見出し画像

韓国の田舎を旅する方法〜慶尚北道チョンソンの農家さん・おばあちゃんの乱入〜

作業をしているとエスターが恐れていた珍客の乱入が。
近所のおばあさん二人がシニアカートを押しながらスタスタやって来ます。
エスターは何度かこのおばあさん達から「うちの息子(50代)と結婚しろ!」と言われていたのですが、エスターが乗り気じゃないので(当たり前)新入りの私とアイリーンを見かけてこちらへやって来たのです。

「外国人の嫁は嫌みたいだからアイリーンは大丈夫」

とエスターが言うので、おばあさんから「どこから来た?」と聞かれたら「日本です」と答え、おばあさんも「ふーん日本か…」と言って興味を示さなかったので、このまま余計な事を言わずニコニコしてやり過ごす予定だったのに…
「この子(私)はね、お母さんが韓国。全羅南道。だから半分韓国人!」とホストがニヤニヤしながら余計な事を言ってしまい、去りかけていたおばあさん達が「半分韓国人…なら、韓国人だ。うん韓国人だ」と強引に私でも良しとしながら近づいて来てしまったのです。

一人のおばあさんが私に近づき、頭を触り、前髪を上げ、おでこを触りながらじっと顔を覗き込んでくる。
私はじっとされるがまま。

おばあさんの審査に合格したらしく
お「歳は?」
私「37です」
お「結婚は?」
私「してません(今は)」
お「うちの息子と結婚しろ!」
のセリフで「出た!」とばかりに吹き出すアジョッシとエスター。
韓国ハルモニ(おばあさん)の押しの強さにタジタジしながら「アジョッシ!余計な事言わないでよ!」と、私も、韓国語の分からないアイリーンもみんな笑い出してしまう、のどかで激しい2日目の朝の作業。

韓国のおばあさんには誰も敵いません。

画像1

韓国で一番聞かれる質問が年齢。
その後が結婚。
アジョッシも私たち3人に結婚しないの?と聞いて来ます。

アイリーンは結婚する気なし。
今のところ子供も欲しくない。
アムステルダムに家も買ったし、結婚をするメリットが今のところないと。

エスターは結婚する気全く無し。
子供も欲しくない。
保守的な両親とは考えが合わず、あまり顔を合わせていないそう。
エスターが最後に韓国を訪れたのは20代前半の頃。
それ以来、約15年韓国を訪れた事はなかったし、訪れたいと思わなかった。
最後に訪れた時、親戚の家で結婚の質問攻めにあった事が衝撃的だったし理解が出来なかった。
大学を出て、これからキャリアを積もうと言う時に、女の子は結婚をしなければいけない、子供を産まなければいけない、と言う親戚の考えも嫌、韓国の古い考えも嫌でこの土地に再び訪れる事を避けていた。

一緒に暮らしていた恋人と別れ、アパートメントの事、猫の事、抱えている問題を一度ニューヨークに置き、何も計画を立てず20年ぶりに韓国を訪れウーフを通して今のホストのところで3週間程滞在していた。

アジョッシは、他の韓国人の様に結婚の質問はしてくるけど、押し付けたり説教をしてくるタイプではなかったので居心地が悪く事はなかったし、結婚に対する考えをみんなオープンに話す事が出来ていました。
アジョッシは、生まれ変わったら結婚をしないと言っていました。
絶対に結婚しないで、自由に色々な国を旅をするんだ、と。
結婚は責任が生まれ、自由を失う。
外国に出向く事が難しい分、世界中から訪れるウーファ達を通じて広い世界との繋がりを持つ事もホストをしている理由の一つなのかもしれません。
ただ私は知っているのです。
次の場所に向けてキラキラとした目で去っていくウーファー達を見送る時、どこにも属さず旅の途中にいる彼らがとても自由な存在に見え、「あぁ、まだ自分だけはこの場所にいる」と言う気持ちになり世界との距離がより遠いものに感じてしまう時もある事を。

この間も唐辛子のヘタを取る手は止めず。
単調な作業をしていると、ポロポロと本音や人生哲学がこぼれ落ちる。
おかげで大量の唐辛子のヘタが取れました。


最後まで読んで下さりありがとうございます! よろしければサポートして頂けるととても嬉しいです☺︎ 今後の活動費(交通費、材料費)として使わせて頂きます。