エッセイ『誤審騒ぎ』

　プロ野球も高校野球も白熱している。ファン同士も熱くなる。いまは見かけなくなったが昔はファン同士の喧嘩なんぞ日常であった。
　これはあるミュージシャンから聞いた話だが、いまもテレビなどで活躍しているＯ友康平さんは大の巨人ファンだ。もう何十年も前のこと、Ｏ友さんが広島市内でタクシーに乗り、意気揚々と巨人の話をしていたところ、まだ目的地でも無く、赤信号でも無いのにタクシーが急停車し、「巨人ファンを乗せるわけにはいかないから降りてくれ」と言われたらしい。こういうことは昔はよくあったのではないかと思う。いまもあるのかは知らない。

　毎度毎度なんとかしてほしいのは審判の誤審問題で、昨日の阪神広島戦でも主審のストライクゾーンがぶれぶれやとどちらのファンも怒っていた。ＡＩに審判をやらせるべきだとか、ストライク判定にもビデオ判定を導入すべきだとか、いろんな意見があるが、人がその場で判断するからこその妙味というのが絶対にあるはずで、それも込みで野球を楽しんでいる節が我々には絶対にあるはずなんである。ただ、審判の「オレがストライクにしてやった」感の出過ぎたジャッジのパフォーマンスは本当に要らない。淡々とジャッジだけすればいいとバカリズムさんも言っていた。

　野球のことは好きだが、本当に汚いスポーツマンシップのかけらもないスポーツだと思うのが誤審騒ぎの時であり、これは昔からよく書いていることなんやが、誤審で怒るのはいつも誤審で損をする側の監督ばかりで、こないだ誤審であんなに怒っていた監督が今度はその誤審で得したからだんまりを決め込んでいたりするではないか。あんなことで本当に野球界が発展していくのだろうか。「さっき君がセーフとジャッジしたから、うちに貴重な追加点が入ったけれども、どう見てもあれは誤審やからアウトに変更しなさい」と言えるようになれば、誤審騒ぎなんぞはほとんど無くなるはずなのに。

蠱惑暇（こわくいとま）

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