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デジカメ時代のフィルムカメラ開発(妄想では無い!)

明けましておめでとうございます。2023年最初の投稿です。本年も色々なことを体験し、思考していきますのでよろしくお願いします。

昨年末にPENTAXから新たなフィルムカメラ開発のニュースが飛び込んできました。まだ具体的な情報が少ないため、どのような活動になるのか、そこからどんなカメラが誕生するのか分かりませんが、2023年はそのストーリーが一緒に楽しめるのではないかと期待しています。

カメラが発売されるよりも、これまで主にプロカメラマンとの対話のなかで作られてきたカメラという製品が、初めて本格的にアマチュアユーザーとの共創によって生み出されていくことになりそうです。これはカメラの体験設計にとって重要なポイントになるはずです。自分が開発に参加したカメラで撮影する気分とはどんなものなのか味わえるのではないでしょうか。

製造における3Dプリンターの活用や、カスタム可能にモジュール化された操作系(UI)やソフトウェア、それらをスマホアプリとユーザーアカウントによって管理し、コミュニティとの心地よい関係を作っていける。そんな世界が作られることを妄想しています。

デジカメはAI技術を活用して進化していくことになりますが、フィルムカメラは「ヒトが撮影する」ことをどれだけサポートできるかがポイントになりそうです。撮影前のイメージやモチベーションをどのように持たせ、それを実現するためのオペレーション全体から結果を得て、次の撮影につなげていくサイクルを脳内、身体、カメラ、コミュニティ、メーカーがどれだけ連携して一つの体験にしていくのかだと思います。

現在フィルムカメラに興味を持っている人は体験に対して強い意識を持っている人です。そのため撮影体験を拡張できる可能性があると考えます。もちろん昔のフィルムカメラのようにシンプルに静かに自分だけの世界で使いたい人も体験の一つとして尊重されなければなりません。

ヒントになる新しいユーザーとメーカーの関係性、モノとヒトとの関係性のモデルケースは、クラウドファンディングを始めとして沢山あります。それらをきちんと体験設計のプロセスで再構築きればカメラの次の25年の一つの成功事例になれるはずです。


デジタルによって「味」となったフィルム

デジカメ登場前でもフィルムの種類ごとに化学的な特性があり雑誌などで特集が組まれたりしていましたが、現在のようにそれが強調されてきたのはデジカメが登場し、SNSによって写真表現がエモーショナルな表現手段になってからだと思います。

何度か記事にも書いていますが、デジカメの登場によって誰でも写真の表現を遊べるようになりました。モノクロ写真とカラー写真を交互に撮ることも可能です。そんな環境の中でフィルムの色調や階調などを「味」としてデジカメに取り込む動きが出てきました。

代表的なものとしてはFUJIFILMの「フィルムシミュレーション」ですが、各社それぞれフィルム表現に寄せたピクチャーモードを搭載するようになりました。現在使われているピクチャーモードの中では一番人気なのではないでしょうか。

つまりデジカメという極めてニュートラルで味気ないものが登場したことによって、フィルムに特別な価値が再発見されたのだと思います。


本物の「体験」としてのフィルム

フィルムで撮ったような表現をデジカメでおこなうだけでは飽き足らず、装填、枚数制限、現像、プリントという一連の体験を含めたフィルム体験を求める人たちが現われてきました。昔体験していた人だけでなく、これまでフィルムを体験したことが無い若い方も楽しんでいるようです。

現在においてフィルムで写真を撮ることは手間とお金がかかるものとなっており、写真としての結果を求めているというよりも、精神性や所作を嗜む「写道」のようなものなのかもしれません。

生放送と言えばリアルタイムで放送される映像のことを指しますが、不思議なことに過去の姿を撮影した写真に対して「生写真」という言葉が存在します。

この場合の「生」とは複製品ではなくフィジカルに作られたものという意味となります。具体的には印刷やデジタルのような大量に複製が作られるものではなく、一つづつ化学的な処理によって作られた「本物」という意味を持たせています。

フィルムカメラが今でも話題に上るのはこの「生写真」の魅力があるからです。単にフィルム調の映像が欲しいだけであればフィルムシミュレーションでも良い訳ですが、それでは納得できない何かがあるのです。

フィルム写真では、露光、フィルム現像、プリント現像の3回の化学処理がおこなわれます。デジカメ写真を化学的にプリント現像することでも生写真は作れますが、やはり3回の処理を体験したいというのがフィルムカメラの体験価値になります。

さらに生写真の中でも「チェキ」は特別なもので、特にアイドルイベントで活用されています。即時性というデジカメ的な特性をもちながら世界で1枚だけの 物理的で限定的なアナログの魅力があり、時間を掛けて写真を手にする体験とは違いますがデジタル時代のフィルム体験の一つになっています。


フィルム撮影はYouTubeで共有できるのか?

デジカメの登場はYouTubeの誕生に大きな影響を与えただけでなく、コンテンツとしてのデジカメ撮影体験も可能になりました。撮影の過程と結果(写真)を共有することで一緒に撮影に行っているような感覚になれるものです。キャンプ動画、バイク動画、釣り動画と同じようにカメラ動画も可能になっています。

ではフィルムカメラの場合はどうなるのでしょうか。結論から言うと編集の力によって、デジカメ撮影と全く同じように撮影の過程と結果を一つのコンテンツの中にまとめることができます。撮影後フィルムを現像し、それをスキャンするかプリントをスキャンし撮影→結果→撮影→結果・・・のようにまとめることができるわけです。

ただこのようなコンテンツにした場合には、実際の撮影者が味わっている、撮影時の想像と不安、現像やプリントを待つ時間、紙のプリントを手に持つ感覚などが抜け落ちてしまいます。ライブ配信という手法であれば「時間」に関しては表現できそうですが現在の現像・プリント事情では時間が掛かり過ぎて難しいかもしれません。

簡単に共有できない体験だからこそフィルムカメラを使う訳ですので、YouTubeで共有できないことがマイナスになるとは思いませんが、価値ある体験を共有したくなるというのも現在的な感覚ですので、みんなが羨ましく思えるようなコンテンツを生み出せれば体験価値がよりアップするはずです。


大胆予想! PENTAXフィルムカメラはこうなる

ほろ酔いの正月気分で妄想してみます。

PENTAXのデジタル一眼レフのマウントはフィルム時代から引き継がれているKマウントです。そのため普通に考えればKマウントを使いそうですが、一方でマウントアダプターを使って他社レンズを使うのにはフランジバックの関係で最適とは言えません。フィルムカメラを止めてしまった他社ユーザーの受け皿になることも期待できますので、中間マウントを介して複数のマウントシステムを切り替えられるようにするというアイデアが考えられそうです。

フィルムカメラの時代にはモータードライブ(モードラ)や裏蓋の日付焼き込み(デート機能)などのオプションを自分で組み替えるのが普通でしたので、マウントだけでなくグリップやフィルムの裏蓋を交換することでUIをカスタムできるようにするアイデアも楽しめると良いと思います。これらの体験も含めてフィルムカメラの継承が達成できるのではないでしょうか。


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