見出し画像

操作ミスから、”フィジカルUX”を考える

カメラや医療機器は特にそうですが、操作をするときに椅子に座っていることはほとんどなく、様々な姿勢や環境で、迅速で確実な操作が求められています。

こういう状況では誤操作を前提としたUIを考えておかなければなりません。

ゆっくり、しっかり操作できないことで、誤操作が発生しやすくなります。
それでも状況は待ってくれないという、負のスパイラルに入ってしまいますので、早くそこから抜け出なければなりません。

誤操作をしにくいモノ作りはプロダクトデザイナーの仕事ですが、、誤操作したときの対応はUIデザイナーの仕事となります。(どっちも大切)



デジカメの消去ボタンの動作

実はこれまで使っていたカメラの消去ボタンの動作が、昔と違っていることに気づき、この記事の内容を改めて考える機会となりました。

私がイメージしていたのはこのような操作です。(概念モデルというやつです)

①再生モードにする
②誤操作で消去ボタンを押してしまう (消去確認メニューが表示される)
③消去ボタンをもう一度押すとキャンセルされる (消去確認メニューが消える)

ところがそのカメラのUIでは、③が動作せずメニューボタンに指を移動して押す必要がありました。(OKボタンでも「中止」を確定できる)

この場合、キャンセルためのUIが2つ存在していることになります。

一つは、消去メニューの選択項目(この場合は「中止」)をOKボタンで確定して終了する方法です。

もう一つは、キャンセル戻り(BACKなど)による、消去ボタンを押したこ自体を取り消し操作です。(誤操作してしまったユーザーにとってはこちらの方が自然な概念モデルになります)

その中でも、「同じボタンを押したらキャンセルできる(元に戻る)」という動作が最も効率的です。(指を移動せずに最小の操作でキャンセルできる)

家電量販店でいくつかのカメラを触ってみましたが、キヤノン、パナソニック、ソニーは消去ボタンでキャンセルができました。
出来なかったのは、ニコンとオリンパスでした。
(調査不十分で間違っていたら御免なさい)

話が少しキャンセル方法から逸れてしまいますが、ニコンユーザーのために補足しておきます。

ニコンは独特で、まず一眼系とコンパクト系で動作が違います。

一眼系は、消去ボタンの2回押しで画像が削除され、キャンセルするためには再生ボタンを押すようになっています。
これは、消去しやすい方向の操作を採用しているからです。

さらにコンパクト系では、消去ボタンで戻れないのは共通ですが、消去メニューの中に戻る(キャンセル/いいえ)項目があるタイプと無いタイプがあります。
無いタイプは、メニューボタンなどで戻れるのですが、カーソルが「この画像を消去」になっていて、これも消去しやすい方向になっています
(このUIではキャンセルのための操作ガイドが無く、他社メーカーを使っているユーザーは戻り方に迷う可能性があると感じました)

※私はニコンユーザーではないので、違和感を感じていますが、実際のユーザーは使いやすいと感じている可能性が大きいと思います。


失敗操作こそ効率的にリカバリ (戻りやすさのUX)

ボタンを押し間違えた(気づかずに押してしまった)ことで、ユーザーにとっては予定外で、焦ったりイライラしたりしてしまいます。
そんな時だからこそ効率的にリカバリ(キャンセル)できる手段を提供してあげるべきです。

それとは逆に、意図的に何かを実行しようとしているときには、その達成が報酬として得られますので、多少操作に手間がかかっても気になりにくいといえます。

そのセオリーから考えても、デジカメの消去ボタンの2回押しはキャンセル動作が最適だと思います。

機能によっては実行優先なものもある

医療機器の一部の機能やクルマの運転、カメラのシャッターも同様ですが、機能がタイムラグ無しに動作することで、ユーザーのコントロール性が上がり、結果的に確実で安全な利用につながります。

そのため安易な一貫性や統一ではなく、機能ごとに十分に操作要求/動作要求を検討する必要があります。(これこそがUXデザイナーの仕事です)

その一つとして、何度も繰り返す操作では、誤操作のリスクがあったとしても実行までを最小にすることで満足感が高くなる場合があります。

ニコンにとっては消去は操作頻度が高く、実行性を高めることでユーザーメリットを高めるという判断なのです。指の置き換え無しに消去を実行するためにはこのUIしかありません
そもそもの誤操作を防止するために、ボタン押下力量や凸量の調整などを厳密におこなえるメーカーだからこそできる、プロのためのUXと言えます。

~追記~
ニコンの消去UIについて続編を書きました。ニコンファンの方もそうでないかたも是非読んでみてください。

まとめ ~操作の「安全性」について考える~

失敗しない人はいません。ミステイク(考え違い)やスリップ(考えなく誤操作)は日常茶飯事です。

それが何かのアクティビティの最中で、普段と違う時間や空間であればなおさらです。(暗くて見えない、狭くて片手操作、急いでいる等など)

他にもキャンセルしやすいUIのメリットとして、冒険的学習があります。
デジカメやスマホなど新しい製品では「3歩進んで2歩下がる」ことで学習がおこなわれますので、安心して冒険できるようにしておかなければなりません。

一方で、操作に慣れてくると誤操作は少なくなり、効率的に操作したくなるのは当然です。

・ブランドや商品コンセプトとしてどのようなユーザーをターゲットにするのか
・現実のユースケースはどうなっているのか
・ユーザーの概念モデルはどうなっているのか
・利用状況(環境)はどうなっているのか

など考えなければならないことは沢山あり、

ひとつの製品や一人の担当者の好き嫌いではなく、会社としての長期的で複雑な判断が必要です。(この辺りがフラフラするとブランドとしての信頼が無くなる)

この答えが簡単に出せないからこそ、CXOが必要でだったり、UXデザインが面白い仕事なのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?