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それは きっと厄落とし

「ただいまー。」
「買って来たよー。」
買い物当番の こざる二人組が帰って来ました。

「お帰りなさーい。」
「お帰りー。」
「コーヒー、入ってるよー。」
「わーい!」

その前に、冷蔵庫に入れるものは入れて…と、こざるちゃんがエコバックを開けて...

「あれー?」
「わー!!」

なんと、卵パックの中の卵が割れて黄身がこぼれています。

「あれ? あれ? どうしてだろう?」
こざるちゃん、慌てています。

「エコバックの外にまで染み出ていないから、もしかしたら今じゃない?」
こざる達、布巾で拭きながら、汚れの被害が それほど広がっていないことを確かめています。

「ああ、僕が気をつけないで床にドスンって置いちゃったからだ。」
こざるちゃんが しょんぼりと言います。

「そんな、大した問題じゃないよ!」
「うん、たぶんエコバックの中で、卵パックの位置がずれて斜めになっていたんだよ。」
「そんなにたくさん割れていないんじゃないかな?」
卵のパックをそおっと持ち上げた こざるが言います。

「もし全部割れてたとしても、そんなの全く大したことじゃないよ!」
こざる達、うんうん頷きます。

「みんな、どうもありがとう!」
こざるちゃんも、ちょっとニッコリします。

「浮かれてたんだ、帰り道も桜が満開で 蝶蝶もひらひら飛んでいて、あー春だなぁ いいなぁって浮かれちゃって、注意しなかったんだ。」
「いいんだよ、春だし、嬉しいし。」
「それに、きっと これって厄落としだよ!」
「厄落とし?」
「そうだよ、こういうちょっと残念なことは、もっと大きな災いを代わりに避けてくれるんだよ。」
「りこちゃんも 何か失敗したり、落とし物をしたりすると、よくそう言ってたよね。」
こざる達、うんうん頷きます。

りこちゃんというのは、こざる達と一緒に暮らしている人間のおばあさんです。

「ほら、この前、りこちゃんと 病院に行った時に、りこちゃんの車椅子の持ち手にかけておいたレジ袋、気がついたら なかったよね。」
「そうそう、ゴミ袋用にかけていたレジ袋、きっと風が強かったから飛んでいっちゃったんだよ。」
「レジ袋に留めておいた可愛い洗濯バサミも飛んでいっちゃって、あーあーって。」

風の強い日で、あれ? そういえばレジ袋は?と 気がついた時には なかったのです。

「でも、その日、病院でのCTも採血検査も、結果は大丈夫だったよ!」

そのレジ袋と洗濯バサミが厄落としだった、というわけです。
金額的にもショボいので、大した厄落としではないのですが。

「割れた分で、何か玉子料理を作ればいいんだし、コーヒー飲んで ちょっと一休みしようよ!」
「そうしよう!」

こういう時は、何はともあれ ちょっと一休み、お気に入りの画集を眺めながら お茶の時間です。
スポーツで、試合中に嫌な流れの時は、その流れを断ち切る為に 良いタイミングでタイムをとりますよね。
あのイメージです。
何となく嫌だなと感じた時は タイムをとって、自分をご機嫌にするといいと思います。


こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
割れていたのは3個だけで、それで出汁巻き卵を作りました。
よい毎日でありますように(^_^)

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