見出し画像

読書記録 12月  竹田ダニエル「世界と私のAtoZ」、ハン・ガン「少年が来る」 など9冊

すでに2月になってしまったので記憶が薄れつつありますが、振り返り。
2023年最終月はよくばって9冊。読んだ順にご紹介。

ポアロのクリスマス

一冊目。
新訳版。すごく美しい表紙。完全にジャケ買い。
クリスマス前に購入して、しばらく机に飾ってました。

高校生の頃、たくさん読んだアガサ・クリスティー。
今読むと、女性の描かれ方とか画一的で時代の移り変わりを感じる~。
重ための読書が続いた後のミステリー小説は、純粋にストーリーを楽しめてすごく好き。

サピエンス全史(上)

二冊目。
なんか長くて難しそう、高いし。。。と思っていた「サピエンス全史」に文庫版が登場~。
書店でぱらぱらめくってみてたら、女性に関するパートがあり、立ち読みで面白かったので購入。

人類がどのような戦略で他の種を支配下におき、地球上で繁栄することができたのか的な話ですが。。。

買ってよかった。めちゃくちゃ面白かった。読んでて興奮する。本当におもしろくて一気読み。

人類が集団として統率をとることができるポイントは「存在しないものを信じる能力」。ここ目からうろこなところ。宗教とかお金とかそういうやつ。。。

こんな壮大な話を、むしろこんなコンパクトにまとめるんかい~。ハラリ様の「まとめ力」に乾杯。
下巻は「科学革命」を中心に展開されるということでますます楽しみ。。。

世界と私のAtоZ

三冊目。
青山ブックセンターをふらふらしてたとき、綺麗な表紙~と思って手に取った。
著者の竹田ダニエルさん、気鋭の学者さんかなあ、と思いながら読み始めた。

もうすぐに魅了されました。文章のキレがよく、論旨がクリアだし倫理的で読んでいて快感ですね。もう本当に大好き。

性別を問うのもどうかと思いますが、読みながら男性はこれを書けないだろうなぁと思っていたところ、Jwaveでお声を聴いて納得。

急に訪れた竹田ダニエルブーム。読了の数日後に池袋のジュンク堂でサイン本を発見したので、二冊目の本「#Z世代的価値観」も購入。ほくほく。

Z世代とか言いますけど、世代に関係なく今生きている人たち全員が自分のこととして耳を傾けるべき意見が詰まっている良書です。

気候変動問題があり、富の集中があり、未来に不安を感じざるを得ない今の社会。前世代がやり散らかした地球でどう生きていくのさ!というとき、倫理的な方向に向かうのはもっともだと思った。
一読じゃもったいないから再読しよう。
強力におすすめ。

リディア・ミレットの「子供たちの聖書」の世界に似ているかなあと思った。


夜明けを待つ

四冊目。
自宅での終末医療を扱った「エンド・オブ・ライフ」の著者佐々涼子さんがこれまでに書いたエッセイをまとめたものが出版されたので購入。

佐々さんは現在重い病を患っておられるということにまず非常にびっくりしました。「エンド・オブ・ライフ」を読んだときも思ったけれど、人間いつどのようになるかわからないということを改めて思い起こすことになりました。

死ぬことは生まれた時から決まってること。
どのように生きたか(何を成し遂げたかということではなくどんな態度で生きたか)ということ、感謝の気持ちで幕を閉じることができるよう毎日を大切にしたいと思うのです。

「推し」の文化論 BTSから世界とつながる

五冊目。
BTSファンの友人お勧めの本。
コロナの前あたりからだろうか、神保町の韓国書籍専門店「チェッコリ」に若い女性がたくさんやってくるようになったのは。

明らかな客層の変化に驚き何事かと探ってみると「BTSの〇〇も読んだ本」がきっかけでK-POPから韓国文学への関心が高まっていることを知った。

それだけでなく、韓国語を学ぶ人も増えていた。
昨年、TOPIK(韓国語能力試験)を受験した時には、若い女の子たちがたくさん試験会場にいて、試験の規模も(会場数とか開催回数とか)大きくなっていて本当に今回の韓流ブームはこれまでのとは全然違うと実感した。

語学を学ぶ、習得すると言うのは、コツがあるにしても絶対的に時間が必要なもの。タイパ、コスパ重視の現在において、自分の時間を何に使うのかという選択肢に韓国語学習が入るというのは、ヨン様ブームにはじまる韓流二十年の中で最大のブームではないか。いやブーム、趣味を超えている。

本書を読んでみると、竹田ダニエルさんの本にもあったキーワード「セルフラブ」がBTSの楽曲のメッセージにもあって、多くの若者の共感と支持を得ているそうだ。
いつもBTSのバラエティ動画ばかり見ていたが、楽曲もちゃんと注目してみよ。。。と思った。

わたしが誰かわからない ヤングケアラーを探す旅

六冊目。
これはXのタイムラインに流れてきたのと、もともとヤングケアラーという言葉に興味があったので購入してみた。「ケアを開く」シリーズも好きだし。

読んでみて思ったのは、ヤングケアラーというのは、今後、もっと掘り下げられ支援の必要性が明らかになっていく分野(というのかな?)なんだろうなと思った。
例えば、「フェミニズム」といっても、一人ひとりのおかれた環境によって問題視していることが違うように。

ヤングケアラーと言われる人が誰をどのようにケアしていて、本人がおかれている状況がどうなのか。それによってサポートが必要となることは千差万別である、というような印象をもった。

「ケアを開く」シリーズは基本的には学術系の書籍なので用語的に難しいところもあったが、きちんとテーマを取り扱うので今後もチェックしていきたい。

少年が来る

七冊目。
斎藤真理子さんの著書「韓国文学の中心にあるもの」に紹介があり、前から読んでみたかった本をついに手に取った。。。

ハン・ガンの作品は「菜食主義者」「すべての、白いものたちの」を読んだが、難しくて詩的で、、という印象を持っていた。しかし、「少年が来る」はそれらの作品とはトーンが全く違う。光州事件という事実を描いているからだ。

光州事件については、事件のあらましを検索して読んでみても、あまりにもひどすぎて、それ故か現実のものとして実感することが出来なかった。

しかし、本書はフィクションであるにもかかわらず、凄惨な事件の様相をこの目で見て聞いたかのような強烈な感覚が迫ってくるのだ。

作者のハン・ガンは光州出身でありながら事件のすこし前に、たまたまソウルに引っ越したため事件を逃れた。現場にいなかったものとしての痛みを抱えながら、資料を調べつくして書かれた本書は、事件で亡くなった人々への深い哀悼につつまれており、まさに鎮魂の書といえる。

死者による語りというアイデアと全体構成の巧みさに感嘆しつつも、この重要なテーマを取り扱うことへの作者の覚悟に心を動かされた。

各章は語りべがあいまいなまま進むので、読者は状況から誰が話をしているのかをつかみながら読んでいくことになる。章が進むにつれて、だんだんと全容が見えてくる時のぞくっとする感じは本でしか味わえない感覚だろう。

光州事件は韓国では長らく「なかったこと」にされていた。ハン・ガンは強い怒りとともに、絶対にこれを書いて残さねばならないという意志をもって書いたのだと思う。
小説家ができうる仕事として、最高のもののひとつと言えるのではないかと思った。

韓国カルチャーに興味がある方は読んでおくべき一冊。
「べき」的な言葉は慎みたいのですが、本書に関してはとっぱらいます。

モモ

八冊目。
知ってはいるが読んだことが無い本だった「モモ」。
誰もが見たことのがある、オレンジ色の素敵な装丁のあの本。
ず~っと後回しにしていたのは「児童文学」だと思っていたからかもしれない。

ところが、これはまさに今、この社会を描いているではないか。資本主義によって時間を奪われた私たちは自分の時間を取り戻すことが出来るのか。。。

やらないことで何かを失うのではないか、機会損失の不安で休むことが出来なくなってしまった我々を見事に描いている。

正直、なぜこの本が児童文学枠となっているのか、もったいないなあ。児童文学でのままでもいいけど、大人向けの装丁でも出たらいいのにな~。

特捜検察の正体

九冊目。
2023年最後の本は、「特捜検察の正体」。神保町の三省堂書店で面ざし(本棚に表紙を見せて陳列しているやつ)になってたので購入。

著者は、厚生労働省の幹部だった村木厚子さんの冤罪事件やカルロス・ゴーン氏の担当弁護士として有名な弘中惇一郎さん。

東京地検特捜部が~、という言葉をニュースでよく耳にしていても、実際のところ「特捜部」って何なのか、私、知りませんでした。

まずは、特捜部とは何か、という説明からはじまる。
特捜部は検察組織の中にあり、警察組織が関与せず立件できる仕組みなので、外部組織のチェック機能がはたらかず、冤罪が起こりやすい構造にあるということなど。

著者が担当した実際の事件を例に、可能な限り関係者が実名で登場するので、臨場感があり読み物としてすごく引き込まれる。

裁判のくだりも面白くて、無罪判決を出すのは、検察官だけではなく検察組織全体にNOを表明するものであって、裁判官であれども精神的な負担が大きいものらしい、みたいな話とか。。。

巨悪に切り込む特捜部、という一般的なイメージは果たして本当にそうなのか。報道を素直に受け取るだけでなく、批判的な目を養う意味で一読の価値がある本。


最後まで読んでいただきありがとうございました。




この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?