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学ぶことは、「車輪の再発明」をせず、「巨人の肩の上」に立つことである

伝え方の技法(ストーリーテリング)を学ぶ『Dress Words Up』

 まずは第一回目の記事です。せっかく「伝え方・ストーリーテリング」について学ぶので、イメージを膨らませる表現ができないかと思って上のタイトルにしてみました。どうでしょう? イメージ湧きますか?

「車輪の再発明」
 すでに世の中に存在している知識や技術があるのに、それを利用せずに自分で一から生み出そうとすること。いわゆる「二度手間」のこと。経験者に相談したり専門書で学んだりしない態度を表すことが多い。

「巨人の肩の上に立つ」
 先人が積み上げた知識や技術を活かして、さらなる知識や技術を探求すること。論文を引用して研究をさらに深掘りしたり、特許技術を利用してより優れた製品を開発したりすること。

……要するに、「何か新しいことに挑戦する時は、事前にできる勉強や情報収集は済ませておいて、本当に必要なことに集中しましょう」ということです。「誰かが挑戦してうまくいかなかったことを、あなたもわざわざ経験する必要はない」と捉えることもできます。

 なぜわざわざこんな解説から始めたかというと、このマガジンは10代の子どもも読むことを想定しているからです。「伝え方の技法」を取り扱うマガジンなのに、わかりにくかったらダメですよね。中学生にも理解できるように書くので、物足りない人はもっと学術的なサイトへどうぞ。(そんなサイトがあるかどうかはわかりません)

 伝え方を学ぶ人というのは基本的に「立場が弱い人」です。立場が強い人は、わざわざ伝え方を学ばなくても周りの人が察してくれたり指示を強制できたりします。「アウェイ(=不利な立場)でのコミュニケーション」を身につけられるように、一緒に学んでいきましょう。

(ちなみに、立場が弱い人ってこんなイメージです)
 ・多数派の論理に押されがちなリーダー
 ・新しい環境に飛び込んだ新参者
 ・世間に認知されていないマイノリティ
 ・顧客に頭を下げることが多い営業職
 ・組織と現場の板挟みに陥りやすい管理職
 ・大人の保護化で制約がかかりやすい10代

 今回の記事はタイトルの通り、「全部自分でがんばろうとする前に、頼れるものを頼ろう」がメッセージなので、まずは伝え方やストーリーテリングの勉強に役立つ本を紹介することにします。

伝え方やストーリーテリングについて学べるオススメ本12選

 普段の会話から、会議、スピーチ、交流会まで、「言葉を使ったコミュニケーション」にはいろんなシーンがあります。シーンによって伝え方・伝わり方は違ってくるので、ここではシーン別のオススメ本をご紹介します。

(本の中身に関しては、ちょっと10代には難しいものがあるかもしれないので、難易度別に「☆」をつけてみました。本選びの参考にしてみていただけたら嬉しいです)

対面の会話にオススメの3冊

『賢く「言い返す」技術』

難易度★☆☆☆☆
実用性★★★★★

 これはもう、「イヤなやつ」対策としてマストかもしれません。笑
批判や嫌味に対してどう返せばいいか、とてもわかりやすく解説してくれてるので、学校や会社で誰か心当たりのある人がいるなら、ぜひ読んでみてください。

『パワークエスチョン』

難易度★☆☆☆☆
実用性★★★★★

 自分の話ではなく、相手の話を引き出すためのもの。「聞き上手は話し上手」と言われますが、ポイントは良い質問が出せるかどうか。この本では30以上のテーマに分けてさまざまな質問を用意してくれているので、覚えてしまえばそのまま使えます。

『会話の科学』

難易度★★★☆☆
実用性★★★☆☆

 スキルとして役立つというより、会話の「メカニズム」を知るための本です。会話の主導権がどのように移り変わるか、会話のペースをどう作っていくか、一歩引いて考えるのにオススメです。

会議や複数人の集まりに合う3冊

『Amazonのすごい会議』

難易度★★☆☆☆
実用性★★★★☆

 会議のルールやゴールなどをシンプルにまとめた本です。「最初の15分は資料を読み込む」「議案はA4用紙1枚か6枚にまとめる」など、具体的な方法が書かれているので、そのまま自分たちの話し合いに応用できます。うまくいっているやり方を真似るのは勉強の基本でもあります。

『他者と働く』

難易度★★★☆☆
実用性★★★☆☆

 「人と人は、そもそもお互い違う存在である」って、言われてみれば当たり前のこと。でも、それが共通認識になっている学校や会社はまだまだ多くありません。そういう「違い」を出発点にして組織を見直すための本です。価値観の押し付けや同調圧力を防ぐのに役立ちます。

『最高の集い方』

難易度★★★☆☆
実用性★★★★☆

 イベントや食事会を企画する時にかなり役立つ一冊です。誰を呼ぶか、何を目的にするか、企画の際に必要な考え方がたくさん載っています。参加者を残念な気持ちにさせないためにも、自分が主催者になる時は必ず確認しておきたい内容です。

大勢の前で話す時に重宝する3冊

『脅威のストーリープレゼン』

難易度★★☆☆☆
実用性★★★★☆

 TEDや海外番組など、世界各国のさまざまなスピーカーを題材に、プレゼンテーションの手法をわかりやすく解説した本です。章立てが細かいので、読書初心者でも少しずつ読み進めやすくなっています。スピーチ自体もそのまま参考になりますし、そこに秘められたテクニックの解説も納得です。

『ユーモアは最強の武器である』

難易度★★★☆☆
実用性★★★★☆

 タイトルそのまま、いかに話をおもしろくするかを科学した本です。少し分厚いので読み切るには時間がかかりますが、中身はかなり易しくなっています。ユーモアが成立するための条件とNGパターンとの境界線も解説してくれているので、ウケを狙って失礼になるようなトラブルも避けることができます。

『プロフェッショナルは「ストーリー」で伝える』

難易度★★★★☆
実用性★★★★☆

 今回ご紹介する本の中で、ストーリーテリングの技法について一番詳しくまとめられているのがこの本です。(この本を読んで僕は人前での話し方がガラッと変わりました!)少し細かくて長いので、読者対象は大学生以上かもしれません。それでもとにかくオススメしたいのでご紹介しました。

ストーリー性のある文章に必読の3冊

 最後は話し言葉ではなく、書き言葉の参考資料として。「ストーリー性のある文章」といえば、何よりもまず小説が頭に浮かびますが、小説にはバリエーションが無数にあります。数百字で書けるショートショートから、数冊にわたる長編まで、描写のテクニックもさまざまです。
 このマガジンでは「伝わること」が最優先なので、文学的要素はそこまで重視しません。それより型(フォーマット)がある程度決まっていて、伝え方のヒントになることを優先しました。そのため、ここでは小説の書き方ではなく、「脚本術」の方を取り上げました。
 脚本は映画の土台となる文章で、書くのは脚本家ですが、それをもとに表現するのは監督です。脚本家は監督にニュアンスが伝わるように書かなくてはいけないので、「伝わる文章」を学ぶのにかなり役立ちます。ここでは有名どころだけサラッとご紹介します。

『Save the Catの法則』

難易度★★☆☆☆
実用性★★★★☆

 タイトルからして「ネコを救え」って、ストーリーっぽいですね。中身もわかりやすく、少ないページ数で脚本のフォーマットがしっかりまとまっています。
 実は脚本って、「全部で約110ページ、○ページには必ずこんな展開が必要」みたいな型が決まってるんですって。映画業界には毎日たくさんの脚本が持ち込まれるため、素早く精査するためにチェックするところが決まっていったとか。まずはそういう暗黙のルールを押さえる意味でも読んでおきたい一冊です。

『脚本を書くための101の習慣』

難易度★★★☆☆
実用性★★★★☆

 こちらは脚本家のための「心構え」について書かれた本です。さまざまな脚本家が自分の実体験を語りながら、書く上で大切なことを伝えてくれています。特に「書けない」という悩みとプロがどう向き合っているかがわかるところがいいですね。

『物語の基本と原則』

難易度★★★★★
実用性★★☆☆☆

 長い上にちょっと難解なので、誰にでも勧められる本ではありません。(僕も2ヶ月くらいかけて読破しました)言葉遣い自体はそこまで難しくないのですが、ストーリーの要素を細かく分解・分析しているため、ある意味学術書に近い専門書かもしれません。もちろん読んでおくと「ストーリーとは何か」という深い部分の気付きが得られるので、他の本を読んでさらに深く理解したい方にはオススメです。

まずは先人の知恵を知って、少しずつ自分なりの技を身につけよう。

 武道の世界には「守・破・離」という教えがあります。基礎を忠実に「守」り、型を身につけたら少しずつ「破」り、最終的にそこから「離」れて自分の型を確立していく、という内容です。伝え方の技法・ストーリーテリングも、まずはすでに確立されている知識や技術を学び、型を身につけることが大切です。

 そういう知恵を頼らず、我流で挑戦して無駄に失敗を増やすのが「車輪の再発明」、先人の知恵をありがたく使わせてもらってより良いものを生み出すのが「巨人の肩の上に立つ」、ということです。一人でできることには限界がありますが、周りの人の力を借りたり、これまで人類が積み上げてきた知恵を借りたりすれば、人間の可能性はもっと広がります。
 伝え方の勉強は、まだ始まったばかり。これから一緒に一つずつ学んでいきましょう!

ストーリーテラー 福田幸志郎


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