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エッセイ 効率と愚直

 10月29日の読売新聞の「科想空感」という記事に書いてあったんですが、今年は「ドーハの悲劇」からちょうど30年の年らしい。男子サッカーW杯のアジア最終予選イラク戦で日本代表はロスタイムに同点とされ、本大会初出場を逃しました。たかだか30年前には、まだ日本代表は本大会にすら、出場できなかったのが、いまでは昨年、決勝トーナメントに勝ち進むレベルに達しました。すごいことです。

 30年あればサッカーチームを強豪に変貌させることができる。そりゃあ、当時13歳だった少年が43歳になってるわけだから(私のことです)何がどうなるかわからないですよね。私だって30年前、いまの暮らしは想像できなかった。

 東京電力福島第一原子力発電所で今年8月に始まった処理水の海洋放出も約30年に及ぶ計画です。溶け落ちた燃料デブリの取り出しが遅れれば、さらに期間は延びるらしいですが、まずは30年後、処理水の海洋放出はどのような経過を辿っているんでしょうか。

 事故を起こした東電に本当にできるのか。国内外から厳しい視線が注がれる。と記事には書いてありました。

 短い記事ながらとても面白かったので引き続き、参照しながら書くのですが、原子力安全推進協会の講師などを務める危機管理の専門家、小林宏之さんは元日本航空機長。死者520人を出した1985年のジャンボ機墜落事故を間近で体験して、一つのミスも許されない中で企業再生を進めた日々の生き証人いわく、「東電の現場で働く方々も同じでしょうね」

 日航は苦境を乗り越えて、30年以上、乗客死亡事故ゼロを続けています。効率が悪くても時間がかかっても、「一番大切なのは安全」と言い聞かせて確認を繰り返してきた小林さんは、「『なぜそこまで?』と笑われるほどの愚直さを忘れないでほしい」と言います。
 
 効率を凌駕する愚直がある。愚直になれず効率に逃げてしまわないように。

蠱惑暇
こわくいとま

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