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第3部 南西部への旅        [20] New Mexico を旅する

20-3   New Mexico Albuquerque へ

  I-25 の平滑な直線道路を「Albuquerque」へ進路をとる。
 フリーウェイ沿いの住宅地にモダンな Adobe 建物が見え隠れする。
 ホーリーの指示に従い I-25 を降りる。
「Ryu, shall we go to Albuquerque Old Town for lunch? 」
「OK.......I guess in this area it would be Mexican? 」
「That's right. I guess you can get more authentic Mexican food than in Denver......本格的なメキシカンが食べれると思うよ」
 
 パステルカラーと丸みのある漆喰壁の華やかな「Pueblo-Spanish」スタイルの建物が建ち並ぶ、街並みは圧巻だ。モダンな雰囲気の「Old Town」に驚かされる。
 旧市街 Romero Street 沿いのレストラン「Los Compadres 」に立ち寄る。
 外壁はメキシカンなオレンジとピンクとグリーンの原色カラー。店内にはいると、マリーゴールドに彩られた壁にテラコッタタイルや天然木の家具、織物で装飾されている。彩度が強くカラフルな色彩だが、温かみのあるインテリアは家庭的な雰囲気がする。
 テーブルに座るとホーリーは、直ぐに”Margarita” のクラシュ、俺はオンザロックをオーダーする。生ライムをきかせた爽やかな味がする。
 メインに” Fajitas”と” Arroz con pollo” を注文し、二人でシェアする。
 大皿が二つ、ドンと置かれる。 Fajitas は牛肉と玉ねぎ、野菜にスパイスを絡めて焼いた料理。 Arroz con pollo は 、刻んだトマトで炊き込んだパエリヤ風の骨付き鶏肉入りご飯に豆を煮込んだ” Frijoles”が添えられた。Salsa Sauce と Cone Tortilla のバスケットが並べられた。

「Holly, how do you eat this dish? It's a huge portion. Can we eat it all? 」
「Ryu, you don't have to eat all of it. We'll take some home......お持ち帰りするから....... This is, you put meat and vegetables on this corn tortilla, pour salsa sauce on it, and bite into it......これはね、このコーン・トルティアに肉や野菜を載せて、サルサソースをかけて、かぶりつくのよ」
 トルティアにかぶりつく、思わず「旨い.....It's delicious. Mexican food is so flavorful.....メキシカンがこんなにおいしいとは......デンヴァ―で食べたのとはひと味違うワンランク上の味だね......I had never tasted Mexican food like this.」と驚くと「Wow, it's a whole different level of flavor from what I had in Denver......デンヴァ―で食べるのとはひと味違うワンランク上の味ね」とホーリーからも笑顔がこぼれる。マルガリータと共にメキシカンを堪能する。

 流雲はアメリカの都市を訪ねる度に「Old Town」を歩くのが習慣化している。
 街の最も重要な史跡は旧市街にある。旧市街を散策することは史跡巡りであり、アメリカの多様な文化を知る機会になる。
 昼食後、オールドタウンを散策する。「Pueblo Spanish」の建物とレンガ敷きの石田畳にメキシカンの風情が漂っている。
 極彩色のメキシカンなショップを巡るのが楽しく時間を忘れさせる。

 旧市街は、スペイン人の侵略後に整備された街であり、現存する建造物は 1870 年から1900 年の間にスペイン統治時代に建設された文化遺産である。
 旧市街の中心に緑の樹々に囲まれたプラザがある。プラザの庭園に囲まれ「Gazebo」が建っている。7名編成の楽団が、ガゼボの中で「Mariachi」を生演奏している。
 ソンブレロを被り、メキシカン衣装に着飾った楽団がバイオリン、ギター、トランペットを奏でている。「マリアッチ」独特のトランペットの物悲しい高音が、プラザにこだまする。
 演奏を聴いていたホーリーは「Mariachi musicians have a very high level of musical style and playing skills......音楽スタイルと演奏技術が凄いわ....... Excellent sound is being produced. Amazing.......感激よ、素晴らしいサウンドを生み出してるわ」
「Cheerful music..... 明るい音楽だね.....Rhythms that made me want to dance to the music......音楽に合わせて踊りだしたくなるリズムだね」
「Ryu, They are playing improvising and arranging the music.....彼らは即興で音楽をアレンジしながら演奏しているわ...... Great expressiveness......表現力が素晴らしいわ」
 旧市街に響き渡る「マリアッチ」の調べは、メキシコへ誘うように木魂する。この街がメキシコだと実感する。

 ラテンの明るいリズムの「Mariachi」に聞きほれていると......。
「How sadness oozes from the mariachi's vibrant tune.......マリアッチの明るい調べの中に悲しさがにじみ出ているわね」
「What do you mean? 」 
 ホーリーが語り始めた.......You know we don't celebrate Columbus Day......マリアッチの明るい調べの中に悲しさを感じるのは、悲しい歴史があるからよ.....メキシコ地域には2万年以上前に人類が進出し、高度な文明が築かれた。メキシコにはインディオのアステカ王国が築かれていた。コロンブスはスペイン王室との契約により、カリブ諸島やメキシコ侵略し先住民を奴隷にし黄金を略奪し虐殺した。この行動は、アメリカ国内の先住民族にも壊滅的な影響を与えた。その後スペイン人コルテスが、カリブ諸島やメキシコを征服しアステカ帝国を滅ぼし先住民の社会と文明を破壊した。メキシコ人にとって、スペインは先祖を殺戮・蹂躙した侵略者の認識しかない。と語った。

「Ryu, Nevertheless, the melody of "Mariachi" was born out of the suffering of accepting Spanish civilization and purifying the memory of the humiliating past......それでもスペイン文明を受け入れ、屈辱の記憶を浄化する苦しみから生まれたのが『Mariachi』のメロディだと思う」
「Makes sense. So, it sounded like some kind of sad melody. 」
(何か複雑だなぁ。スペイン人の侵略虐殺によりインカ帝国やアステカ帝国が滅亡した。このアルバカーキーをメキシコから強奪したのはアメリカだし......)

 旧市街を離れる。僅か10分程の所に「Petroglyph National Monument」がある。
 ペトログリフ国定記念物内には、北米最大の「Petroglyph」遺跡がある。400 ~ 700 年前の古代プエブロ族に描かれた「ペトログリフ」の遺跡が保護されている。「Petroglyph」はギリシア語の「岩面彫刻」を意味している。

 公園入口にトレイル案内図が立っている。17マイルの斜面に約2万点の「ペトログリフ」が現存するルートが記されている。
 ペトログリフ国定記念物内には、「岩面彫刻」を巡るトレイルは3コースのルートがあった。時間的制約もありホーリーと相談し、90分コースを歩き出す。

 暫く、トレイルを歩くと「Boca Negra Canyon」トレイルの入り口に無人の料金所があり、1ドルを封入し投函する。
 トレイルは道幅4フィート程の荒れた一本道を歩く。岩石がゴロゴロする砂利道のトレイルの周りに、膝丈ほどの灰緑色ブッシュが砂漠に点在している。
 トレイルの脇に「ガラガラ蛇、注意!」のサインが立っている。少し緊張しながら歩く。
 
 赤茶けた乾燥した大地に咲く 灌木 Ash Green が砂漠感を際立たせている。ホーリーが遠くを指さしながら.......「I can see ”THE CINDER CONES” with the Sandia Mountains in the background......サンディア山脈を背景に"シンダーコーン"が見える」
「The hills of the cinder cones? What's that?.....噴石丘の丘?それは何?」
「Cinder Cones are also known as ash cones........灰円錐とも呼ばれる...... the type of volcano that is formed by pyroclastic fragments like volcanic ashes, solidified lava pieces, volcanic clinkers, pumice & hot gases......火山灰、溶岩片、火山砕屑物、軽石、高温ガスなどの火砕片で形成される火山の一種よ」
(ちょっと、異様な景色だ。噴石丘の景色は、火星の風景を彷彿とさせる。溶岩の燃えがらが積み重なった山には、植物のかけらも見えない)

 ボカ・ネグラ渓谷トレイルはとても狭く山肌に火山岩が転がっている。ロープが張られた先に「岩絵」が点在して見える。石ノミとハンマーストーンを使用した素朴で稚拙な”絵”が刻まれていた。動物や人間や道具が描かれ、中には恐竜がテニスラケットを持っているような漫画のような”線画”もある。 
 トレイル脇にプエブロ族が火山岩に描いた少し大ぶりの”岩絵”が、数多くみられた。
 西暦1300年頃から1600年頃に刻まれたと案内板に記されていた。「岩面彫刻トレイル」は岩だらけの歩き難い道が延々と続く、中々タフなトレイルだ。
 このラフな古代路を歩くことにより、古代人の想いが伝わってきた。
 熊野古道を思い出させた。あまり整備されていないトレイルを一歩一歩進む。古代に遡る古代路を歩む錯覚にとらわれる。「Pecos Pueblo 集落跡」を巡る旅路は、数百年前の古代プエブロ人の静寂の中に沈んでいた。

  ホーリーは次の目的地について......。
「Ryu、 ニューメキシコの美しい自然を見てみたいのだけど...... I would like to see some of the natural beauty of New Mexico. It's a bit of a detour, but do you want to go to the『White Sands National Monument』?......ちょっと遠回りになるけど『ホワイトサンズ国定記念物』に行ってみない?」

「Okay? 良いけど、どんな所なの......What kind of place is it?」
「It's a mysterious desert. There is a white desert near the Mexican border.......不思議な砂漠なの。真っ白な砂漠がメキシコの国境近くにあるの......We never come to New Mexico anymore, and it's not often we get a chance like this, so let's go......もう、ニューメキシコに来ることも無いし、こんなチャンスは滅多にないから行こうよ 」
「How long does it take? 」
「It's about five hours south of here. But if you drive on the freeway, you can get there in about 4.5 hours if you hurry. 」
「Since this is an unplanned trip, let's just enjoy the drive......」
(4.5時間の遠回りになるが、予定の無い旅だからドライブを楽しむ感じで行ってみるか)

 次の目的地「White Sands National Monument」に進路をとる。州間高速道路 I-25 を US-285 South に乗り換え、砂漠の中を突っ切る一直線道路を走る。
 ハンドルを切ることも無く、約2時間半ひたすら走る。見渡す限り砂漠以外何も無い。
 US-54 South に乗り換えると流雲は一気にスピードを上げる。
 赤い岩と赤い砂に覆われたニューメキシコ南西部を休息もとらずに約4時間半、時速70マイルで突っ走り「White Sands National Monument」に到着する。


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