見出し画像

8月13日の新聞1面のコラムたち

 読売新聞『編集手帳』によると、うまくいっているときに邪魔をするという意味の「水を差す」は「お湯や料理に水を注いで、ぬるくしたり味を薄めたり」して台無しにされることから来ているそうです。「一説によれば」と書いてあるので他にも説はあるのだと思いますが、この水を注いだ人にもおそらく悪気は無いのでしょう。むしろ、よかれと思ってやったのではないでしょうか。「悪気はなかった」というのは免罪符にはならないのです。どちらかといえば、悪気がなかったが故にタチが悪いということの方が多い気がします。私の知人でコロナ陽性となり職場復帰する際、「堂々と来てくださいね」と職場の方から連絡を受け、菌扱いされた気がしたと言っていた人がいました。善意が逆効果を生むことがあるのです。自分も気をつけたいという思いと、お互い様だという寛容さと、どちらも持ち合わせていたい。

 と、思っていたら京都新聞『凡語』には、認知症の人が接客を担当する「まあいいかカフェ」のことが書いていました。注文を間違えたとしても「まあいいか」と受け入れて楽しもうという趣旨のカフェ。「人に迷惑をかけず生きることはできない。誰かが失敗しても受容することができる温かい社会になれば」とカフェを主宰する平井万紀子さんは話しています。舌打ちするより、微笑み返すほうが双方が幸せになれるのは、本当は国家間の外交でも同じなんでしょうね。

 相互理解の一助になれば。という思いは朝日新聞『天声人語』でも話題になっていました。缶切り、小刀、カメラ、自動改札。さて共通点は何でしょう。左利きの人が使いにくいことです。私は左利きなのですぐにわかりました。右利きだけを想定した品物は意外に多い。左利き用品を数多く商うお店が相模原市にあります。こちらのお店は、きっと、左利きの苦労を思い、商品を並べていることでしょう。そういえば、多くの商品開発は使い手を「男性」と想定して行われているらしい。例えば、車のアクセルやブレーキは女性が使おうとすると、けっこう足を伸ばさないといけなかったり。こういうことが少しでも解消されるよう、最近は「女性」想定の商品開発が進んでいるそうです。

 こうして昔ながらの常識は、現代用に更新されていくのです。毎日新聞『余録』には、かつての栄養ドリンク「リゲイン」のCMのキャッチコピー「24時間戦えますか」について書いていました。このキャッチコピーについては、以前、私は長男に話してみたところ、「いかれてるな」と言っていました。『余録』では、このキャッチコピーを引用しつつ、和食チェーン「木曽路」で昨年末、おせち作りをしていた複数の従業員が1日20時間を超す長時間労働を2日続けていたという内部資料について取り上げていました。本当に「いかれてるな」。

 昭和生まれは、どうしても昭和の常識が抜け切らず、若い人たちに合わせているつもりが噛み合わなかったり、合わせすぎた無理が祟って自分が見えなくなったりするものですが、時代の風や当世の雰囲気を肌で感じ、吸収しながら、無理なくゆっくり時間をかけて、自分を現代用に更新していく必要があるのです。「近頃の若いもんは」と言ってるうちは、更新ができていないのだ。こういう人間がよかれと思って水を差したりするんだろうね。

#令和4年8月13日
#新聞  #コラム #新聞コラム
#読売新聞  #京都新聞 #朝日新聞 #毎日新聞
#涌井慎  #ジャミロワクイ #ジャミロ涌井

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?