消費者のニーズと、作り手のこだわりと、ニワトリの生活は、共存できる
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消費者のニーズと、作り手のこだわりと、ニワトリの生活は、共存できる

大切にしたい想いや教訓を物語にして伝える。
その話を「ストーリーテリング」といいます。
ここでは勉強を教えない塾を通して出会った、
リアルな方の人生ストーリーをお伝えします。

「たまご」は、生活の中にありふれた商品です。
日本ならどのスーパーにもありますし、いろんな料理にも使われています。よほどのたまご好きか、特別な思い入れでもなければ、たまごに大きな価値を見出す人はあまりいないのではないでしょうか。

これは、そんなありふれた「たまご」の可能性を伝える物語です。

山形県に、半澤鶏卵というたまご農家の企業があります。

その後継者として期待されている半澤清哉さんは、三代目にあたります。現在は武者修行と販路拡大を見越して関東圏の養鶏企業に勤めており、頭の中ではいつも「たまご産業」の未来を考えています。
そんな半澤さんの想いと実践を少しお伝えします。

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創業者の孫として生まれた半澤さんは、物心ついた時からニワトリに囲まれて育ちました。

たまごは、家にも近所のスーパーにもある、ありふれた食べ物でした。安くて、どこでも買えて、栄養価も高い食べ物なので、半澤さんはたまごに対して良いイメージを持っていました。そして、おじいちゃんやお父さん、農家のみなさんに対しても、誇らしい気持ちを抱いていました。

「たまご産業」について疑問を感じ始めたのは、高校生くらいの頃でした。

中学生・高校生になって体力がついてくると、農家を手伝うことも増えてきます。ニワトリの世話から、たまごの収穫、鶏舎の掃除など、たまご農家の仕事にはたくさんの重労働がありました。さらに半澤鶏卵では、ニワトリが快適に育てるように、独自の工夫も加えていました。

ニワトリが体を動かせるように止まり木を置く。
安心してたまごを産めるように暗闇スペースを作る。

ニワトリの生態に合わせた養鶏は、手間がかかる割に、大量生産には向いていませんでした。

「こんなに手間がかかるのに、どうしてスーパーではあんなに安く売られているんだろう?」

そんな疑問が芽生えた半澤さんは、養鶏について少しずつ実態を学んでいきました。

スーパーに並んでいるたまごの多くは、大量生産ができる鶏舎で生産されています。多くの人の努力によって安さを実現しているので、それ自体は素晴らしいと思いました。

しかし一方で、「ニワトリの生育環境」には疑問を感じずにいられませんでした。

ケージいっぱいにニワトリを押し込め、たまごの収穫量を最大化する。
産卵はケージの中、産み落とされたたまごはベルトで運ばれていく。

それは農場というより、工場のような飼育環境でした。

・ニワトリの生育環境やたまごの品質に手間をかける半澤鶏卵
・大量生産と価格競争に手間をかける大手企業

手間をかけるポイントが違っても、市場に出れば同じ「たまご」として見られます。消費者に品質の違いが伝わらなければ、目に見える価格で判断されてしまいます。そうなると、大手企業の販売力には対抗できません。

どうすれば違いが生み出せるか、味の違いがわかってもらえるか、半澤さんは考えるようになりました。

半澤さんが進学や就職をしていく間に、実家の半澤鶏卵でも独自の取り組みが始まりました。

まず、「朝採れたまご」の活用です。

たまごは、一にも二にも「鮮度」が命。

新鮮なほどおいしいということは、「産みたて」が一番おいしいということです。そこで、朝の産みたてのたまごが味わえる「たまごかけご飯」の提供を始めました。

次に、「販売網」の開拓です。

近隣への販売だけでは市場が限られているので、関東圏や全国への販売を考えました。生卵ではどうしても鮮度が落ちてしまうため、加工食品の商品化を考えました。

市場を調べていくと、「燻製たまご」に可能性が見えてきました。

市場に出回っている燻製たまごのほとんどは「燻製液」で作られており、本物の木材チップを使ったものはなかったのです。燻製たまごなら、味を落とさず保存もききます。こうしてリサーチや施策を繰り返した結果、

燻製たまごの「スモッち」が誕生しました。

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取り組みを始めていく中、半澤さんもたくさんのことを学びました。

・市場は、必ずしも値段だけで判断しない

半澤鶏卵の高品質のたまごは、手間がかかる以上どうしてもスーパーと同じ値段設定にはできません。それでも、優先的に半澤鶏卵のたまごを購入してくれるお客様が一定数いました。

「濃厚さが、他とは全然違いますね」
「飼料によって黄身の色が違うのもおもしろいです」
「たまごかけご飯のお醤油とよく合うんですよ」

喜びの声を聞くたびに、半澤さんは努力が報われてきたように思えました。

・販売者である自分たちのキャラクターや取り組みを見て応援してくれる人がいる

半澤さんたちは、たまごの品質には自信を持っているものの、まだ十分には伝えきれていないと思っています。にもかかわらず、たまごの品質を知らないまま買ってくださるお客様が現れてきました。

「正直、味の違いはどこもよくわかりません。でも、半澤さんががんばっているので応援しようと思って買いました」

こういう販売のカタチもあるということは、大きな発見でした。

・応援してくれる人がいることで、ニワトリも守られている

半澤さんが大学・社会人になる頃、世間では「サステナビリティ(持続可能性)」という言葉が使われるようになってきました。人間の営みと、自然環境の維持を両立することの大切さを世間が認知し始めたのです。

もともとニワトリにとって住み良い環境を守ってきた半澤鶏卵でしたから、この世間の変化はとても喜ばしいものでした。みんなが自然を守るようにお金を使うようになっていけば、人間の営みもニワトリの営みも守られるはずです。

半澤鶏卵のたまごを気に入ってくださるお客様のおかげで、ニワトリたちものびのびと生きられていると思うと、半澤さんは嬉しくなりました。

新しい取り組みはまだ始まったばかり、市場全体としてはまだまだ大手の方が有利です。

世の中の動きを見ても、都市に人が集まり、地方から人が離れていく状況があり、家業の見通しも決して明るいとは思えません。それでも、自分たちの取り組みに価値を感じて応援してくれるお客様が増えてきたことを思うと、未来に希望を抱くことができます。

半澤鶏卵の取り組みが、お客様を喜ばせ、それによってニワトリの生育環境や自然が守られ、そして自分たち生産者も生かされる。

今まさに半澤さんたちが挑戦していることこそ、「サステナビリティ」を大切にすることなのかもしれません。

「消費者のニーズと、作り手のこだわりと、ニワトリの生活は、共存できる」

半澤さんはそう信じて今日もせっせと下積みの武者修行を続けています。


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勉強を教えない塾のじゅくちょう

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「思考と対話」をテーマに、事業物語やビジネスアイデアについて書いています。アウトプットで発想を広げる「勉強を教えない塾、目標を考えるための小説『思考と対話』、じゅくせいによる「起業インターンシップ」など、独特の活動を通して「人生の物語」を分かち合えたら嬉しいです。