作品集-124

デジカメUI: 回れ!  撮影・再生サイクル

銀塩カメラからデジタルカメラに移行したときにもっとも重要な変化は「撮影した結果が直ぐに分かる」ということであった。このことによって失敗の気づきやより良い表現への意欲が湧くことになった。
次に重要な変化は、結果が分かることで生じる撮影動機の増大に対して「撮影コストがかからない」ということであった。この2つの変化によって「(人に見せる)価値ある写真」が生み出され、こんにちのSNSでの写真の価値が作り出されたと言える。
またそのSNSが写真を撮影する動機を増大させ、正のスパイラルが続いているのが現状である。

この図で重要な点は、撮影に必要なものとして、事前イメージ、学習、機材購入、設定、構図・タイミングの全てを含めていること。また再生を撮影後の画像確認から、SNSへのシェア、思い出鑑賞までの全てを含めている点である。(一般には「活用」という場合もある)
デジタルによって、それらがつながり「動機→実行→振返り→動機・・・」のサイクルを構成している。

20年前にデジカメのUIアーキテクチャを作ったときに意識したのは、このデジタル技術による「撮影・再生のフィードバックサイクル」であった。

最初に重視したのが、撮影モードと再生モードの行き来に関するユーザビリティの向上で、一部の業界の人(とくにユーザビリティテスト関係者)はRec/Playの行き来を1ボタンでおこなうか、2ボタンかが議論されていたことを覚えていると思う。(一時期2ボタンが一世を風靡しましたが、今は1ボタンが主流)
次に設定項目を正確に反映できるファインダーであった。露出補正やホワイトバランス、エフェクトが反映できるようになったことで、シャッターを切る前に「撮影結果」を得ることができるようになった。ミラーレスとEVFの組み合わせは正にこの点に対する必然的な答えであった。

その後は、撮影の設定時点で撮影結果を予測できる「作例提示」(シーンモードなどに今でも残っている)や、写真を撮りに行く前に予習できるソーシャルな写真共有サービスや、撮影のフィードバックを「イイね」の数で受け取るSNSなどが登場し、撮影の動機と実行の大きなフィードバックサイクルを構成することになった。

LUMIX DC-G9の撮影・再生UI

いきなり具体的で申し訳ないが、オリンパスカメラとの差について挙げてみる。他社のカメラ(キヤノンとか)を使っている人には「それが当たり前」になっている点も重要である。

一旦撮影モードは置いておいて、再生機能について書き出してみる。
なぜならば、上記したようにデジタル世代の撮影では、広い意味の再生機能が全体のサイクルのために重要であり、その機能やUIを見ることで撮影全体に対する思想がみえてくるからである。

・再生ボタンがボディ左側にある(左手で操作することを想定している)

・画像を大量に送るのに適した背面ホイールがある(面ホイールは連続送りと戻し操作がやりやすいので再生操作に適している ※G9での名称はコントロールダイヤル)

・同一シャッターによる組画像を通常の画像送りと分けて扱う

このことから、①撮影するときは一気に撮影し、②その後レンズから手を放して、③再生ボタンを押し、④ホイールを使って一気に振り返り、⑤気になるコマがあればさっと戻して、⑥拡大しピントやブレ、目つむりを確認するという一連のワークフローが見えてくる。

特徴的なのは、連写や6K4Kフォト、ブラケット撮影などで作られる「組画像」を通常の画像送りと分けている点で、デジタルならではの「(時空間の)丸撮り」+「2次撮影(後から切り出す)」に対する体系を再生モードに持っている点である。
今後デジタル技術が進歩しAIが導入されれば、ユーザー操作で撮影したものとは別に大量の画像が撮影されることになる。それらのデータを上手く活用するための準備ができていると考えることができる。

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