二三味ゆきね(にざみゆきね)

妖怪とファンタジーが好きな人。ファンタジー小説を中心に書いてます。時々イラストやハンド…

二三味ゆきね(にざみゆきね)

妖怪とファンタジーが好きな人。ファンタジー小説を中心に書いてます。時々イラストやハンドメイドも。よろしくお願いします。

マガジン

  • 十二支とボクら

    「十二支」「令和初期っぽい」「妖怪」をテーマに書いていきます。 どのお話を読むか迷った際は、メインストーリー「黒山家の秘密」をおすすめします。

  • 海と共に

    日本にあるかもしれない島で、西洋のモンスター達が出たりでなかったりするお話。

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黒山家の秘密 序章 ー零ー

<あらすじ> かつて十二支と協力した人間達が封印した、大妖怪「酒呑童子」。 その封印が、破られかけてしまう。 十二支達は、代々力を授けている家系に助けを求めるのだった。 十二支の戌は、ある出来事がきっかけで、黒山優一を正式な戌の継承者にするために契約を交わす。 授けられた力で犬神を倒した優一だが、犬神と同じように優一の祖母も黒煙を上げて消えてしまう。 そこに、鬼の面をかぶった男が現れる。 優一は午の咲楽と、午の継承者のルリと共に他の継承者を探しながら、妖を退治していく。 その

    • 猫麻呂の記憶の断片 その2

       酒呑童子の妖力。それはとてつもなく強大であり、邪悪でした。  手頃な人間、もとい、封印の警備をしていた術者に乗り移った酒呑童子。 彼は、瑞雅(みずまさ)を小脇に抱えて歩き出します。  術者の面影はすでに消え去り、額には立派な二本の角が生えておりました。 「おい、坊主」  瑞雅を抱えた腕を振りながら、酒呑童子は低い声で唸るように言いました。 「……」  瑞雅は、全てを諦めた表情で何も言いません。だらしなく手足を地に向けて垂らし、口は真一文字に閉じています。 「

      • 猫又の記憶の断片 その1

         それは、とおいとおい、むかしむかしのお話。  あるところに、それはそれは栄えた家から逃げ出した青年がおりました。  青年は、本来その家の人間には相応しくない力を宿しておりました。  彼はその身に宿した「妖力」を疎まれ、蔑まれ、彼の母は彼を産んだことを責められました。  彼は成人する頃、自分はこの家を出ていくから、どうか母だけは許して欲しい、と父の前で泣きながら両手をつき、頭を床に擦り付けました。  その頃の母の心は荒み、もう限界でした。  ある朝、青年が目を覚ま

        • きらめきのひと

           見回す限り、同じ「推し」を推す人達であふれている。  彼女が好きなもの、メンバーカラーのアイテムを手にしている人達に囲まれた場所で、私はすうっと息を吸う。  ああ、この空間がたまらなく好きだ。  会場の照明が、ゆっくりとライブ開始を告げるように暗くなる。  これから始まる瞬間への興奮と期待に包まれていたライブ会場が、しんと静まり返る。  推しの単独ライブが始まった。  推しが所属しているグループの曲を使ったイントロ映像が流れる。推しが映る度に、黄色い歓声が上がっては消えた

        • 固定された記事

        黒山家の秘密 序章 ー零ー

        マガジン

        • 十二支とボクら
          20本
        • 海と共に
          6本

        記事

          「猫麻呂からお手紙が来たようだ」

           さて、8月1日でございます。  紛う事なき夏、それも連日うんざいするほどの最高気温をたたき出す酷暑ですなあ。  ワタクシが生まれた頃よりずうっと暑くて、妖の分際ながら身体に堪えるものです。   雨が降らない日が続いた日は特に、「救急車」とやらの音が何度も聞こえていたほどでございます。  さて、佐野家のエアコンとお友達になったのかと思うほど世話になっている今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうかな?  夏休みに入った学生さん、子供が連日家にいて献立に四苦八苦されている

          「猫麻呂からお手紙が来たようだ」

          黒山家の秘密 第十一話

          「っ!?」  俺は空間の中で目を覚ます。  汚れを知らない白に囲まれたその場所では、無数の淡い光が浮かんでは消えていた。 『起きたのね』  声のする方を見る。オレの足下より少し離れたところに、それはいた。  真っ白な体毛に、ブルーとイエローのオッドアイの猫。きちんと前足を揃えておすわりをしていて、尻尾はその足元に巻き付くようになっている。 『あんた、「戌」の子よね』 「そう……だけど。君は?」 『アタシは――フンッ。ホントは名乗るのも不服だけど』  不服そうに舌打ちをした猫は

          猫麻呂はホントは

          (※ホラー注意!) 「猫麻呂ってすっごく弱そうな見た目してるよね。強い妖力を持ってるなんて嘘じゃないの?」 「ほお……それは愚弄ですかな」 「え?」 「ワタシはあくまでも猫又でございます。専門はあくまで呪(まじな)いですが……。人の子の腕や一本や二本喰いちぎるなど、赤子の手をひねるよりたやすいこと。くれぐれも口の聞き方には気をつけなされよ……」 「ご、ごめんなさい」 「分かれば良いのです」

          黒山家の秘密 第十話

          「……あれ?」  目を開くと、無数の白い光の玉が浮かぶ空間が見えた。夜の日本庭園の中にいるようなその場所は、現実味がなくて何だか異世界のようだ。  ――と、脳内にノイズのような物が走ると共に、ある映像が浮かんだ。  大きな瞳から涙があふれている着物の女性と、俺とそっくりな顔をした子供の、悲しそうな表情の映像。  ――これは、一体。 「ゆ、ゆーくん。ここ、どこだろうね?」 「なんだ? 光がたくさん浮いてる……」  声のする方を見ると、不安そうに佇む理花と、キョロキョロと辺りを見

          黒山家の秘密 第九話

          「……ふーん」  長髪の女性は、俺と理花を上から下までじろっと見ると、長いため息をついてその場を去って行く。 「あ、あの! 君は」 「なんであんた達には『悪意』が無いのよ。こっちは焼き尽くしたくてしょうがないのに」 「え?」  カツカツと靴音を鳴らして去って行った先は、先ほど車から見ていた立派な洋風の建物だ。改めてみると、本当に豪華だ。 「ふたりとも、怒らないであげてね」  咲楽さんは少し困ったように笑いながらそう言う。 「あの子はちょーっと人付き合いが苦手な子ってだけだから

          空虚編

          「に、人魚姫? リリー、貴方そうなの?」 「今はそれどころじゃないわこころ! あいつ……人間と、契約してしまったのね」  不快そうに顔をゆがめるリリーとは対照的に、ミソハギは牙をむきだして笑う。その羽は、愉快そうにゆらゆらとはためいた。 「クックッ、あの人間は非常に愚かだったなあ。愛の恋だのに溺れて、しまいには自分を投げ出してしまう『従属契約』をしてしまうとは……まあ、そのおかげでボクはこうやって自由に動けるわけだが」 「そんな……あ、貴方は一体誰と契約を」 「アハハハハハッ

          幕間 青い瞳の少女は、今日も海の夢を見る

           朝。ベッドから起きると同時に、一番海がよく見える窓まで駆けていく。 小さな手で開けた窓の隙間から、海の香りを嗅いだ。朝日に温められた潮の香りが、鼻から通って私の頭に朝を告げる。  朝食を運んできたメイドに怒られて、渋々窓を閉める。海には行ってはダメですよ、今日はナントカの予定があるので早めに召し上がってくださいね。とブツブツ文句を言われながら、私は運ばれてきた食べものを喉へと押し込む。  でも、朝食と身支度の間は、私が空想の中の海へと飛び込める時間だ。  海の味とはほど遠い

          幕間 青い瞳の少女は、今日も海の夢を見る

          『虹姫という名の魔法使いとボク』

          クロスフォリオとnoteに載せている、 オリジナル短編小説 『虹姫という名の魔法使いとボク』 を、ネームにしました。 #創作大賞2024 #オールカテゴリ部門

          『虹姫という名の魔法使いとボク』

          海と共に 第四話 ー星の海編ー

           リリーと知り合って1ヶ月ほど経った頃。こころはいつものように学校へと足を進めていた。 じりじりと照りつける真夏の太陽にチラリと視線を送り、ため息をつく。すがすがしいほどに青い空が、こころをじっと見つめていた。  ーーああ、ずっとあの優しい人魚と一緒にいたい。  学校にも、家にも居場所のない私を受け入れてくれた、あの海と人魚が恋しい。いっそまた海に身を投げ、また彼女に助けてもらおうか。 「そうすれば、この地獄から解放されるかも……」 「地獄って?」  突然声をかけられ、ここ

          海と共に 第四話 ー星の海編ー

          海と共に 第三話 ー共謀編ー

          「じいちゃん、コイツのことなんだけど」 『ほお! そんなものを捕まえたか』  竜輝は自室のパソコンで祖父と通話していた。先ほど連れて帰ってきた吸血鬼(今はコウモリのようになってピクリとも動かないが)の足をつまみ、パソコンに搭載されているカメラ越しに祖父に見せている。  竜輝の祖父は昔から人智を超えたモノーー妖怪や西洋の怪物について詳しい人だ。 昔はカッパに会いに行くだの、本気でネッシーを捕まえるだの、雪男が出た山に行ってくるだのと祖母を困らせていたらしい。 今は仕事の関係でイ

          海と共に 第三話 ー共謀編ー

          逢魔時に見た夢

          子供の頃、風邪を引いた日の夕方に見た夢を、私は時々思い出す。 「おや、お嬢さん。夕暮れ時に……逢魔時に『こんなところ』にいては危険ですぞ。ワタクシについてきてください。 ほら、手を握って……ああ、ここから先はお静かに。声を出してはいけませんぞ。 生憎、ここは『人の魂』を好む妖のナワバリに近いですから」 目が覚めた時、熱はもう下がっていて、体のだるさも無くなっていた。 ただの夢なんだろうけど、あの優しい猫又さんに、また会えるといいな。

          暖かくなってくると「ボクらの太陽」について、語りたくなってくる

           毎年気温が高くなってくると、とあるレトロゲームのことを思い出す。  それは、ゲームボーイアドバンス(GBA)のソフトとして、2003年の7月に発売された、太陽アクションRPGゲーム「ボクらの太陽」だ。  当時珍しかった、太陽光を使った画期的なシステムを導入したゲームだ(もちろん今でもそのようなゲームは珍しい、というかほぼ存在しないと思う)。  太陽の光を、主人公の武器(太陽銃)のエネルギーとして使用したり、ダンジョンのギミックに作用したり、主人公の武器を作るときにも使ったり

          暖かくなってくると「ボクらの太陽」について、語りたくなってくる