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『浪漫と算盤 LDN ver.』と『薫る(労働と学業』、そして「宇宙」について

同日発売の新譜

今回は自分の好きなアーティストの椎名林檎さんと小沢健二さんの新曲達とその共通点について書きたいと思う。(以下、敬称略)

11/13(水)に椎名林檎のベスト盤『ニュートンの林檎〜初めてのベスト盤〜』と小沢健二の『So kakkoii 宇宙』がリリースされた。

この2人のアーティストは自分が好きなアーティストの中でも、本当に心を救われたと思う数少ないアーティストの中の2人だ。好きとかで済まされないアーティスト。

それはさておき、さっそく彼らの新曲達の共通点について。

労働における大切なもの

まず、椎名林檎と宇多田ヒカル(宇多田ヒカルにも心を救われてます)のデュエット曲であるアルバム1曲目『浪漫と算盤(LDN ver.)』に出てくる歌詞を少し見てみよう。

主義を以って利益を成した場合は 商いが食い扶持以上の意味を宿す

曲の冒頭の歌詞が労働について始まっている。
それにしても、この出だしの歌詞の力はSo半端ない。まさに、労働とはこういう時にこそ喜びを感じるものであり、お金のためだけではない達成感が生まれる。

次に、小沢健二のアルバム最終曲10曲目の『薫る(労働と学業)』の歌詞を少し見てみよう。

生み出すのだね 君の手と手が この世にない すばらしいもの 気がつくのだね 動物として 形のない 大切なこと

まず、タイトルに労働という言葉が出てきている。そして、これも曲の冒頭の歌詞である。書き方は違うが、明らかに、先ほどの椎名林檎の歌詞と同じ事を歌っている様に感じる。

今、この2人が「労働」という事に向き合った時、同じ答えが出ていて、そこに共通するのは「お金」ではないものを信じる思想、「お金」ではない喜び。

次は椎名林檎に戻り、先程と同曲のサビ(サビというのはとても日本的な言葉だからこそ使います)の歌詞を見てみよう。

置きに行こうなんぞ野暮新しい技 毎度繰り出したいです苦しくとも

再び、小沢健二の同曲のサビの歌詞を見てみよう。

君が君の仕事をする時 偉大な宇宙が 薫る あきらめることなくくり出される 毎日の技を見せつけてよ

自分が不勉強なだけであるかもしれないが、少なくとも他のアーティストが労働について歌っている曲で「技」という言葉をサビに選んでいるのを見た事、聴いた事がない。

「技」

確かに、僕たちはみんな仕事をする時、様々な技術を持って仕事をする。そして、そこには必ず「技」がある。

しかし、日常生活で
「あー、この仕事する時はこういう技を使ってね、それで……」
みたいに(自分だけかもしれないが)「技」という言葉をあまり使わない。

子供でも分かりやすい言葉である「技」をわざわざ使い(ダジャレではありません)、さらにそれを双方ともが「繰り出したい」だの「くり出される」だのと歌っている。

「宇宙」

小沢健二の曲では今までにも多用されてきた「宇宙」という言葉は珍しくないかもしれない。

だが、驚くのは(勝手に驚いてる)、椎名林檎の同曲でも「宇宙」という言葉が出てくる事だ。
今年の夏に椎名林檎がプロデュースした曲で『宇宙の記憶』というタイトルのものや「NIPPON」で『広大な宇宙』という歌詞があるが、決して昔から彼女が歌詞などで多用しているわけではなかった言葉が近年使われている。

ビジョナリー(予言者)

こういった共通点を見つけて、自分は今とても宇宙を感じている。
偶然と必然がここにはある。
これらの共通点はたまたまでもあるし、しかるべくして重なったものでもある。

映画/音楽ジャーナリストの宇野維正さんがYahoo!ニュースの記事にてこう書いている。

優れたアーティストはある種のビジョナリー(予見者)だと自分は考えている


まさに、この3人(宇多田ヒカルも含めて)は優れたアーティストである事、ビジョナリー(予言者)であること、今週11日に発売したAERAでのインタビューで小沢健二が「宇宙的に考えたら、完全に同じ時代にいる」と言っていることを考えると……。

「そりゃあ、優れたアーティストであるビジョナリーが3人も揃って同じ時代、同じタイミングにリリースする曲で同じ言葉やテーマを使うのも必然だよなぁ!」と思う。


11/12(火) 豊洲PITにて行われた新譜リリースイベント『飛ばせ湾岸 2 nights、guitar bass drum で So kakkoii 宇宙へ ドロップ前夜、豊洲』(イベント名soヤバくて最高に好き)に全落選したが奇跡が起きてチケットを譲ってもらい参加した。
その日、一曲目の『薫る(労働と学業)』を披露する前に小沢健二が言っていた。

「歌詞を書くことと種を蒔くことは似ている。」

今回の歌詞の共通点やチケットを譲ってもらえた奇跡などに、ビシバシ宇宙と偶然と必然を感じたり、労働や学業、社会について考えながら、彼らの音楽を、言葉を、種を享受して、今を生きます。

いつも素晴らしい音楽をありがとうございます。

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