デジカメUI入門

デジカメUI入門:8 スマホ連携

デジカメUIにとってスマホとの連携は大きなターニングポイントでした。

スマホからみれば撮影能力を拡張するだけに見えますが、
デジカメからみると欲しかった機能の多くを手に入れられる幸せな結婚のようなものです。

以前は、「スマホ vs デジカメ」でしたが、今は「スマホ + デジカメ」に考え方が変わっています。

スマホ登場以前

写真を撮る行為を広くとらえると、写真を撮る計画をたて、必要なイメージや知識を得る準備の段階から、撮影後の写真の整理や活用、さらに長期保存といつでも見られる環境まで全てが含まれます。

カメラが完全な製品になるために、デジカメの登場以来その全てを実現しようと進んできました。

フィルムカメラでは、カメラは撮影するだけ、その後現像、プリントして、アルバムに貼って保存したり見たりするというものでしたが、デジカメはその全てをカメラ内でおこなうことができるものに思えたのです。

その結果カメラ自身でさまざまなことをできるよう、スライドショーやカレンダー管理機能などスマホアプリに比べて中途半端な機能をつける結果になりました。

そこに登場したのがスマホ連携です。

実態はカメラの通信機能(’Wi-Fi、Bluetooth)とスマホアプリの組み合わせですが、スマホというプラットフォームを活用することでユーザーの体験を広げることができます。

Lumix Image Appのトップ画面 さまざまな機能が並んでいる。



大画面が利用できる

デジカメの背面液晶も20年前に比べれば格段に大きくなりましたが、スマホの画面ほど大きくなる気配はありません。
手に持って使うものである以上、やみくもに大きくすることは難しいと判断しているようです。

スマホと連携することで、大きな画面が必要なユーザーは、大画面スマホやタブレットを利用することができるようになりました。

機器から独立している

リモコンとして利用することで機器の設置状態とは関係なく、自由な場所やスタイルで撮影することができます。いわゆる「UIの外部化」です。

スマホが従来のリモコンと違う点は、カメラの全てにアクセスし、場合によってはカメラUIを超えることもできる点です。
特に、ズームやフォーカスが電動化されていれば、カメラに触れなくてもよくなるため、撮影領域や表現領域の拡大が期待できます。

また、独立していることで、データのバックアップ先としても有望です。
万が一カメラが事故にあっても、スマホにデータが残っていれば失わずにすみます。


外部との通信機能を持つ

インターネットに対して常に接続できることは、写真を撮る動機としてSNSの存在が大きい現在では、写真の活用やコミュニティへのシェアがすぐにおこなえることは、それだけ撮影機会を増やすことにつながります。

特に期待が大きいのが「フォトレシピ」です。
撮影には、カメラの設定とそれ以外の環境作りのノウハウの両方が必要ですが、クラウドとカメラの両方に繋がっているスマホはまとめて扱うのに最適な存在といえるのです。

カメラに必要な情報を常に最新のものにしておいたり、必要なときに取得することができるようになり、閉じたUIからオープンで動的なUIに変わっていくことができます。


位置情報の取得

GPSやWi-Fi、基地局の情報によって、野外だけでなく室内でも高精度に位置情報が取得できます。

ただし、撮影方向はカメラ自身でなければ取得できないので、データの連携が必要です。


高い処理能力とリッチなインターフェイス

現在でもカメラメーカーは、スマホに比べてカメラの方がリッチなインターフェイスを持っていると考えています。

これは、ダイヤルやレバーを含むSUI(ソリッド・ユーザーインターフェイス)が撮影行為に最適であるという考え方です。
現在の撮影という行為を前提にすれば間違っていませんが、今後のカメラと撮影者の多様な関わり方を想定した場合には狭い考えになってしまいます。

スマホと連携することで、スムーズなタッチ操作だけでなく、カメラや音声認識などリッチなUI技術を利用することができます。
その利用方法が、まだ十分に活かされてはいませんが、撮影前後も含めて活用されるときがくると思います。


スマホ連携から生まれる新しいカメラのカタチ

スマホ連携に特化し、液晶モニタなどほとんどUIを持たないカメラが「レンズスタイルカメラ」です。

GoProなどのアクションカムやTHETA、ドローンカメラなども同じUI構成の製品になります。

カメラの形が自由になるだけでなく、撮影スタイルや撮影領域が大きく広がりることがメリットです。

OLYMPUS AIRの自由な撮影スタイル

RICHO THETAはスマホ連携があったからこそ生まれたカメラで、静止画や動画と違って、見るという行為にインタラクションを必要とする点で非常にスマホ的である



ユーザーがUIを自由に作れる

スマホのアプリは誰でもという訳にはいきませんが、かなり自由にユーザーが作れる環境が揃っています。

スマホと連携するメリットとして、ユーザーが好みのUIを作ってカメラを操作することが含まれることになります。

実現するためには、カメラメーカーがSDK(API)を用意する必要がありますが、他のIoT製品でもSDKを提供しているものがありますので、今後広がる可能性は大きいと思います。

OLYMPUS AIRのOPC Hack&Make Projectのホームページ
SDKと3Dデータを配布し、ユーザーがカメラとの関係を作ることができる



スマホ連携とは違う話になりますが、外部拡張UIで考えると、底面にあるバッテリーグリップ用の電子接点やアクセサリーシュー周辺の接点はシリアル通信ができるようになっているので、ArduinoやRasPiを接続すればモノ作りの面でもUIを拡張することができます。


いよいよ「デジカメUI入門」の後半の山場を迎え、デジカメの可能性、未来へと進んでいきます。
他の記事もぜひ読んでみてください。 

→目次ページはこちら  デジカメUI入門:0 はじめに

記事内の画像はメーカーのホームページから引用しています。
画像にリンクが貼られています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?