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割り箸のないカップラーメン

令和3年4月12日の日記
「朝から晩までよく頑張ってくれているね。これはささやかながら私の気持ちだよ。受け取ってくれよ」

そう言って社長がカップラーメンを1週間分、差し入れしてくれました。普段は現場に来ない社長ですが、社員が寝る間を惜しんで頑張っている、ということはよくわかっています。かと言って、零細企業ですからボーナスを与えるほどの甲斐性はありません。社長なりに知恵をしぼって出した答えが「カップラーメン1週間分」なのでした。

たかだかカップラーメンと思うなかれ。薄給のうえ、過酷な労働環境におかれている社員にとっては、昼と夜の飯代は切羽詰まった大問題です。家に帰れないのですから自炊はできません。朝、早起きしてお弁当を作ればいいのかもしれませんが、そんな時間があるのなら10分でも長く寝ていたい。そうなると、昼飯晩飯は外食もしくはコンビニ食となり、外食なら牛丼チェーンでも少なくとも350円ほど。コンビニ食ならおにぎり1個で150円ほどで済むが、おにぎり1個ではこっちの腹が済まない。選択肢がほぼ無限に並んでいるため、結局コンビニに行ったら500円くらい使ってしまう。そんなワーキングピュアにとっては、カップラーメンの差し入れが、皆さんが思っている以上にありがたいものなのです。

現場のことなんか、よくわかっとらん社長の割には、なかなか気の利いたことをしよるやないかい、われー。と思いきや、惜しい。実に惜しい。カップラーメンを食するのに必要な「割り箸」がない。これでは私たち、素手で食べなきゃいけないじゃありませんか。というわけで、社長に割り箸を要求してみました。

すると、社長が烈火の如く怒りだしました。せっかく気をつかってカップラーメンを買ってやっているのに、それでは不足とばかりに割り箸まで要求しやがるのか、このスカタンどもは!わしの「気持ち」を蔑ろにしやがってこのうんこタレどもが、せやからおまえらみたいなもんに気ぃつかうことなんかせんだらよかったわ、あほんだらがい!

ものすごい剣幕なのですが、しかし、こちらとしましては、せっかくカップラーメンがそこにあっても、割り箸がないことには、食べたくても食べられないのですよ。カップラーメンを差し入れしてくださったことについて文句があるのではなくて、どうせならお箸も一緒に付けてくれないと、そこまでしないと、気遣いというのは、そういうことなんじゃないでしょうか。

●せっかくカップラーメンを買ってやったのに追加で割り箸まで要求されてはらわたが煮えくりかえる社長

●せっかくいただいたカップラーメンを食べたいがために割り箸を要求する社員

この絶妙なすれ違いは、結局、社員がなんとかして別のところから割り箸を仕入れることでしか、解決はしないでしょう。
とてもとても雑な例えにはなりますが、この国の政策は、いつも、この社長の「割り箸のないカップラーメン」のようである気がするのです。

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