見出し画像

GⅠレース名の由来【チリ編】

 前回のアルゼンチン編に続き、今回はチリのGⅠレースの名前の由来を紹介します。

■ アルゼンチン編はこちら☟


エル・デルビー

 エル(el)は定冠詞で、英語の "the" にあたります。derby は英語からの借用語ですが、スペイン語圏(のみならずイタリア語圏)ではスポーツで当たり前に使われる単語なので、「ダービー」ではなくスペイン語風に「デルビー」と発音します。サッカーが好きな人はみんなデルビー読みできると思います。エル・ダービーは間違いではないけれど、かなりダサい……。イタリアのダービーは「デルビー・イタリアーノ」、チリのダービーは「エル・デルビー」、メキシコのダービーは「デルビー・メヒカーノ」と覚えておきましょう。

イポドロモ・チレ

 イポドロモ(hipódromo)はスペイン語で「競馬場」を意味します。チレ(Chile)はチリのスペイン語読みです。直訳すると「チレ競馬場大賞」です。

クルブ・イピコ・デ・サンティアゴ - ファラベッラ・ブリーダーズ・カップ

 イピコ(hípico)は「競馬」を意味するので、直訳すると『サンティアゴ競馬クラブ大賞』です。

 ファラベッラ(Falabella)というのはチリ発祥の大手百貨店の名前で、レースのスポンサーです。ブリーダーズ・カップとついているのは、このレースの勝ち馬にはBCマイルの優先出走権が与えられるためです。

タンテオ・デ・ポトランカス
タンテオ・デ・ポトリージョス

 タンテオ(tanteo)はスペイン語で「見積り」「得点」「試み」などを意味します。デ(de)は英語の "of" にあたり、ポトランカス(potrancas)は「牝馬の若駒」、ポトリージョス(potrillos)は「牡馬の若駒」を意味します。したがって、「若駒チャレンジ」というニュアンスです。

アルベルト・ビアル・インファンテ

 アルベルト・ビアル・インファンテは1876年生まれの弁護士・国会議員です。1909年から1917年までサンティアゴ競馬場の会長を務めました。

アルトゥーロ・リオン・ペーニャ

 アルトゥーロ・リオン・ペーニャも1880年生まれの弁護士・政治家です。1937年から1938年までサンティアゴ競馬場の会長を務めました。

ポージャ・デ・ポトランカス
ポージャ・デ・ポトリージョス

 ポージャ(polla)は本来は「雌鶏」や「若い女性」を意味しますが、南米のスペイン語では「馬の競走」や「馬の賭け」という意味があります。ポトランカス(Potrancas)は「若駒の牝馬」、ポトリージョス(Potrillos)は「若駒の牡馬」なので、直訳すると『3歳馬の競走』となります。

 ちなみに、スペインでポーリャ(Polla)という単語は使わないでください。特に女性の方は。口語・俗語で男性器(ニュアンスとしては日本語のチ〇コ)を意味するので、すごく笑われます。

1000ギニー・マリーア・ルイーサ・ソラーリ・ファラベッラ
2000ギニー

 1000ギニーと2000ギニーはそのままです。

 マリーア・ルイーサ・ソラーリ・ファラベッラは上述したファラベッラ社のお偉いさんです。2015年にはフォーブス長者番付で782位に入った世界有数のお金持ちでもあります。

 彼女は生産者でもあり、夫と共にエル・シェイク牧場を開きました。現在はドニャ・イチャ牧場と呼ばれるこの牧場は、チリを代表する数々の名馬を輩出しました。

 また、1994年5月19日から2015年3月18日までチレ競馬場の役員を務めました。チレ競馬場史上初の女性役員であり、競馬界における女性の地位向上に尽力しました。2015年11月4日死去。

グラン・クリテリウム・マウリシオ・セラーノ・パルマ

 グラン・クリテリウムはグラン・クリテリウムです。

 マウリシオ・セラーノ・パルマは1917年生まれのサラブレッド生産者です。ヘネラル・クルス牧場を開き、アルゼンチンからセントゥリオン(Centurión)を、アイルランドからテールオブトゥーシティーズ(Tale Of Two Cities)を種牡馬として導入しました、そのテールオブトゥーシティーズ産駒の生産馬クーガー(Cougar)は、アメリカに渡ってアメリカ殿堂入りを果たしました。

 また、チレ競馬場の会長や南米競馬機構の役員などを歴任し、競馬の南米選手権であるGⅠラティーノアメリカーノの創設に尽力しました。

ナシオナル・リカルド・リオン

 リカルド・リオン・ペレスという人名に由来するレースです。リカルド・リオンは1863年にチリで生まれ、1891年から1894年まで下院議員を務めました。また、1909年から1911年まで、1915年、1920年から1921年まで、1922年から1924年まで、計9年サンティアゴ市プロビデンシア地区の区長でした。

 自身がプロビデンシア地区に持っていた土地でリミテッド牧場を開き、イギリスから種牡馬を導入しました。この牧場で1909年に誕生したのがオールドボーイ(Old Boy)です。セントレジャー優勝を含め、36戦33勝の成績を残した名馬です。

エル・エンサージョ・メガ

 エル(el)は定冠詞、エンサージョ(ensayo)はスペイン語で「エッセー」「試験」「リハーサル」などを意味します。直訳すると「リハーサル大賞」です。

 メガ(MEGA)はチリのテレビ局の名前で、このレースのスポンサーです。MEGA は2012年にベシア・グループという企業に買収されました。そのベシア・グループの社長が、現サンティアゴ競馬場会長であるカルロス・エジェール・ソラーリです。

アルベルト・ソラーリ・マニャスコ

 1912年にチリで生まれたアルベルト・ソラーリ・マニャスコは、ファラベッラ社の社長でした。上述のマリーア・ルイーサ・ソラーリ・ファラベッラの父であり、カルロス・エジェール・ソラーリの祖父にあたります。

 タラパカー牧場を開き、外国から繁殖馬を導入してチリの馬産向上に貢献しました。また、チリ競馬の要職も歴任しました。現在のチリ競馬は、このアルベルト・ソラーリ・マニャスコの子孫たちが牛耳っています。

■ ソラーリ家についてはこちら☟


セントレジャー

 セントレジャーはセントレジャーです。

ラス・オークス

  ラス(las)はスペイン語の定冠詞。オークスはオークスです。


 いかがでしたか? アルゼンチンと同様、チリのGⅠ競走にも競馬場の会長や、競馬界に多大なる貢献をした人物の名前がつけられています。


内容が面白かった・役に立ったという方は、ハートボタンのクリックや、SNSのフォロー、サポートなどをよろしくお願いします。活動のモチベーションにつながります。


木下 昂也(Koya Kinoshita)

【連絡先】
Twitter : @koyakinoshita24
Instagram : @kinoshita_koya1024
Mail : kinoshita.koya1024@gmail.com

【サポート】
https://www.amazon.jp/hz/wishlist/ls/2SZ4IYFB3H2AB?ref_=wl_share

【南米GⅠ馬名鑑、発売中です!】
https://note.com/koya_kinoshita/n/n2fa0cd6e260e

この記事が参加している募集

#名前の由来

7,885件

記事が気に入った・ためになったと思われた方は、ぜひサポートをしてくださるとありがたいです。執筆の励みになります。