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ひきこもり搾取①支援団体とマスコミから利用されないために

過去を語ることの危険性


「ひきこもり」からどうやって回復していったか、という過程を紹介するのは大事なことで、まだ渦中にある人たちには参考になるでしょう。ただ、それ以降どのような生活をしているのか、ということも示す必要がある。そうでなければ、いまなお「ひきこもり」から脱出しきれていない人だと、見なされるおそれがあるからです。

この点はいわゆる「ひきこもり」について経験者が語る際の落とし穴でもあります。そういう体験が過去にある人は、いくら今はひきこもっていないと言っても、なかなか信じてもらえなかったりする。「ひきこもり」というレッテルがいつまでもついて回るのです。だから、「ひきこもり界隈」でずっとやっていくつもりがない人は、過去の体験については口をつぐんで、「普通の」生活を送ることを選ぶのではないでしょうか。

ひきこもり状態に陥り、悩んでいる人にとって、そこから脱した人の体験談を聞きたい、参考にしたいという気持ちは大きいはずです。どうやって立ち直っていったか、今どのような生活を送っているのかという、具体的な体験談がいろいろな人の口から語られるのが望ましい。けれども、元ひきこもりの側からすれば、先に述べたレッテル貼りの問題があり、マスメディアに出ればステレオタイプに押し込められるという問題もありで、「ひきこもりからの脱出体験」を語ることのデメリットとかリスクが大きいのです。

私の場合は、体験談の投稿をきっかけにNHKのテレビ番組「クローズアップ現代」に出演しましたが、今はひきこもりではないのにバリバリ現役のひきこもりだと報道されてしまいました。

NHKの担当者に抗議をしてもぜんぜん聞く耳を持たず、どうにかして私を現役の典型的なひきこもり像に押し込めようとするのです。実物より悲惨で哀れに描くことで視聴率を稼ぐという、ある種の「炎上商法」ですね。昨今ではただでさえ弱者嫌悪の傾向が高まっているのだから、そんなふうに捏造・歪曲されたら自分の評判がどれほど下がることか。いい迷惑です。

そういう人たちがTV番組を作ってせっせと宣伝するせいで、ステレオタイプなひきこもりのイメージが世間に広まってしまい、かえって偏見を助長しています。いかにもひきこもりっぽくない人以外はひきこもりとは認めないとか、専業主婦はひきこもりだから外で働け、とかね。自分の個人的・個別的な体験を語ろうとしても、ステレオタイプに負けてしまい、変なレッテルを貼り付けられるだけなのです。

ステレオタイプな「ひきこもり」像。なぜか膝抱えて「体育座り」してる。実態は、椅子に座ってPCの画面見てるか、ソファか布団の上でゴロゴロしてるか、ではないかな~と思いますが。

この捏造報道を機に、過去の「ひきこもり」体験を語ることの危険性に気づきました。それ以降は「過去の体験について話をしてほしい」という依頼があっても、一切お断りしています。せっかく脱け出したところにまた引き戻されてはたまらないからです。

「ひきこもり」の支援者になるとか、当事者/支援団体を作ろうといったことは、当初から少しも考えていませんでした。それなのに、クローズアップ現代に出てからというもの、「ひきこもり」問題に取り組んでいる人、という誤解が一部で生じてしまい、困惑しています。むしろ私はそういった既存の取り組み(当事者会や支援団体)には疑問を抱いているくらいで、このシリーズでもそこらへんのお話しをしようと思ってます。

一度でも「ひきこもり」体験を語ると、それがレッテルとしてずっとついて回るので、要注意なのです。でも、それを逆手にとって「ひきこもり」のレッテルを看板として利用し、活動している人たちもいます。そういった活動家についても取り上げます。

「ひきこもり」「不登校」といった問題はずっと前から言われていたけれど、解決するどころかますます悪化している気がします。社会の変化や経済情勢の影響はもちろんあるのだろうけど、先にあげたメディアの報道姿勢も一因ではないかと思います。その点にも触れていきます。


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【追記】私は「ひきこもり」という呼称自体に問題があると考えているので、できるだけ「」でくくっています。「ひきこもり」ではなく社会的孤立とするべきだ、という話は以前に記事にしました。今回のシリーズでも、「ひきこもり」の呼称と定義の問題については、さらに掘り下げていく予定です。 

➁「当事者から支援者への転身」へ続く



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