりました。

これが個人事業主という道を選んだ10の理由のうちのひとつです。
今は個人事業主として幾つかのチームに混ざりながら、このやり方を試験的に実践しています。
特にこの12月からは、これまであまり交流がなかった業務の方々とチームを作り、課題解決にあたっています。これから2年半のプロジェクトです。

できれば、そうして結果を出していく仲間を固定的につくっていきたい。
だから次のステップは会社組織にしていくこと。
できるかなあ。
どうかなあ。

これからの経験を通してもう少し事業としての足腰を鍛えてからですね。2024年も頑張ります。



追伸:
そういえば『彼女を水着にきがえたら』を観て、ついPADIのライセンスを沖縄に取りに行ったことが、その後の沖縄担当を命じられる原因になりました。
その沖縄担当の経験が僕を九州へUターン就職させることになり、さらに早期退職して人生を考え直すときにこうして脳裏に浮かんでくるのですから、映画って本当にいいものですね。


追伸2:
この文を書くにあたりDVDを購入し久しぶりに見直してみました。
ちょうど妻と出会ったころで、そのころの雰囲気を思い出して思わず涙ぐみそうになりました。
いやー、映画って本当にいいものですね。

豪奢な伊武雅刀のアマゾン号チームに対して谷啓のツバメチームは「清貧」と位置付けられています。しかしまあヨットやってたりヘリーハンセンで固めてたりゾディアック持ってたりと、やや無理はありますね。でもそこはホイチョイだから現代(というか当時)のお伽噺ということで。
画像は映画『彼女が水着にきがえたら』より


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