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ビジョンを熱く語る会社に人は集まらない!?
あなたの会社が、まだ知名度の低い起業したての会社だと想像してみてください。そんな会社で優秀な人材を集めるのは簡単なことではありません。だからといって、給料や休日を増やすといったような採用条件を高める余裕はまだありません。
そこで、仕事の社会的意義や経営者の想いなど、企業の価値観を前面に押し出した求人広告を打つという案が思い浮かびました。そういった魅力は、求職者の気持ちを惹きつけると考えたからです。しかし、そのような広告は、かえって求職者の応募を減らしてしまうのです。
応募者は46%も少なかった!
新しく起業した会社や中小企業の二代目社長であれば、将来におけるビジョンや熱い想いをもって経営にまい進していることだと思います。できることなら、そのような会社の価値観にフィットした人材に来てもらいたいと思うでしょうし、経済的な余裕がないのであれば、会社の価値観こそがもっと自社のウリと考えるでしょう。
ところが、エラスムス大学のムラット・タラクチ教授らが、795社のベンチャー企業を対象に各企業の求人広告を追跡調査したこところ、社会的意義を掲げた企業の求人は、そうでなかった企業と比べて46%も応募者が少なかったという一見、私たちの予想と反するような結果になってしまったのです。これは、いったいどういうことなのでしょうか。
社会的意義を強調すると魅力が薄れる
研究者らによると、ベンチャー企業が採用の際に社会的意義を強調することは、収益を上げるのはまだ先で、成長が遅く、成功する可能性が限られているとみなされることが多いと述べています。また、従業員個人の欲求はわきに置くように求められている、と思われてしまう可能性もあるといいます。
つまり、「まだ実績が乏しいが、想いだけはだれよりも熱い、どうか信じてついてきてほしい」そういわれても、そんな賭けには乗りたくないということです。
もちろん、社会的意義に共感する求職者もいるかもしれませんが、実際に応募をするとなると勝手が違います。やはり将来のキャリアや今後の可能性、あるいはリターンを期待するのが普通です。想いだけでお腹は満たせないのです。「世界をよりより場所にしたい」などと意気込んで応募してくる変わり者は、あくまで少数派です。
一方で、すでに実績のある企業が社会的意義を謳っても、そうした問題は起こりません。すでに多くの従業員が働いている知られた存在であり、給料面や福利厚生、教育などの人材投資においても十分なリソースをもっているとみなされているからです。
強調すべきは具体的キャリアプラン
これらはスタートアップのベンチャー企業を対象とした研究ですが、おそらく地方の中小企業も同じような傾向にあるでしょう。
これらの企業が求職者に対してまず強調すべきは、抽象的な想いや理想ではなく、具体的なキャリア形成であったり、将来の見通しなど、経済的利益を含めたキャリアアッププランなのです。そうしたうえで、企業の紹介ページにビジョンや社会的使命を謳えば、それらはプラスに作用するでしょう。
二宮尊徳のことばを引用すれば、「経済なき道徳は単なる寝言」なのです。
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