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その大きな声は

声の大きな人の意見のほうが通りやすい
声を出すことさえできない人もいる
声の大きな人はその大きな声が特権であることに気づくことができない

声の大きな人と声の大きな人とでしか話し合いがおこなわれない
声を出すことさえできない人は話し合いのテーブルにさえつけない
声の大きな人はその大きな声が特権であることに気づくことができない

声の大きな人がそれは僕の責任じゃないと声高に叫ぶ
声を出すことさえできない人はその声の大きな人の放棄した責任を背負わされてしまう
声の大きな人はその大きな声が特権であることに気づくことができない

声の大きな人はその大きな声によって自らの過ちを揉み消すことだってできる
声を出すことさえできない人はいつも謂われなき罪を着せられ泣き寝入りすることに慣れてしまっている
声の大きな人はその大きな声が特権であることに気づくことができない

声の大きな人はめんどくさくなって声を出さず自室に籠るようになっても意のままに周囲を動かすことができる
世情に疎くなり時代錯誤となろうとも声が大きいから問題ない
声を出すことさえできない人は自室から出てこない声の大きな人のやり方が全く的を射ていないこたを知りながらそれでも何か言ってやる権利さえない
世情に疎くなり時代錯誤に陥った声の大きな人の乗る泥舟に仕方なく乗るしかない

私は声を出すことができないけれど
大きな声を手に入れたら
こんな私もあんな人になってしまうのだろうか
あんな風になるくらいなら声なんて出ないほうがましだ
いまの私みたいな人がいまの私みたいなままで声が大きくなってくれないものか
そう願ういっぽうで
それが難しいことも知っている
あの声の大きな人も昔は声を出せなかった
声が大きくなるとその大きな声が特権であることを忘れてしまうのだ

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