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エッセイ『十八年前』

 阪神が優勝した週の週末に阪神ファンの友人が結婚式を挙げました。僕は別の知人の結婚パーティーに先に誘われていたため行くことはできなかったのですが、きっと二人は阪神優勝の狂騒とともに挙式の風景を思い出すのでしょう。おめでとうございます。

 思い出す、といえば、阪神がリーグ優勝したのが十八年ぶりということで、僕も十八年前は何をしていたか、と記憶を辿ってみたところ、あの年は日本シリーズで阪神がロッテに歴史的大敗を喫しており、僕はそのロッテの勝利を大阪ミナミのどこぞのテレビで見ていたのを思い出しました。

 あれはFM802主催のライブサーキットイベント「ミナミホイール」に出演した日の夜でした。ライブのことは全く覚えていませんが、その日の夜にバンドメンバーの佐々木くんと痛飲したのは覚えています。佐々木くんと飲むといつも痛飲になります。昨年は死んでしまったメンバーの加藤くんの墓参りのあと、佐々木くん含む仲間たちと痛飲しました。たぶん死ぬまでいろんな場面でいろんな人と痛飲をする。前後のことは覚えておらず、痛飲の際の記憶もどこかに飛んでしまうのだけど、痛飲したという事実の記憶だけが残っていくのでしょう。

 あの日、パナソニック製の新しい乾電池が発売となり、その性能が凄くて同じCDプレイヤーでも従来の乾電池を入れたものと、この新しい乾電池を入れたものでは音質が全く違うから是非試しに聴いてみてください!と街角で話しかけられ、バンドメンバー四人で交互に聴いていき、「ほんまや!全然違う!」と驚き合いながら、どっちのCDプレイヤーが新しい乾電池か、を「いっせいの」で指差すことになったのですが、ガチで僕だけ違う方のCDプレイヤーを指差していたのでした。いま考えるとバンドをやめるきっかけになった事件だったのかもしれない。

 十八年後は六十一歳。六十一歳の僕は四十三歳のどんな僕を思い出すのだろう。

蠱惑暇(こわくいとま)

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