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吉本隆明・ハルノ宵子『開店休業』

 吉本隆明さんが 晩年、雑誌dancyuに執筆していたエッセイに
長女のハルノ宵子さんが解説のような形で執筆したエッセイ集。

 dancyuに掲載していたものなので、主役はもちろん食べ物である。
昔懐かしい食べ物や それにまつわる様々なこと、
正月や七草粥、お月見、クリスマスなど、年中行事のことも書かれていて、
食いしん坊の私は、その様子をあれこれ想像する。
自分もそうなのだが、食べ物には沢山の思い出がくっついていると思う。

 この中の『老人銀座と塩大福』というエッセイは、
吉本さんと奥さんが お子さん達に「とうとう、念願かなって」
巣鴨の地蔵通り(老人銀座)に連れて行ってもらって、
大好きな塩大福を食べるという話である。

 これについて、ハルノ宵子さんは
「思い出づくりは、じぃじやばぁばのためなのだろうかーと、
考えることがある。
本当は私たち子供世代が、あと数えるほどしかない父・母との
思い出をつくりたかったのではないだろうか。(中略)
でも確かに私たちはもらった。
「老人銀座」の初夏の夕暮れの空気を忘れない。
無理して時間をさいて"してあげた"つもりでも、
最後まで子供は親からあたえられているのかもしれない。」
と書いている。

 私もよく同じように思う。
母が70を過ぎてから、いつ何があってもおかしくないし、
たとえ生きていたとしても足腰が弱って出かけるのが
億劫になるかもしれない。
 そう思って 出来るだけあちこち そんなに豪勢ではないけれども、
一緒に出かけるようにしていた。
 出かければ、母も楽しいし、喜ぶだろう、
嬉しいだろうと思っていたのだ。
 確かに母は嬉しそうだったし、楽しんだと思う。

 けれども ある時、私が母を連れて行っているのではなく、
実は 母が私をあちこちに連れて来てくれているのかもしれないと思った。
 母も元々出かけるのが好きとはいえ、年とってくれば面倒くさいと
思った日もあっただろうに、一度も嫌がらずに一緒に出かけてくれた。
 この本を読んで、ああ、親とはそうなのだなと感じた。
昔はそれほど仲良しだったとは思わないが、
今はもしかしたら仲良し親子なのかもしれない。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
以前のこの季節は、母と何度かオープンカフェへ行きました。
気持ちいい青空の下で、母はニコニコと嬉しそうでした。
天気がいい時に、また行かれればと思います。
よい毎日でありますように (^_^)

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