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オフィスという場のチカラ

昨日はフィジカルなオフィスとバーチャルなオフィスの役割から、ハイブリッドなオフィスを目指す話しを書きました。

いまオフィスに注目している理由は、プロトタイピングが企業やクリエイティブチームの中で実施される時に必要な環境として重要だと考えているからです。それを実施するための環境が「新しいオフィス」だと定義しています。

従来の設計確認のための試作から、新しい体験価値を発見するプロトタイプへ飛躍させていくためには、チームの理解や空気だけでなく、ツールや作業環境が大きく変わらなければなりません。

プロトタイピングを実現するための環境としてオフィスという場を考えていきます。


プロトタイプ作成機能としてのオフィス

例えば何度も作り変えることを前提に10分の1の費用や時間で作れる試作品を目指そうとすればこれまで外部の試作業者(部門)に出していた作業の一部を自分たちでその場で加工する必要がでてきます。これは3Dプリンターやレーザーカッターが卓上サイズになることで現実になってきています。

さらにVRスタジオによって、さまざまな環境での利用をプロトタイピングすることもアセットを組み合わせることで比較的簡単に実現できるようになりました。

フィジカルな製品のプロトタイプだけでなく、アプリやWebのGUIではPCの中で実装(コーディング)前のプロトタイピングが既に実現しています。

このようなプロトタイプを「作る場所」としてのオフィス機能が想定されます。さらに機器や技術が一般化し、個人作業の領域になってきたとしてもプロトタイプを作る過程をメンバーで共有する場としてオフィスが必要だと考えています。

一つは技術の伝承のためです。プロトタイプを作る技術はメーカーにとって技術の主体でないため正式に技術展開がおこなわれず個人の技術に終わってしまう状況を沢山みてきました。同じ場所で作業をすることで緩い伝承ができ技術の発展が期待できます。

調理と食事が一体になった焼肉のようにプロトタイプも作成中に感じることや考えることが湧き出てきます。それをチームで共有することでベストなタイミングで評価をして、次のアイデアへと切り替えていくことができるようになります。

このようなオフィスの姿は1990年代にIDEOによって実践されトム・ケリーさんの「発想する会社!」に詳しく書かれています。私のオフィスへの理想もこの本の影響を大きく受けています。


コミュニケーション機能としてのオフィス

プロトタイピングは脳の中にあるインスピレーションを外在化させ、多くの関係環境とのマッチングを調整していくプロセスですが、その中でひときわ大きな役割をはたすのがチームでのコミュニケーションです。

素晴らしいプロトタイピングはコミュニケーションによって実現しますし、素晴らしいコミュニケーションはプロトタイピングによっておこなわれると言えます。

プロトタイピングがフィジカルなツールとデジタルなツールの両方によって実現しておりIoT製品のようなものでは全てを使ってコンセプトを磨いていく必要があります。

コミュニケーションにおいてもオフラインとオンラインを適切に組み合わせることで最適化が実現できると考えており、その組み合わせはプロトタイプ作成に合わせておこなわれることになります。


ナレッジ/データ保管共有機能としてのオフィス

デジタルデータは主にPCやサーバーの中にあるためオンラインで扱いやすいのですが、アナログデータはそうはいきません。

ここで言うアナログデータは、本来デジタルデータだったもののプリントアウトして配布したり承認という単純な情報をハンコという物理的な制約によって価値づけるものではなく、空間や製品など現物やさまざまなサンプルなどを指します。

しかし従来アナログで扱われていたものの多くが、プリントアウトされた書類と同じように元はデジタルデータである場合が増えてきています。CADでオリジナルを設計しそれを3Dプリンターで出力したような場合です。

その場合にはこれまでおこなってきたフィジカルな確認や体験をデジタル内でできるようにしていければ多くの部分をオンラインで扱えるようになります。VRやMRはそのための技術として利用されるようになるはずです。

またデジタルにもアナログにもなっていない無形のデータとして暗黙知やナレッジがあります。これについてはアバターや全環境再現のような空間・状況共有が必要になりそうなので、誰もが自然にオンラインでやりとりするのには大分時間がかかるのではないでしょうか。


サイバー空間に「場」を作り出せるのか

製品の体験価値がフィジカルとサイバーの連携によって実現しているため、それを開発するオフィスもフィジカルとサイバーの連携によって作られるべきだというのが基本的な考え方です。(扱うものがそれぞれある)

また新型コロナの危機管理とは無関係に、多くの要素が効率化と高度化のためにDXやデジタルツインという考え方に基づきデジタル側に移行してきています。

その中でコミュニケーションにおける暗黙知やナレッジをどのようにやり取りするか。またフィジカルを含む製品の体験をどのようにプロトタイピングし体験していくかについては、今後の課題として面白いと思っています。

いづれにしても昭和オジサンが「デジタル反対、お互いに顔を見ないと仕事はできない」ということで単純に否定してしまうのではなく、サイバー空間にクリエイティブな場を作っていけるようチャレンジしていきたいと思います。

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