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ケベックシティが「北米のパリ」なら、オルレアン島は「孤島のプロバンス」!

結論から先に書こう。

ケベックシティまで行ったのならば、絶対にレンタカーを借りて「オルレアン島」まで行って欲しい。いや、行くべきである。

ケベックシティが「北米のパリ」ならば、オルレアン島は「孤島のプロバンス」だった。……行ったことないけど。

しかも「北米のパリ」で検索したらモントリオール圧勝だけど。


求めているのは安らかな気持ち

プリンスエドワード島へ2度目の取材旅行へ行くことを機に、せっかくモントリール直通便の飛行機で行けるのだから、少し多めに休みを取ってケベックシティまで足を伸ばしてみたいとぼんやり考えていた。そんな漠然とした旅に、ちょうど退職して時間ができたミクちゃんと、有給が消えそうなほどたまっていたアイアイが合流して始まった珍道中だ。

3人もいるおかげで、エアビーでお値打ちな一軒家が借りられるし、朝ごはんと夕ご飯は自炊して、移動はレンタカー。ミクちゃんとアイアイが食事担当を引き受けてくれて、わたしはドライバー担当。計画性がなくて行き当たりばったりだけど、それもまた楽しい。でも、こんな旅も気がつけばちょうど折り返し地点で疲れてしまっていた。ずっとプリンスエドワード島みたいなのんびりした島で暮らしていたのに、昨日のケベックシティは刺激が強すぎたのだと思う。なんか、自然にでも癒やされたい。

カナダといえば大自然だけど、それはだいたいカナディアンロッキーとかスキーで有名なウィスラーとか西カナダに集中してる。オーロラが見えるホワイトホースやドーソンシティも西だし、イエローナイフは真ん中っぽいけどやっぱり西寄りだ。

東カナダの大自然の筆頭ならナイアガラの滝だけど、場所はアメリカの国境。同じ東カナダでもこちらは北なので遠すぎる。朝ごはんをほおばりながら、「ケベックシティ 自然」で検索してみる。

すると、近くに滝と島があるようだ。しかも島には行ってみたかったレストランがある。そのレストランは通常、団体の観光客向けで電話予約のみ。わたしの語学力ではとうてい「3人だけどで予約したい」、なんて電話交渉ができると思えなかったけど、対面ならなんとかなるだろう。電話でおたおたしている人に冷たくても、目の前でおたおたしてる人にはみんな優しい。

そうと決まればカローラに乗り込んで、目指せ、モンモランシーの滝!

Googleマップで気になる場所へいくつかピンを刺し、カーナビにしていた。運転しながらカーナビを見る余裕がないので、助手席のミクちゃんが現在地を案内し、少し先の道案内をアイアイがしてくれるという、モントリオール→ケベックシティ間で養った完ぺきなフォーメーションだ。(くわしくはこちらを参照→「モントリオールからケベックシティまで必死のドライブ! ご褒美は宝石箱」)

宿泊しているリヴィから直線距離にしたら遠くないのだけれど、道がないから仕方ない。セントローレンス川を越えてぐるっとケベックシティを内包するように迂回して、北上する。1時間程度のドライブだから、わたしの運転だと2時間くらいだろうか。マップ上では近くへ来たはずだけど、あたりは「大自然」が近くにあるとは思えないような住宅街。こんなところに滝があるの? 道なりに走っていたら、目的地を通過してしまった。どうやら、さっき通り過ぎた「少し渋滞した小道」がモンモランシーの滝駐車場の入り口のようだ。通り過ぎても住宅街だったよ?

駐車場は広さがあるようで、渋滞はすぐに進み、入り口が見えてきた。なになに駐車料金は……12.25ドル!? ケーブルカーセットだと55.50ドルとテーマパーク並。とりあえず入るけどさ!

帰ってから調べてみると、この滝はケベックシティ観光へ来た人の定番スポットらしく、人気の観光地だそうだ。空港やホテル発着のツアーやバスも充実しているとのこと。どおりで観光客の多いこと。

モンモランシーの滝の落差は83メートル。ナイアガラの滝の(カナダ滝56メートル)よりも高い。冬は全て凍り付きアイスクライミングも楽しめるそうだ。

整備された公園、充実した土産物屋と洒落たカフェレストラン。滝の上を通れる吊り橋に、有料のジップラインと設備もテーマパーク並みだった。駐車場は滝の上の方にあり、吊り橋を渡って上から滝を眺め、487段の階段を降りる。階段のルートは滝の水しぶきでびしょびしょになるほど近づけるコースもあり選ぶことができる。体験主義のわたしは、防水iPhoneのタイムラプスをオンにして濡れるコースへ! 空気中に水滴の波が見えるくらいの水しぶきを浴び、びしょ濡れになった。日本だったら寒くて仕方ないけれど、北米だと乾燥してるからすぐ乾くため問題なしなのだ。

テーマパークのように整備された道だけど、規模はカナダサイズで結構広い。下へついたころにはもう一度登ろうという気力はなく、3人で42ドル出してケーブルカーでスタート地点に戻った。滝が大きすぎて感覚が狂うけれど、どうやらけっこう歩いたらしい。

大自然って感じはしないけど、これはこれで楽しいか。滝が見下ろせるオシャレなオープンテラスで鴨肉とビーツのチーズサラダをチョイス。浮かれたランチを楽しんだ。

お腹が満たされたら車はいよいよオルレアン島へ!

島と本土をむすぶのはたった一本のオルレアン橋のみ。島の外周にはグルッと67キロメートルの道がつながっており、6つの村が点在。橋から島へ上陸し、反時計回りで一周することにしよう。

最初にやって来たのは外周ドライブに出発してすぐ、対岸にモンモランシーの滝も見えるワイナリー「Vignoble Ste-Pétronille」。試飲が来てワインを買えるほか、グラスワインをいただきながらブドウ畑を眺められる。もちろん、わたしはドライバーなので飲めないけれど、ひとり旅だったら買って帰ることしかできないので同行人がいるのはありがたい。

素朴な田舎道は島の最南端に近づくと海岸線が近づき、風景が変わる。その頃到着するのがチョコレートショップ「Chocolaterie de l'Ile d'Orleans」だ。持ち帰りのショコラやケーキもいいけれど、ここで味わいたいのがたっぷりチョコレートをディップするソフトクリーム。逆さにしても落ちてこないなめらかなミルクバニラアイスクリームに、選んだチョコレート液にとぷんとつけて、渡してくれる。そのチョコレートの分厚いこと! 3ミリくらいはある。我々はそれぞれダークチョコ、ミルクチョコ、塩メープルをチョイス。チョコレートはこっくり濃厚。垂れないようにお皿状のカバーがついたコーンケースが優秀です。観光バスも止まる人気店なので、イートインスペースも充実。ドライブしながらチラチラ見えていた波間まで近くて、川の向こうにケベックシティが見えた。

ドライブルートは島の最南端を折り返し、北上ルートへ。うっそうとしたメープル林に包まれて、さっきの田園風景やキラキラとした海岸線とは景色が変わる。まるで理想のドライブルートの見本市。やがて、また村が見えてきた。

オルレアン島は1935年まで本土とほとんど交流がなかったため、17世紀の入植当初の面影を残すフランス統治下時代、ケベック様式の家々を見ることが出来る。ケベック様式の家の特徴は、屋根。三角屋根から2つの出窓が突き出ていて、どれも色がカラフル。これは、雪深い冬にも自分の家がちゃんと分かるようにとのこと。もっとも伝統的な屋根は雪が良く滑り落ちるよう急勾配に反り返っているらしい。慣れない運転でそこまで観察できなかったけれど、だいたいは木造の2階建てで、1階がポーチになっていて、玄関のまわりをつり下げ型の花壇で飾っていた。屋根の色がカラフルだから、壁も自然とカラフルに。自分が暮らすなら、どの色の組合せがいいかな、なんて妄想ドライブがはかどる。わたしは、シルバーの屋根が印象的だったよ(シルバーは無塗装という噂)。壁は、やっぱりミントグリーンかなぁ。

途中、教会の駐車場で休憩したり、ポプラ並木のかわいい横道で友だちに運転を交代したり、公園の見晴台に登って上から島を眺めたり。胸一杯に肺を広げて深呼吸できた。

太陽も傾く頃、車は例のレストランに到着。

別の車が止まっていたら、誰かはいるだろう。だけど、なんて言っていいか分からない。それでもなんとか悟ってもらうしかないと扉の前でうだうだしていると、中から男性が出てきた。やった! 彼はお店で演奏をしているミュージシャンで、今日はリハーサルで来ているとのこと。つたない英単語とグーグル翻訳で「明日のランチに予約したい」「英語が下手で電話で言えない」と伝えると、レストランのオーナーに電話してくれた。なんてやさしいんだ! かっこいいし! 「3人のかわいい日本人の女の子が来るから、よろしくっていっておいたよ」とまで、好き!

オルレアン島の豊か風景とお兄さんのジェントルぷりにすっかり癒やされて、大満足で帰路につく。

明日はモントリオールへの移動日。午前中にあのレストランで、スプーンをならしながらブランチしちゃうぞ。

家に帰ったら、あのしましまクラフトビールを開けて、ワインを飲もう。

[写真]モンモランシーの滝

[写真]ワイナリーVignoble Ste-Pétronille

[写真]Chocolaterie de l'Ile d'Orleans

[写真]オルレアン島ドライブ

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(翌日のはなし)

(前日のはなし)


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