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1人目の客になれた話:京福西院駅近く神来裏編

 趣味はオープンしたお店の1人目の客になることです。一週間ほど前、私と同じ西院に住む方がX(旧ツイッター)に新店情報をあげており、「神来の裏に居酒屋がオープンするっぽい」ということだったので、その日のうちにお店を確認しにいったところ、確かにそこには店ができており、17時頃だったか、中にはすでに客がいる様子だったので遅きに失したか、と歯噛みしつつも店の外から中の様子を覗き込んでいると、店員のお姉さんが私に気付き、出てきてくれ、「オープンしたんですね」と聞いてみると「いまプレオープンなんですけど8日のお昼2時にオープンします、昼から呑めるお店です」と微笑みかけてくださったので、これは行かねばなるまい、とスケジュールを確認してみたところ、8日は昼まで大阪で生放送の水曜日!梅田で私用があるため、西院14時オープンの店の1人目の客になるのは厳しいかもしれないと思いつつ、それでも私の脳裏にはあの微笑みがあった。あの微笑みに対しては仮に負け戦としても出陣せねばならないと思った。
 危うく阪急特急桂駅を寝過ごしかけ、ぎりぎりのところを下車、準急に乗り換え西京極を経て西院を下車、改札を抜け早歩きで階段を駆け上がり、駅を出て右折、神来のすぐ横の路地を北へ上がる。白い胡蝶蘭の並ぶ店頭には誰も並んではいない。入口には花ではなく、なんとも形容しがたいおでんのだしのたまらない匂いがたちこめている。普段は必ず阪急大阪梅田駅の若菜そばできつねうどんを食べるのだが、そのルーティンをパスしてやってきた新店の店頭におでんのだしの匂いである。オープンまでの15分がこれほど恨めしいと思ったことはないかもしれない。

 オープン10分前、おでんの口になっている私の後ろにタクシーが止まり、降りてきた女性と目が合う。「うわー、絶対1人目になるつもりできたのにあかんやん」とおっしゃる。後で知ったのだが、こちらのお店は京都大学の近く、吉田山のあたりで長年屋台を営んでいた家のご子息がオープンしたそうで、タクシーから降りてきたのはそのご子息ファミリーの友人らしい。「もう、昼間から飲めるお店とか最高やんとか思いながら私、絶対1人目のお客さんになる!って思ってきたらもう並んではるからウソーって思ったけど1人目がいいお客さんでよかったわん」などとおっしゃるので、「実は私、オープンしたお店の1人目の客になるのを趣味にしてまして」と伝えると大変喜んでくれ、「せっかくこんな風にご一緒できたんやから1人目の客と2人目の客で一緒に呑みましょうよ〜」とお誘いを受け、はからずも二人で呑むことになった。一緒に呑んでいる間、十五回くらいは「ほんまに私、絶対に1人目の客になるつもりで来たのに1人お客さんが立ってはってショックやったんやけど1人目のお客さんが1人目の客のプロやったさかい、それでなくてもいい感じのお客さんやからこの人でよかったって思ってたけど、ほんまにこの人なら1人目譲ってもよかったわー」とお話しになり、「私、ほんまに五千円払って、これで1人目譲ってくださいって言おうと思ったくらいやもん」とおっしゃるので、五千円払ってくれるなら全然譲ってあげたのに、などと思いながら、大変楽しくご一緒させていただいた。

令和6年5月8日午後2時、京福西院駅すぐ、神来裏にオープンした京都屋台せせりの1人目の客は私です。

めちゃくちゃええ店!
新しい1人目の客Tシャツ❤️

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