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エッセイ『食べて応援したいけど』

 貧困問題や生活支援を専門とする社会福祉士で聖学院大学客員准教授の藤田孝典さんのコラムが昨日の京都新聞に掲載されていました。

 東京電力が福島第一原発処理水の大規模海洋流出を始めたことについて書いていました。
 ご存知の方も多いと思いますが、岸田首相や閣僚の皆さんが福島県産の魚介類を使った昼食会を開いて、海の幸に舌鼓を打ち、安全性をアピール。「食べて応援しよう」というパフォーマンスを繰り広げたわけなんですが、藤田さんはこの光景に違和感を覚えたそうです。

 いわく、「私たちも首相や閣僚らのように、福島県産の魚介類をどんどん食べ、県の水産業を支えていければ良いとは思う。しかし、生活困窮者支援に携わっている現場から見ると、日本には、そのような余力はあまり残っていないようだ。」

 そうなんです。なんだかなーって思っていた違和感の正体がまさにこれ。俺たち庶民にとって国産の水産物なんぞ、とうの昔に高嶺の花になってしまっており、近頃は秋刀魚だって易々とカゴに入れることはできないし、土用の丑やと騒いでいても鰻なんぞ、この何年か口にする機会はない。藤田さんも書いていますが、スーパーで買い物しようにも、国産なんて売ってない。タコはモーリタニア産、サーモンはノルウェー産。「世界有数の豊富な漁場を抱え、国内市場も安定している日本の光景」がこれなのです。水産物は輸入物のほうが安い。

 インボイス制度の導入とか、近頃の政策は、確かに求めている人がいるんだろうけど、俺は求めてないぞ!っていうものが多くて、どうしてなんだろうと思っていたところに「食べて応援しよう」パフォーマンスの違和感の謎が解け、あー、そうか、やっぱり俺たちのことは眼中にないんだな、という薄々知っていた事実を突きつけられて悲しい。
 実はサーフィンで福島の海の安全をアピールしたあの人のほうがリーダーには・・・さすがにそれはないか。

蠱惑暇(こわくいとま)

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