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風薫る五月がやって来る

「ヤダー」
「待ちなさーい!」
「マク、ヤダー」

こざるちゃんが 外を覗くと、キャッキャと小さな女の子が嬉しそうに走ってきます。
後ろから、お母さんが小さなマスクを持って追いかけてきます。
お母さんも、笑顔です。
楽しそうです。

「ああ、本当にとってもいい天気で、僕たちは こんないい季節の中にいるんだ!」
こざるちゃんが青い空を見上げて呟きます。

まだ暑くなく、寒くもなく、そよ風が心地よく、木々の若い葉がグングン育って新緑の季節です。

「この瞬間を丸ごと保存しておきたいな。」
「空も雲も そよ風、新緑、心地いい空気、楽しそうなチビちゃんと お母さんの様子、僕たちの嬉しい気持ち….」
「生きているって素晴らしいなぁって思う感じ…」
「全部丸ごと缶詰にシュワって閉じ込めて、マスクしなくてもいい時が来たら、開けるんだ!」
こざる達は、今のこの気持ちを 自分の心にちゃんと保存しておこうと思っています。

「それにしても、こんないい季節に、マスクつけていないとならないなんて!」
「うーん、仕方ないよね。」
皆、うんうん頷きます。

「今日は、まだ涼しいけれど、もうあっという間に蒸し暑くなって、
熱中症警戒の時期になって、その上にマスク….。」
「もう考えただけで、息苦しいよ。」
「そんな季節にも対応できる優秀なマスク! あればいいのになぁ。」
「今は、それどころか普通のマスクすら店頭にあるのを見たことないよ。」
「そうだよねー。」
皆、ちょっと考え込んでしまいます。

「僕たちが考えても仕方ないよ、そういう技術の知識ないんだもん。」
「そうだね、餅は餅屋!」
「日本の技術者さん達、頑張ってください!」
「そして必要な人に 必要な物が ちゃんと滞りなく届きますように。」
皆、うんうん頷きます。

ラジオから 皆の大好きな歌が聴こえてきます。

「輝く五月の草原を さざ波はるかに渡ってゆく
飛行機の影と雲の影 山すそかけおりる
着陸間近のイヤホーンが お天気知らせるささやき
MORIOKAというその響きがロシア語みたいだった」

松任谷由実の『緑の町に舞い降りて』です。

こざる達も一緒に歌います。

「三つ編みの髪をほどいてごらん タラップの風が肩にあつまる
もしも もしもこの季節 たずね来ればきったわかるはず
あなたが気になりだしてから 世界が息づいてる」

「そろそろ おやつ食べようよ!」
「うん! それがいいよ。」
「いつ何時も まずは腹ごしらえだね。」
「じゃあ りこちゃんに言って来る!」

こざるちゃんが歌いながら、りこちゃんの部屋へ向かいます。

「銀河の童話を読みかけて まどろみ 心ははばたく
あてもなく歩くこの町も去る日は涙がでるわ」

「りこちゃーん、おやつにしようよ! 今日は シュークリームだよ! 一緒に食べよう!」

「セロファンのような午後の太陽 綾とる川面をゆっくり越えて
いつか いつかこの季節 たずね来ればきっとわかるはず
あなたが気になりだしてから 世界が息づいてる
新しい笑顔お土産に誰かのもとへ帰る」

こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
もう風薫る五月ですね。
よい毎日でありますように (^_^)

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