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ネガティブな気分が仕事のパフォーマンスを上げる!楽観性のワナ

暗い落ち込んだ気持ちで仕事をするより、明るく元気な気分で仕事をした方が作業もはかどるし、良い成果を上げられそうに思えます。あまりくよくよせずに、気楽な気持ちで取り組むようアドバイスされることもあるでしょう。しかし仕事においては、あまりポジティブな気持ちでばかりで取り組むのは、かえって危険かもしれません。


ネガティブな気分の方が注意力が高まる

ポジティブな気分のときはやる気も高まり、なんでもできそうな気になります。一方でネガティブな気分のときは、またなにか失敗してしまうのではないかと、緊張した面持ちで仕事に取り組みます。しかし、このネガティブで緊張した態度の方が、仕事においては有利に働くこともあるのです。

研究者のマーティン・ショーン・ガベルとタラ・マコーリーは、ポジティブな気分とネガティブな気分とでは、パフォーマンスにどう影響を与えるかの研究をしました。

彼らは、実験参加者に意図的に過去の悲しかった出来事を思い出させたり、悲しい話しを聴かせることで、ネガティブな気持ちにさせました。そのうえで、「Navon」という大きな文字や、小さな文字やで構成された図形を読み解く課題を与えたのです。この課題は、大局的視点から詳細な視点への注意を切り替える能力を試すものです。

すると、ネガティブな気分にさせられた参加者の多くが、大局観的視点から課題を解くことにおいて成績が低かったのに対し、詳細な視点を必要とする分析的なアプローチでは、高い成績を収めたのです。つまりネガティブな気分の方がより注意深く、細かなところにも気づけたということです。

一方でポジティブな気分の人は、全体を見渡すことを得意としており、創造的な課題においても有利であることが別の研究からもわかりました。

上司の気分で仕事のパフォーマンスが変わる

仕事に置き換えてみると、もしあなたが企画開発やクリエーターであれば、ポジティブな気分は優位に働きますが、逆に注意を要する経理担当や品質管理だと、ポジティブな気分はかえって注意を散漫にしてしまうということです。

そこでさらに興味深い研究が、ビクトリア・ヴィッサーら研究者によって行われました。

彼女は、リーダー的立場にある人の振る舞いが、部下の仕事ぶりにどう影響されるか二通りの上司役を俳優に演じさせました。ひとつの役は幸福感ある上司役で、もうひとつの役は不幸な役の上司です。

それぞれの上司の下で、想像力を要する課題と分析力を要する二つの課題を与えたところ、想像力を要する課題では、幸福感を示す上司の下で2倍の成果があがったのに対し、不幸感を示す上司のもとでは、分析力を要する作業の成果が4倍も高まったのです。

ネガティブな態度を活かす

上司がどんな態度や気分で部下に接するかによって、その気分は部下に伝染し、仕事のパフォーマンスに大きく影響を与えます。それと同時に、伝染した気分がポジティブだったのか、あるいはネガティブだったかによって、創造的にも分析的にも部下を変えてしまうのです。

ネガティブな気分は決して悪いことばかりということではなく、優れた側面も持ち合わせています。もしあなたが上司であるならば、ときにはネガティブな態度を使い分けることで、部下の注意力を高めることもできるのです。

明るく上機嫌な上司が必ずしも良い上司とはいえません。最近では職場の幸福を示す「ウェルビーイング」や「心理的安全性」を高めようと、過度に従業員の満足度や働きやすさに気にしてしまいがちですが、少なくとも外科医や飛行機の安全を守る管制官の上司は、ある意味悲観的あってほしいと願います。


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