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1人目の客になれた話 京福西院駅近く編

 趣味はオープンしたお店の1人目の客になることです。

 この世の中に役に立たないものは多々あれど、乗らない特急電車ほどの役立たずはあるまい。西院に17時オープンにオープンするお店へ向かうのに烏丸駅から電車に乗ろうとしたところ、16時30分烏丸駅発が特急電車だったのです。
 特急は西院に停まりません。
 16時35分に来る準急に乗らなければなりません。この特急電車ほど役立たずなものは世の中にありません。

 つまり、マッチングの問題なのである。

 梅田へ急ぎたい人にとってはありがたい特急も西院に降りたい私にとっては全く必要ないものになってしまいます。

 例えばラジオ番組における喋り手たるDJさんとディレクターにも同じことが言えるかもしれない。先ほどまで、いつもお世話になっているDJさん二人とラジオについていろいろ話していたおかげでそんな発想に辿り着きました。

 準急はまだ辿り着かない。
 と、思っていたらやってきました。
 愛しの準急。
 梅田へ行くときは役立たずだと思っている準急。

 楽しかったからついつい話し込んでしまい、急ぐことになってしまった。こんな急ぎ方ならいつでも急ぎたい。

 これまで1人目の客になり続けて達した結論としては、開店40分前に辿り着けば、だいたい1人目の客になれる。のですが、烏丸駅を発車したのがもうすでにオープン25分前です。
果たして私は1人目の客になれるであろうか。

 西院駅着。
 ホームに降り立った私は歩きながら「1人目の客Tシャツ」を着て、着終えるやいなやダッシュを決め込む。気分としては近本中野を凌駕する。
 何十段とある地上への階段を駆け上がる。
 こんなに階段をダッシュしたのは野球をやっていた高校三年の夏以来ではあるまいか。それすらあまり真剣にやらず、後輩たちに非難されていた私であるのに。

 今日オープンするのは、京福西院駅からすぐのところ。角に神来というラーメン屋さんのある細い筋を北に上がったところの建物の2階にあります。
 以前、私が1人目の客になった「焼き鳥せせり」が1階にある建物です。同じ2階には、これまた私が1人目の客になった「縁」という居酒屋さんがあり、本日オープンするお店の1人目の客になれたら、私はこの建物に入っているお店をコンプリートすることになるのです。

 なんとしても1人目の客になりたい、という想いがスピードに乗るということが実際あるものだと思う。西院駅からお店の前へ来るまでの私は全盛期の福本豊の脚力を超えていたのではないか。全速力で2階へ駆け込もうとすると、1階の「焼き鳥せせり」の中の店員のお姉さんと目が合う。オープンの際、一度行ったきりであるのに、お姉さんは私のことを覚えていてくれ、にっこり微笑みかけてくださったので、「いまから上のお店の1人目の客になりに行くんです!」とジェスチャーで伝えると、「いってらっしゃ〜い」と声を掛けてくださった。うれしい。必ずそっちにもまた行きます。

 でも、「焼き鳥せせり」、いつも満員で予約無しでは入れませんねん。

 そうして2階へ駆け上がってみると、誰も並んではおらず、スマートフォンで時間をチェックしてみたら16時41分。烏丸から6分で到着できた。We Are The Worldならまだブルーススプリングスティーンが吠えている頃ではないか。

 17時オープンと同時に扉が開く。
 女性スタッフお二人が出迎えてくださる。
「一番目のお客さま、お待ちしておりました」
 お隣の「縁」のご主人から「1人目の客になるのを趣味にしている人が来るはずだ」と聞いていたらしい。

「こないだ烏丸で見かけたんで声掛けようと思ったんですけど」とおっしゃるので、あ、それはおそらく第一旭や三田製麺所の1人目の客になるために1人目の客Tシャツを着ていたときだろうな、と思い、よくよく聞いてみると、このTシャツを着ていたわけではないらしい。

「え、じゃあ、どうして僕のこと知ってるんですか」
「いつもインスタをチェックさせてもろてます」

 なんということでしょう。こんなことがあるのですね。有名人になった気分、悪くない。

 令和6年10月1日、京福西院駅近くにオープンした「酒と肴 おたぬ。」の1人目の客は私です。

 

女性2人はなんと親子でした!
娘さんが撮ってくださいました❤️
蒸し枝豆美味!


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私の著書『1人目の客』や1人目の客Tシャツ、京都情報発信ZINE「京都のき」はウェブショップ「暇書房」にてお買い求めいただけます。


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