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人事評価は上司の「主観」で判断しなさい!?客観的には判断できないワケ

もしあなたが上司だとして、年度末に部下の人事評価を下すとします。そこで、できるだけ正しい評価を下すよう求められたら、あなたはどうアプローチしますか?

おそらく多くの方は、部下の過去の行動について考察したり、あるいは記録をたどったり、また評価基準に目を通したりして判断を下すと思います。

つまり、客観的かつ分析的に評価するというアプローチです。極力「好き」「嫌い」という個人的感情は、入り込まないように注意するかもれません。しかしこのアプローチでは、部下に評価を下すことは永遠にできないのです。


認知は正常なのに決断ができない

ある日、有能なビジネスマンだったエリオットは、ひどい頭痛に襲われました。すぐさま病院へいくと、大きな脳腫瘍が発見されたのです。直ちに切除するための外科手術を受け、その際に腫瘍により損傷した「右前頭葉皮質」も切除されました。この「右前頭葉皮質」は、脳の「感情」を司る部位でした。

しかし幸いにも彼は、他の脳の部位は損傷していなかったため、運動することも、読み書きすることも、計算することも健常者と変わらず、あるいはそれ以上に正確にこなすことができました。
ところが、たとえば朝の朝食にパンを食べるか、あるいはご飯を食べるかというような簡単な選択が、彼にとっては簡単ではなくなっていたのです!

人間は感情で判断している

エリオットは、パンは小麦の粉を練って焼いた食べ物であり、ご飯は米を煮た食べ物で、色や味も認識できるのですが、どちらを食べるべきか判断ができないのです。一体どういうことなのでしょうか?
なぜなら彼は「今日の気分はご飯だなー」といった、感情的な感覚が失われてしまっていたからなのです。

人間は論理的に物事を考え、目標を見据えて意思決定を下すと思われるかもしれませんが、実際は違います。南カリフォルニア大学の神経科学者アントニオ・ダマシオによると、人間が意思決定を下すときに、感情を基準にするケースは実に95%にものぼるそうです。

ソマティック・マーカー仮説

感情は思考より先に来ます。「好き」「嫌い」といった感情がなければ、どんなに冷静に分析できたとしても、最終判断を下すことができないのです。特に選択肢の多いものになればなるほど、感情的判断は欠かすことができません。

このプロセスを神経科学者のダマシオは、「ソマティック・マーカー仮説」と名付けました。それは、自分が体験した過去の同じような状況時に、快不快の感覚を呼び起こし、そのときの「感情」を表出させることで、優先順位をつけ、選択肢を限定させ、そのなかから意思決定をすることで効率化を図っていく理論のことです。

人事評価は「主観」で判断する

人事評価のような複雑な判断を下すとき、様々な事象を並べ、その選択肢のなかから客観的かつ冷静に1つだけを選択することは、不可能といっていいでしょう。そこには「好き」「嫌い」といった過去の体験も踏まえた「主観」が入り込みますし、ある意味そうあるべきなのです。

だからといって、感情のままに評価しろといっているわけではありません。適切な意思決定には、理性と感情の両方が必要であるということです。また感情が意思決定のプロセスに大きく影響しているのなら、少なくても気分が高揚しているときよりは、落ち着いている状態のときに判断を下すべきでしょう。

そしてなにより、上司の主観が入る以上、上司の「社会性」「気質」「道徳」といった価値観が重要だといえるでしょう。


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