良寛和尚の般若湯器
今日もさけさけ、明日もさけさけ。
越後の国の「良寛」さんは、禅僧にもかかわらず酒を好んだキュートな吞兵衛。
野酌して畦道で眠るなんて愛すべき酔っ払いそのもの。そう、お坊さんだって人間。「般若湯(はんにゃとう)」なんて隠語でお酒をこっそり嗜む密やかさもまた愛しく・・・。
庶民と人懐っこく酌み交わし、飄々とこの世を生きた良寛。ほろ酔ってふざけてみたような、小さな酒器たちをどうぞ。
良寛が詠んだ酒詩を写した「詩歌肴皿」。
器に書かれた詩を眺めつつ酔うのは、漢字という意味を持つ文字を使う民族の特権。その歌の読みも意もわからなくとも、なんとなく文字から風景を読み取りつつ。漢詩のルールなど気にせずに崩したタイポグラフィもきっと和尚なら許してくれるはず。
最後に、良寛らしい句をひとつ。
「道の辺に 菫摘みつつ 鉢の子を 忘れてぞ来し その鉢の子を」
道すがら、菫の花を詰むのに夢中になり、托鉢用の鉢を忘れてきてしまった良寛和尚。禅僧ながらそんな失敗をさらりと笑い詠むその親しみやすさに惹かれ、その生き方を追ってみた展示でした。
酒に誘われれば呑み、詩を詠んでと頼まれれば酒がないとできないなんてのたまう・・・。丁寧な暮らしでもなくただありのままに生きてみたら、笑えたりほっとするエピソードがいっぱいできちゃったその人生。そこにやっぱりお酒というものが色々と絡んでいるのもまた素敵でした。呑み過ぎて酒場にスマホ忘れてきても、良寛のようにさらりと詠えるような吞兵衛になりたいものです。