【短編】永遠の親友 No.4 最終話
永遠の親友 No.4 最終話
なぜ・・クリスが・・。
ファーは、目の前で盛んに眠そうに目をこすっているクリスの姿を見つめていた。
自分自身で眠らせたのだ。自分が眠りに入るか、術を解くかしない限り、目が覚めることはないのに。
「どうしたの、ファー?」
クリスが不思議そうに尋ねる。
『クリス・・なぜ・・。』
「ねぇ、大きなもみの木だね。ここが願いの叶うところなんだ。」
クリスは目を輝かせて言う。
「僕の願いも叶うかな。」
『そ、それは・・。』
『いいだろう。叶えてやろう。』
ファートゥリー!
ファーは驚いて彼の名を心の中で叫ぶ。
「いいの?やったぁ。」
クリスが嬉しそうに顔を綻ばせる。
『さぁ、言うがいい。クリストファー。』
低い声がクリスたちの頭に響く。
「僕、ずっとファーと仲良くしたい。」
クリスの言葉にファーは言葉を失った。
「毎日、ファーと一緒に遊んで楽しいんだ。でも時々不安になるんだ。このままでいられるのかなぁって。」
『・・・。』
「だから、いつまでもファーと友達でいさせてください。お願いします!」
『クリス・・。』
ファーの目から一筋の涙が零れた。カミュスの言葉の意味も、クリスと別れるのを嫌だと思った自分も、彼は今分かったのだ。
『・・叶えよう。』
その時もみの木から強い光が放たれて、全ては光に包まれた。
雪が積もり続けている・・。
美しい金色の髪を持つ青年は、深い闇の中、すぐ隣に面した森の中を窓からずっと見つめていた。
「何を見ているんだ?クリス。」
優しく問う声にクリストファーは振り返りもせず答える。
「雪を・・雪を見ているんだ。」
「よく飽きないなぁ。」
少しからかいの意を含んだ声で彼は告げる。
「早く始めようよ。パーティーを。僕これから年一回のお仕事なんだから。」
「ああ・・そうだね。」
ちゃんと帰ってくるんだろうね。振り返る様子もなく、クリスは拗ねたように呟く。
「もちろん。クリスは僕の親友だもの。」
「永遠の?」
クスクスとクリスは笑う。しかし、しばらくしてクリスは笑うのを止めると、ゆっくりと立ち上がる。ドアをノックする音が耳に届いたからだ。
「お客さんじゃないの?」
パーティーは中止かな?
「いや、カミュスさんだろう。」
クリスは腕に力を込めて、木製のドアを手前に引いた。風や雪と共に大きな人影が見えた。
「よぉ、久しぶりだな。クリス。」
「カミュスさん。」
クリスは嬉しそうに笑顔を見せる。
「ファートリアンも・・な。」
肩や頭に積もった雪を払いながら、カミュスヤーナは告げる。
「カミュスヤーナ・・。」
金色の髪を持つ青年は、その美しい深緑色の瞳を大きく見開いた。
「さぁ、カミュスさん。これからパーティーをするところだったんだ。一緒にやろう。」
「あぁ、もうこんなに夜が更けてしまったじゃないか。」
クリスの口から二つの声が交互に紡ぎ出される。カミュスは漆黒の瞳に暖かい光を浮かべて、その様子を見つめていたのだった。
北方の雪に閉ざされた森。
その森の中央に1本の巨大なもみの木がある。
そのもみの木に存在する森の王ファートゥリーは。
ただ『勇気ある者』を待ち続けている・・。
End
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