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佐藤可士和のすごさは”Smap”の仕事に全て集約されている!|「佐藤可士和展」レポート-その①-

はじめに

国立新美術館で開催された「佐藤可士和展」を観てきました。(2021年4月19日に観覧。新型コロナの感染者数の影響で4月25日より東京に緊急事態宣言が出て休館になったので、行っといてよかった…)

佐藤可士和さんは、日本を代表するクリエイティブディレクターです。

セブンイレブンのプライベートブランドの全パッケージやユニクロのロゴなども有名です。手掛けた事例が皆さんにも身近なものが多く、その仕事を目にしたことがない人はなかなかいないと思います。

今や超売れっ子クリエイターとしてデザイン業界だけでなく、マーケティング業界の人にも多大な知名度があります。クリエイティブの力で自社をブランディングして欲しいという企業が後を絶たないことでしょう。

そんな佐藤可士和さんの魅力を「佐藤可士和展」で見ることができたのでnote初投稿として紹介したいと思います。

佐藤可士和さんについて
佐藤 可士和(さとう かしわ)/クリエイティブディレクター
1965年東京生。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。
株式会社博報堂を経て2000年独立。同年「SAMURAI」設立。
ブランド戦略のトータルプロデューサーとして、コンセプトの構築からコミュニケーション計画の設計、ビジュアル開発まで、強力なクリエイティビティによる一気通貫した仕事は、多方面より高い評価を得ている。
グローバル社会に新しい視点を提示する、日本を代表するクリエイター。
主な仕事に国立新美術館、東京都交響楽団のシンボルマークデザイン、ユニクロ、セブン-イレブン、楽天グループ、今治タオルのブランドクリエイティブディレクション、ふじようちえん、カップヌードルミュージアムのトータルプロデュースなど。


■”佐藤可士和のすごさは”Smap”の仕事に集約されている

我々もよく知る数多くのブランディング戦略を手掛ける佐藤可士和さん。

そのすごさは、”Smap”の仕事に全て現れているといって過言ではありません。これはSAMURAI設立後一発目のしごとだそうです。展示作品を眺めるだけではわからないその仕事のインパクトを語りたいと思います。

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引用:https://kashiwasato.com/
この仕事について
中居正広、木村拓哉、稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾の5名からなる人気アイドルグループSMAP(1988〜2016)の10周年を控えた『S map 〜SMAP 014』(エス マップ〜)のクリエイティブディレクション。SMAPの13枚目のオリジナルアルバムとして 2000年10月14日発売。下記SAMURAIのHPよりクレジットを引用。
Client : Johnny & Associates, Victor Entertainment, Inc.
Creative Director : Kashiwa Sato
Creative Director : Taku Tada
Art Director : Kashiwa Sato
Planner : Taku Tada
Graphic Designer : Yoshiki Okuse
Design Coordinator : Katsufumi Tomioka
Creative Agency : Tugboat
Creative Agency : Samurai

1.”単なる”青赤黄のビジュアル

このBlue、Red、Yellowの3色のビジュアルは実に痛快です。何かを説明する絵でもなくSMAPのメンバーのカラーでもありません。色も三原色と呼ばれるもっとも基本的な配色であり、見方によっては何のひねりもないカラーリングのようにも感じます。

”単なる3色”という呆気ないビジュアルです。

この”単なる”にクリエイティブのイノベーションがあったと僕は思っています。

上質なクリエイティブを発揮しようと思うと、もっとアーティスティックなフォトグラフや上手いキャッチコピーや手数の多いイラストで応戦したいところです。広告デザインが”巧(うま)さ”によって競合していた中、”単なる3色”を投じたところにイノベーションがあったと思います。

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引用:https://kashiwasato.com/

この3色は、CDケースの構造(表蓋、裏蓋、ディスクトレイ)から発想したアイデアのようです。数々の名レコードジャケットが世に出ているわけですから、クリエイターならSMAPと共にどんな上等なアートワークにしようかとCDジャケットのビジュアルに想いを巡らせるところです。

そこもまた、青赤黄色のパーツを用意し、別々に組み合わせることでCDケースのデザインをやってのけています。パーツ毎の色を変え"Smap"のラベルを貼るだけで成立させてしまっています。

これもまた”単に3色のパーツを組み立てただけ”というデザインです。

また新聞広告においても、この”単なる3色”のビジュアルに徹底しており、1ページ全面(15段広告)にただの3色でコミュニケーションするのは、デザイナーとしては相当な勇気がいると思ってしまいます。

なぜなら、新聞一面(15段)が約4000万円の高額なの広告枠だからです。こんな高額なキャンバスを前にクリエイティブを奮おうと思ったら単なる青赤黄の3色じゃ済ませられません。。

臆病なデザイナーなら怯えてしまう4000万を嘲笑うような3色!
とてもイノベーティブです!

新聞一面がいくらとかではなく、全ての媒体で捉え、それらの総合的なインパクトをイメージしていれば怯える必要はないのでしょうね。


2.集中して投じられた広告予算

このキャンペーンは、広告費としては低予算だったようです。僕が学生時代(2003年頃)に特別講義で聞きました。深夜にテレビCMを数本打ったら使い切ってしまうほどの予算だったようです。

そんな限られた予算を佐藤可士和さんは渋谷という街にこのビジュアルを氾濫させることに投じました。様々なノベルティグッズの他、ビルボード、駅ポスター、街頭のタペストリー、ラッピングバス、工事の仮囲いなどにこの3色が溢れました。

当時美大生だった僕たちはこの一連のキャンペーンを「渋谷をジャックするクリエイティブ」として新たに記憶しました。

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そしてその様子は朝のニュース番組やワイドショーなどで放送され、多くの話題を呼びました。結果的に深夜にテレビCM(15秒)を数本打つよりも何倍もの広告効果があったことになります。

限られた資源を最大限に活かしました。TVCMというマスメディアを利用しないで、それ以上のインパクトを呼んだこともとてもイノベーティブです!

当初の依頼はCDジャケットのデザインだったそうです。結果的にCDジャケットと広告を一貫してやっているところにも効率的に予算を配分したことが窺えます。(妄想ですけど)


3.人気アイドルが国民的スターになるタイミング

痛快なまでの簡潔なビジュアル、限られた予算を最大化させた奇策は、何を隠そうSMAPというクライアントだからこそ成立したと言えます。

シンプルで大胆なコミュニケーションが世の中に受け入れられたのもビッグネームとその個性にマッチしていたからに他なりません。

当時を振り返ると、SMAPはこのCDアルバムが発売される2年前に「夜空ノムコウ(1998年)」で初のミリオンヒットを達成し、アルバムが出る直前に「らいおんハート(2000年)」でもミリオンヒットを叩き出しました。

これまで"コントもできるアイドル"としてテレビの世界でお茶の間の人気を獲得してきたアイドルグループが、本職といえる"歌"でも成功したことで名実共に絶頂に達した時でした。

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まさにそんなタイミングで佐藤可士和さんはこの仕事を引き寄せたわけです。

そしてこの仕事が10周年と相まってSMAPを国民的スターに押し上げていきました。そして「世界に一つだけの花(2002年)」がその地位を確固たるものとしたことは言うまでもありません。

その後も佐藤可士和さんが多くのSMAPのアートワークを担っていることからもSMAPのブランディングに多大な貢献があったことが窺えます。


■”佐藤可士和”の3つの特徴

このSmapの仕事は、佐藤可士和さんが博報堂から独立されSAMURAIを設立して最初の仕事だったそうです。始めが大事とは言いますが、まさにこの仕事がその後の仕事を全て象徴しています。

ここからは僕なりに思っている佐藤可士和さんのすごさを説明したいと思います。


特徴①:痛快なほどの簡潔なクリエイティブ

先にも解説したSMAPを”単なる3色”でコミュニケーションしたように佐藤可士和さんのクリエイティブは痛快なほどに簡潔です。佐藤可士和さんが手掛けるロゴデザインは「誰でも作れそう」という声があがるほどです。(ご本人はこれを最高の褒め言葉とおっしゃっています)

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簡潔なデザインは一発で見る人の印象に焼き付けられ記憶に残ります。

SUIT SELECTやHONDA NシリーズやTSUTAYAのTマークなど、痛快なまでに簡潔なロゴはBlue、Red、Yellowの3色のコミュニケーションに端を発しているように思えてなりません。

アートボード 1 のコピー

引用:https://kashiwasato.com/


特徴②:アイコンとなるデザインを局地的に全集中

街にテーマビジュアルを氾濫させる手法はUNIQLOの海外進出でも活かされています。

初めてニューヨークに旗艦店が出店される時に佐藤可士和さんは、SMAPのビジュアルで渋谷をジャックした時のようにカタカナ「ユニクロ」とアルファベット「UNIQLO」のロゴを作りアイコンをデザインしました。

ビルボードやポスターは勿論、仮囲いやタクシーの行灯などにも、ありったけのユニクロビジュアルをニューヨークの街に投下しました。

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引用:https://kashiwasato.com/

また、第3のビールが世の中にデビューした麒麟の極生PROJECTのキャンペーンでもプロダクトと同じビジュアルが街に氾濫しました。
ふじようちえんの園舎そのものが遊具になっちゃう発想などが話題を集め、高い広告効果を得ることも経験が活きています。

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このように、ロゴのみならずプロダクトや建築空間などをアイコンとして捉えコミュニケーションする方法を佐藤可士和さんは ”ICONIC BRANDING”というフィロソフィで実践されています。


特徴③:産業ごとリブランディングするダイナミックさ

そして、忘れてはいけないのはクライアントがビッグネームであるということです。楽天、セブンイレブン、ユニクロ、三井物産、日清、ヤンマー、DAIWAなど佐藤可士和さんの仕事はSMAPをはじめ皆が知る日本を代表する企業ばかりです。

余談ですが、日本が誇るテニスプレイヤー錦織圭と大坂なおみのスポンサーもUNIQLOとNISSINです。佐藤可士和さんデザインの真っ赤なロゴが燦然と2人の胸にあしらわれています。

潔く呆気ないほどシンプルなデザインが最大限に生かされる依頼主と新たな将来像を創造するからこそ、佐藤可士和さんの仕事は注目されます。

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恐るべきところは今治タオルのプロジェクトのような地域の衰退傾向にあった産業をもメジャーにしてしまうようなブランディングも手掛けられており、ビッグネームのクライアントでなければ生きないという見方だけでは捉えきれない凄みがあります。

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クライアントに共通するのは、次なる未来に向けその産業自体をブランディングできるリーダーシップがあることだと思います。

産業そのものをリブランディングする気概でプロジェクトを進める大胆さが大きなエネルギーを生んでいます。

クライアント企業のアンテナの高い問題意識と佐藤可士和さんのディレクション力との融合がシンプルで明快なプロジェクトとなり社会に発信されているのだと思います。

それは同時に「デザイン」「ブランディング」「クリエイティブディレクション」という手段の必要性すら世の中に伝え、僕たちクリエイターの活躍の場を切り拓いていることは間違いありません。


さいごに

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いかがでしたか?「佐藤可士和展」を観て、”Smap”の仕事が佐藤可士和さんを象徴するアイコンとして紹介しました。

僕は高校時代にデザイナーという今の職業を志しました。そのきっかけがまさしく佐藤可士和さんのSMAPの仕事でした。この仕事は僕のデザイナー人生の起点であり、その後も幾度となくメディアに登場している様子を参考にさせていただいてます。

佐藤可士和さんの仕事は、必ずメディアで紹介されています。これは単に佐藤可士和さんの注目度が高いからという理由だけでなく、ちゃんとメディアに出るようにプロジェクトをデザインしています。

そこには自身のホームページで実績紹介するよりも何倍もの”シビアな目”や”勝手な批評”にさらされることでしょう。だからこそ認知度が上がり論議を呼びます。今回も国立美術館という大きな舞台(メディア)でその集大成を世の中に発表しました。

次なる階段を駆け上がる佐藤可士和さんを今後もウォッチしていきたいと思います。

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