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声を聴いて、世界が広がって

「そろそろ おやつの時間だよ。」
「あれ、もうそんな時間?」
「何だか ぼんやりしちゃうね。」
皆、気が抜けたように うんうん頷きます。

「今朝、とても寂しいニュースがあったんだ。」
「りこちゃんと ぼく達が 毎日 当たり前に聴いているラジオ番組が 来月で終わっちゃうんだ。」
「毎日、とっても楽しみにしていて、今朝も いつものように聴いていたら…」
「そしたら 今年度で終わりですって…」
「ぼく達、皆、ぼーっとしちゃって…」

毎日、普通に 何も考えずに そこにいた家族が 来月、引っ越しして家を出ますと
突然、発表したようなそんな感じです。

「りこちゃんも、ぼく達も、皆、ラジオ大好きで、声が聴こえてくるのが嬉しかったのに…」
「ラジオって、音だけ、声だけなんだけど、その声で 表情が見えるよね。」
「うん。実際には姿形は見えないんだけど、でも 今、どんな顔をして話しているのか、見える気がするよね。」
皆、うんうん頷きます。

不思議なことに、姿形、表情もちゃんと見えるテレビよりも、
声だけのラジオの方が、ずっと身近に感じます。

「番組で 面白いこと言って 大笑いしていれば、りこちゃんも ぼく達も一緒に大笑いして…」
「ほろりとする話には、一緒に涙ぐんだり…」

声には 表情があります。

「源一郎さんの本を読んでいると、源一郎さんの声が聴こえてくる感じがするしね。」
皆、うんうん頷きます。

「ぼく達、高齢の りこちゃんがいるから、なかなか遠出したりできないんだけど、
でも この番組のおかけで、ものすごく世界が広がったよね。」
「知らなかった世界が、向こうから どんどんやって来てくれて…」
「知らずに思い込んでいたことが、実はそうじゃなかったんだーっていうことも あったよ!」
「新しい世界が時空を超えて 縦横無尽に広がっていっている感じなんだ。」

ラジオから 明るく元気に 曲が聴こえてきます。

「遊ぶこと忘れてたら老いて枯れんだ ここんとこは仕事オンリー 笑えなくなっている
ガラクタの中に輝いてた物がいっぱいあったろう?
『大切なもの』全て埋もれてしまう前に」

スキマスイッチの『全力少年』です。

こざる達も 一緒に元気よく歌います。

「さえぎるものはぶっ飛ばして まとわりつくものかわして
止め処ない血と涙で渇いた心臓潤せ
あの頃の僕らはきっと全力で少年だった 怯えてたら何も生まれない」

「おやつ食べて、元気出していこうよ!」
「そうしよう!」
「じゃあ りこちゃんに、そろそろ おやつ食べようって言ってくる!」

こざるちゃんが歌いながら、りこちゃんの部屋へ向かいます。

「澱んだ景色に答えを見つけ出すのはもう止めだ!
濁った水も新しい希望ですぐに透み渡っていく」

「りこちゃーん、そろそろ おやつだよー。
今日はバレンタインデーだけど、鯛焼きだよ! 一緒に食べよう!」

「積み上げたものぶっ壊して 身に着けたもの取っ払って
幾重に重なり合う描いた夢への放物線
紛れもなく僕らずっと全力で少年なんだ
セカイを開くのは僕だ 視界はもう澄み切ってる」


こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
NHKラジオの『すっぴん!』、8年間続いていましたが、あと一ヶ月で終了なのです。

よい毎日でありますように (^_^)

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