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のぞき見とマネゴト: 行動の歯車をかみ合わせよう

◆ 日常は、ある日突然奪われる

2019年6月、広島の福山に住む谷本さんは、病院のベッドの上にいました。

「外に出たい。通常の生活がしたい。普通って、当たり前じゃないんだ」
運転中に横から激突される交通事故。谷本さんは腰の骨を折る大ケガを負って入院しました。

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楽しく携わっていた建築や設計の仕事は、当面お休み。家族にも、上司や同僚にも、迷惑がかかります。せっかくお見舞いに来てもらっても、気を遣って疲れてしまう。そんな自分がますます嫌になりました。

「もしかしたら、もう立ち上がれないかもしれない」
医者から告げられ、どうなるかわからないまま寝たきりで二週間。谷本さんは全身をチューブでつながれ、失意のどん底にいました。

神経の損傷があるかないかの狭間で、谷本さんは人生を見つめ直していました。このまま寝たきりになったらどうしよう。人生でやり残したことはないか。自分の人生、これでよかったのか……

それまでの人生、決して適当に過ごしてきたわけではありません。仕事には熱意を持って取り組んできました。しかし、人との温度差に悩むことも少なくありませんでした。

「もし回復できるなら、もっと自分のやりたいことに挑戦したいな」

そんな気持ちが希望となって、神経をつなぎとめたのかもしれません。ギリギリのところで、神経の損傷はありませんでした。谷本さんに回復の見込みが立ちました。

ひたすらベッドの上で過ごし、回復して散歩の許可が下りるまで三ヶ月……

「やっと外へ出られる……!」

病院の近くに出かけるだけで、歩けるだけで、喜びがいっぱいでした。

「せっかくなら、外に出た証を持って帰ろう!」

思いついた谷本さんは散歩の途中で本屋さんに立ち寄り、平積みされていた本を一冊買いました。それが、西野亮廣さんとの出会いの始まりでした。

(文字が大きいし、これなら読めるかも)
谷本さんには読書の習慣がなかったので、ハードルの低い本を選びました。しかし、想像以上におもしろくて、読み終わるまでに二時間もかかりませんでした。

病院生活はまだまだ続きます。ちょうどいい暇つぶしができたと思って、谷本さんは西野さんの本を読むようになりました。
(それに、ちょっとイケメンだし)

西野さんの本を読むと、少し自分にも心当たりがあるような気がしました。

・人と違う意見を言うと叩かれる
・お客さん目線の仕事が理解されない
・がんばっても冷ややかに見られる

孤独の中を突き進む西野さんの考え方や実際の行動は、谷本さんのこれまでの経験を肯定してくれているようでした。

(この人たちの話を、もっと知ってみたい)

しばらく散歩と読書を繰り返す日々が続いた後、谷本さんは少しずつ西野さんの情報を集め始めました。ブログも読み、YouTubeも見て、退院する頃にはオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」にも入りました。

こうして谷本さんの日常は、少しずつ変化していくのでした。

◆ オンラインサロンの日々

オンラインサロンに入ったとはいえ、中身は西野さんのメルマガです。西野さんがFacebookに投稿する記事を読む日々が続きました。

サロンメンバーのコメントや投稿を読むと、オフ会やイベントも開催されているようでした。が、谷本さんにそこへ飛び込む勇気はありませんでした。

「きっと今さら飛び込んでも、もう輪ができていて入りづらいだろうな」
本音ではサロンメンバーに会ってみたいと思いつつ、人見知りが発動して動けずにいました。他のメンバーの投稿やイベントを端から眺める日々が数ヶ月続きました。

世間が緊急事態宣言を迎えると、サロンでは横のつながりが増えました。
「サロンメンバー限定のTwitter(通称、鍵アカ)を作りませんか?」

メンバーの自粛疲れや経営難を危惧して、西野さんがコミュニティ強化を図ったのです。これをきっかけに、サロンメンバーがつながり始めました。谷本さんは、まだつながるきっかけをつかめずにいましたが、大事なことに気付きました。

「……広島にも、サロンメンバーがいる!」

探してみれば、近くにメンバーがいただけではありませんでした。西野さんの絵本の世界観を表現した「スナックCandy」まで、広島にあったのです。

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◆ 近くにあると、行ってみたくなるのが人の心……

「でも私が急に行って、どう思われるんだろう? 変に思われないかな?」

それでもまだ、谷本さんは動き出せずにいました。次々とアクションを起こしていくメンバーさんの情報は追いかけるものの、自分からはまだ動けません。サロンに入会して半年、ずっとこんな日々が続きました。

・自分でイベントを企画してオフ会を開く人がいるのかー
・西野さんのVoicyをイラストにまとめてる人もいるんだー
・西野さんのコンサルでお店を作る人まで出てきたなー

メンバーの動きを追いかけていくにつれ、谷本さんは少しずつ他の人の活動が見えてきました。企画の立て方、情報の発信、人との繋がり方……いろんな動きを見ていくうちに、思いついたことがありました。

「あれ? これなら私もできるかも」

谷本さんの頭の中に、急にイベントのイメージが浮かんできたのです。イベント企画の経験はありませんでしたが、みんなの動きを見ているうちにノウハウが見えてきた気がしました。

・同じ情報でも、何度も発信するのが大事なんだな
・人の投稿にコメントしたり、DMを送ったり、根回しも必要なのか
・参加者の把握や日程の調整には、アプリを使った方が良さそうだな

もともとの熱い性格も後押しして、谷本さんはイベントの準備とオンラインでの交流を重ねました。オンラインサロンに入会して半年、何もできなかったところから、谷本さんは急にオフ会を開催することになったのです。

◆ 一つ歯車がかみ合うと、すべてが動き出す

・オフ会には、島根から参加してくれた人もいました。
 後に出雲でスナックCandyを立ち上げる松島さんです。

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・松島さんと話すと、翌日はスナックCandy広島へ行くとのこと。
 頼んで連れていってもらうことで、念願の初Candyが実現しました。
・Candy広島には、夢や理想を語る人がたくさんいました。そこで、
 グラフィックレコードで話題になっていたグラコさんに出会いました。

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・グラコさんと意気投合して、谷本さんも自分の野望を語りました。
 「建築や設計のスキルを活かして、何かしたいんです!」
・すると、グラコさんからも相談がありました。
 「見取り図みたいな絵って描けます?」
 「描けます!」と即答したものの、たいした経験はありませんでした。
・グラコさんの提案で、Candy広島の見取り図を描くことになりました。
 Candyの様子を「のぞき見」するための絵を描き始めました。

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・「全国のCandyがのぞき見できるといいよね」という話になり、
 サロンメンバー数人でチーム「NOZOKIMI図」が結成されました。

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それまでの半年がウソのように、驚くようなスピードで次々と話が進んでいきました。

「私がやりたかったことって、きっとこういうこと!」

きっかけがつかめたことで、谷本さんは水を得た魚のようにイキイキと活動し始めました。西野さんやサロンメンバーを遠目に見ていた半年から一転、2020年後半はめまぐるしく移り変わっていきました。

見取り図の作成、支援者募集、サロンメンバーとの交流……いろんな活動を通して、谷本さんは他のサロンメンバーにも楽しんでもらえるような仕掛けを次々と考え始めています。

しかも、今は周囲との温度差に悩むこともなく、同じ気持ちでアクションを起こせる仲間がいます。今となっては、ためらっていた半年間が不思議にすら思えました。

◆ どうしてもっと早く行動しなかったんだろう?

踏み出せずにいる人には、「とにかく行動してみよう」と言ってあげたい。そのメッセージが伝わるように、谷本さんはNOZOKIMI図の活動に取り組んでいます。

「一歩踏み出す勇気に、今度は自分がなりたい!」

入院生活で未来が見えなかった日々。
指をくわえて西野さんの活動を眺めていた日々。
あの頃の自分に届けるように、「自分ならどうする? どうすれば自分にもできる?」なんて問いかけながら、谷本さんは今日もNOZOKIMI図の制作に取り組んでいます。

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ここから、彼女たちの物語の第二章が幕をあけるのでした。
(To be continued…)

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(執筆責任:勉強を教えない塾福幸塾)


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