かぐわしい香り
京都市右京区の梅宮大社では15日、雨上がりの境内で早咲きの品種が紅白の花を開き、かぐわしい香りを漂わせた。
今朝の京都新聞の朝刊1面より抜粋しました。地方紙の伝える季節の話題は心を和ませてくれますね。
さて。
私が気になってしまったのは「かぐわしい香り」なんです。手元にある『新明解国語辞典』第八版では「(美しいものが)いいにおいを発する様子だ」と解説があります。
何も間違っていないではないかといわれれば、その通りですとしか、言いようがないのですが、いっぽうで、この「かぐわしい」という言葉は、しばしば「イヤな臭い」に使われることがあります。
一週間履いたままのパンツとか、
真夏の運動部の部室とか、
そういうにおいを「かぐわしい」ということがあり、どちらかといえば「かぐわしい」なんて言葉は普段使いの場合、そっちの使い方しかしていないものですから、こうして正しい使い方をしているときに一瞬、間を置くことになってしまうんですよね。
こういう「悪い」をあえて「いい」とする言い方って他にもいろいろありますよね。いたずらをした子供に「君は本当に賢い子だね」とか。エラーをした選手に「ナイスプレー!」とか。このような表現の延長線上に京都人のいけずな物言いの代表である「ピアノ上手に弾かはりますなぁ」もあるのではないでしょうか。
もともと「とても」も否定表現と呼応して、「どんなに方法を尽くしても実現不可能だと思う気持ち」を表していたものが、否定肯定問わず、並の程度を超えている様をあらわすようになったといいますが、これなんかも、ひょっとすると、逆の意味で皮肉を込めて使っていたのに意味そのものが逆転してしまったのではないかしら。
私なんかは昔から、バカにされやすいタチでしてバイト先の居酒屋のチーフに新人の頃から「涌井先生、頼みますよ」なんて言われたりして、そういう皮肉を込めた意味逆転言葉に慣らされてきたから、唐突に正しい使い方で「かぐわしい香り」なんて書かれると、梅の花の文字通り、かぐわしい香りではなく、一瞬、うんちのにおいを思い出してしまったりするのが悲しいサガ。ロマンシングサガなのです。
ちなみに『新明解国語辞典』第八版の「かぐわしい」のところには、私がこれまで頻繁に出合ってきた「悪いにおい」を意味する用法は掲載されていませんでした。私界隈で使っていただけなのかしら。
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