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【小説】目が覚めたら夢の中 第3話:第一夜の3

第一夜の3

この世界では人が魔力を持つ。
人はみな魔力をもって生まれるらしい。
その魔力量は個人の資質によるとのことで、資格としても’魔法士’があるそうだ。
魔法士になるには一定の魔力量と免許が必要で、魔法士にならないと大っぴらに魔法が使えない。

カミュスもそして記憶のない私、テラも魔法士であるらしい。

「私も魔法が使えるの?」
「むろん。」
彼は紅茶を口に含んだ。お菓子はクッキーらしい。私も口にクッキーを入れる。
口の中でほろりと崩れる。とてもおいしい。

「魔法士と認められると、手にその証である証石 しょうせきを埋め込まれる。その証石 しょうせきを介さないと魔法の発動はできない。」
彼は右の掌を開いてこちらに向ける。見る限りは特に変わったところはないが、ここに石が埋まっているのだろうか?

カミュスが口の中で何か呪文のようなものを唱えると、掌の表面に円形の水晶のような石が浮き出てきた。
「!」
「これが証石 しょうせきだ。普段は見えない。」
「触ってみてもいい?」
少し考えるように黙った後、頷くカミュス。

触れてみるとふわっとした温かさを感じた。先ほど掌をかざされた時に感じた頬の温かさと同じだ。
その温かさが心地よくて、すりすりとなでていたら、もういいかと彼の低い声が響いた。
カミュスの顔を見ると、何かをこらえるような、苦々しい顔をしている。若干目尻が赤い?

私はあわてて手を離した。
「ごめんなさい。痛かったりした?」
いや、問題ない。と、彼は右の掌を自分の胸に引き寄せ、握りしめる。

「私にもあるはずよね?」
自分の小さな掌を見てみるが、何かが埋まっているようには感じられない。
「魔力が奪われて、記憶も失っているようだから、今は顕現 けんげんできないかもしれぬ。」

「魔力って奪えるものなの?」
「通常はできない。」
奴ら以外は。カミュスは頭を振って、ソファーの背もたれにぐったりと身を預けた。

「この世界には、魔人と呼ばれる人とは違う種族がいる。その内、より魔力をもち、力の強い者を魔王という。人と魔人はそれぞれ別の種族であり、交易はあるが所在が異なる。通常関わりを持つことはないのだが、魔王は気まぐれに干渉してくることがある。」
私はその内の一人に目を付けられている。とカミュスが続ける。
「魔王は魔力を奪うことも可能。テラはまきこまれたのであろう。」
「それって、あなたのせいで魔力を奪われたということ?」

「奴は・・綺麗なものが好きなのだ。。」
私は彼の言葉にあんぐりと口をあけた。
「ときどき私と行動を共にしていたことで、君も目を付けられてしまったのかもしれぬ。」
たぶん、その容姿が気に入って、身体と魔力を奪われてしまったのではないかと、カミュスは言う。

「奪った身体を使って自分の近くに はべ自動人形 オートマタでも造っているのだろう。」
「それってひどい!」
「取り戻しに行くしかなかろうな。」
彼は大きく息を吐いた。

「私の目的も同じであるから付き合おう。もともと巻き込んだのは私ゆえ。」
それまでは私の夢の中にいればよい。とカミュスはさらっと告げた。

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