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泉屋ビエンナーレ2023

 天王町という、なんともすごい名前の交差点を東へ。なだらかな斜面を上がっていくと泉屋博古館がある。住友家旧蔵の美術品を中心とする住友コレクションを保存、公開している美術館である。住友家がどういう家なのか、いまいちわかっていないのだが、とりあえず置いておく。そのうちわかる時がくるだろう。
 住友コレクションには青銅器、書跡、絵画、茶道具など約3500点があり、季節にあわせて企画展で公開されている。
 今回、私が見てきたのは『泉屋ビエンナーレ2023』という企画展。10人の現代鋳金作家が中国古代青銅器からインスピレーションを受けて作った作品が展示されている。正直なところ、興味のあるなしでいえば、まったく興味のない分野なのだが、ここ数年、そういうところを切り開いていかんかったらあかんのと違う?という内心からの突き上げがあり、また、周囲を見渡してみても、そうやって切り開いていっていない人がことごとくカッコ悪く思われ、そうなりたくない一心で重い腰をあげているものである。

 10人の作家さんは一人も知っている名前がなかったが、展示を眺めているうち、この作風はこの人だな、ということはわかるようになった。同じ中国古代青銅器という縛りから着想を得ているにも拘らず、まさに十人十色の仕上がりになっており実に面白い。これは例えば、同じ密室殺人を描いていたとしても綾辻行人と東野圭吾と有栖川有栖と青山剛昌とではまったく違う作風になるのと同じではあるまいか。着想するところは同じであったとしても、それをどう表現するかによってこんなにも仕上がりは変わるものなのか、という驚きがよりダイレクトに脳内に響いてきた。

 また、現代作家さんたちが着想を得た中国古代の青銅器もさらっと展示してあったのだが、これはもう妖気がすごかった。ただの器と侮るなかれ、あれは容器ではなく妖気である。思いのほか楽しい展覧会であった。

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