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東京日記6 府中本町行き

西船橋駅から再び武蔵野線府中本町行きに乗る。路線図が正しい方角を示しているなら、新松戸までまっすぐ北上、吉川美南なる駅にかけてさらに北西へ進み、そこから西浦和まではひたすら西へ電車は走る。そこから府中本町にかけては概ね南下することになるのだが、西浦和の一駅手前、武蔵浦和で下車する私には関係がない。
 人はあまり乗っておらず、私はまたしてもロングシートのいちばん右端に座ることができた。先ほどと同じく、向こうに海を見る側のロングシートだが、北上するこの電車は海から遠ざかっていく。京都でもよく見かける大手レストラン、回転寿司、スーパーマーケット、よくある国道、おとぎ話のタイトルみたいな名前のラブホテルなどが目に入り、たいした感慨もないのだが、そうした郊外を通り抜け、田圃道や雑然とした木々の緑が飛び込んでくると、それがどうにも微笑ましく、ついつい見惚れてしまう。そうかと思えば、軍隊のように整然と同じ傾斜の同じ屋根が建ち並ぶ区画が現れたりして飽きさせない。海側には海側の良さがあり、こちら側にはこちら側の風情がある。そこに優劣はない。
 何駅だったか忘れたが、新松戸までに、ずいぶんとまだ席に余裕はあるはずなのに私とひと席分空けて座っていた女性の間に屈強な男性が尻をねじ込ませてきた。小柄な女性一人が入れるか入れないかくらいのスペースに無理やり押し込んできたため、端に座っていた私はさらに端に追いやられ、ずいぶんと窮屈になってしまった。なるべく体を触れたくないから足を閉じ、その男性との間に隙間を作るのだが、その隙間に男性は足を広げてきた。ああ、そういうタイプの男か。この男、どの駅で降りるんだろう。もう私は外の景色を楽しむ余裕を失ってしまった。と言っても、その余裕があったところで、反対側のロングシートも人がいっぱいになってきており、もう外の景色は見えにくくなっていた。武蔵浦和はまだ先だ。

続く
※続かないかもしれない

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