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【漫画感想】『進撃の巨人』(1~32巻)エレンは世界にとって悪?

ネタバレします。

エレンってほんとブレないよなぁ。敵が変わるだけで、エレンの「一匹残らず駆逐してやる」、という思いは一貫してるよな。しかし、エレンが自分の大切な人を守るために突き進んだ結果、その大切なアルミンやミカサ達と闘うことになるのはなんとも皮肉です。

所要時間 9分

世界観重視  10 
内面描写重視 9
メッセージ性 10
考察要素   9   合計 38

1時代背景反映型

突然ですが、この記事を紹介します。

時代ごと(およそ10年単位)にアニメや漫画に共通するコンセプトを指摘していて、とてもためになる記事です。私もこうした大局の視点を持ちたいです!

この論は、勿論全ての作品に当てはまる訳では無いですが、有用性はかなりあると思います。

そして、私が注目した点は「10年代」の命題です。

記事を要約すると、「10年代に共通するテーマの一つは、自分らしく好きなように生きること。なぜなら、世界は複雑かつ壮大で個人の力では変えられないから。だから、世界と対峙することは諦めて、自分が大切に思う事、美しいと思う事のために戦う。(=自分らしく生きる)」

「また、現実世界の問題も複雑かつ巨大なので今を生きる若者に通じるものがある。

まさにその通りだと思います!私は、その当時の(若者の)感覚とかテーマを反映した作品を「時代背景反映型」と呼んでいます。

学生紛争やデモに参加して、社会と対峙してそうした何か大きなものとの対立の中で、自身のアイデンティティを確立していくのが「1960年代」のテーマなら、(例えば『AKIRA』はこのテーマを上手く反映していると思います。)

自分が大切にしたいものの為に生きる。つまり、自分らしく生きることが「10年代」のテーマなのです。

私は、『進撃の巨人』にはあと二つ述べたい要素があります。

一つ目は、エレン=若者マインドのうつし身、という事。

全部がそうでは無いですが、いつの時代も既存の体制や社会に異を唱えるのは若者だと思います。(アメリカのカウンターカルチャーとか。)だからこれは「~年代」のテーマではなく、ずっと続くテーマですね。

そしてエレンを思い出してください。彼の特徴は、壁の中に閉じ込められている事への苛立ち、強力な対抗心、自由の渇望です。(進撃では翼がよく使われるのが印象的。=空を飛ぶ=自由の象徴。)

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                         ©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

現実世界に即して考えると、壁=既存の社会体制または大人の文化だと思います。そしてそれに息苦しさを感じ、変革を望む

誰しも若い頃は似たような感覚を抱いたことがあるのではないでしょうか。

エレンが若者精神の具現であるからこそ、現代の若者は強く惹かれたと思います。

二つ目は、真偽判断の難化です。

『進撃の巨人』=どんでん返しの物語として見る事も出来ます。つまり、敵がコロコロ変わる。ちょっと思いつく限りで書いてみます。

(無垢の)巨人→女型をはじめとする知性巨人→中央憲兵→王政、ロッドレイス→マーレ→そしておそらく世界

いや、変わりすぎぃ!

そして注目したいのは、敵が変わるたびに、今まで正しいと確信していたことが崩れる点。

例えば、絶対悪だと思っていた巨人は、実は楽園送りにされたエルディア人でした。アニやライナー、ベルトルトは世界を救うという大義があって壁内に侵入しました。

歴代のレイス王は壁外進出に消極的でしたが、それは人類を見捨てたわけではなく、初代レイス王が誓った「不戦の契り」の効果でした。

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             (C)諫山創/講談社

そしてマーレがエルディア(エレン達)を憎む理由は、昔エルディアが圧政を行って様々な民族を苦しめたから。

この状況、現代に似てると思います。つまりネットの普及、情報過多により何が正しいか確信を持てない場合が多いと思います。

ネット上で、短絡的な判断で相手を非難し、後で謝罪する人たちを今まで散々見てきました。

勿論、国立機関や有名な学術機関による情報は信頼度が高いですが、そうしたメディアがあると知らない場合、現代は情報の真偽判断が困難になり、容易に絶対の確信が持てない時代なのです。

そうした曖昧さが『進撃の巨人』にはよく表れていると思います。

後、この作品を読んでて怖いなぁと思うのが、エルディア側も昔は悪いことをしていた点です。

主人公サイドに非があり、マーレ側にも非がある。結末はどうなるのでしょう。

2復讐

先ほど紹介した記事では、自分らしく生きるという「10年代」のテーマの弊害も述べています。

敵も自分らしく生きるのなら、どちらかがその目標を達成できるまで、戦いが続く。つまり、妥協点が見つからず、戦いが泥沼化するのです。

これこそ、『進撃の巨人』が「20年代」に投げかける重い遺産であると、記事で述べています。

私は復讐系作品が好きですが、なぜ好きなのか分かった気がします。

復讐とは、良識など無視して、自分がそうしたいからすること。「20年代」のテーマと同じ性質です。

私は、現実世界で他者とぶつかった時にどうすべきかの答えを、無意識に復讐者か相手のどちらの言い分が通るか、その結末に求めているのでしょう。

だからあれほど復讐に惹かれるのでしょう。

復讐者を主人公にする作品は沢山ありますね。『ベルセルク』のガッツ。『ヴィンランド・サガ』のトルフィン。『コードギアス』のルルーシュ。古典だと、『モンテクリスト伯』のエドモンダンテスなど。

もちろん『進撃の巨人』のエレンも。

3遺志の継承

仲間の思いを受け継ぐこと、世代を超えて受け継ぐこと、過去の自分を受け継ぐことをこう呼んでいます。

分かり易い例は、『ジョジョ』のシーザーからジョセフへの継承。『Fgo』のキリシュタリアから主人公への継承。

『進撃の巨人』はこの継承の使い方が群を抜いて上手いと思います。

調査兵団は仲間の思いを受け継ぐことの連続ですよね。また、エレンの為に一体何人死にましたか?

そうして亡くなった大勢の者の堆積が、生き残った者に大きな影響を与えます。良く言えば、大義のための原動力ですが、過去に縛られているとも言えます。

それを象徴する絵はこれです!

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              (C)諫山創/講談社

うわぁ...キッッツ。

今まで死んだ仲間の為に引き返すことはできない、と感じられます。

また、この絵も象徴的です。

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              (C)諫山創/講談社

自由を求めて居住区を出た過去の自分を否定することは出来ない。その際、亡くなった命を無駄にしないために、進み続けなければならない。(グリシャは途中で諦めますが、エレンに諭されますね。)

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              (C)諫山創/講談社

『進撃の巨人』の凄い点は、この継承が敵にもあることです。例えば、ジークとクサヴァ―。「クサヴァーさん見ててくれよ」のセリフが印象に残ってます。

過去の犠牲を意味づける為に、どちらも負けられないのです!

最近のエレンの行動もそうです。自由を求めて歩み出したので、調査兵団の仲間の死を無駄にしないために、自由を手に入れるまでやり通す。そうして「地ならし」が発動されたのです。

もう一つ紹介したいのがこれ。

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             (C)諫山創/講談社

奇しくも、幼い頃のグリシャと同じことを言っています。そして、何を思っているのか、グリシャの目が印象的です。

直接言葉にしなくても、受け継がれていく思いもあるのでしょうね。

4伏線の仕込み方

この作品、切迫感がもの凄いですよね。いつ巨人が壁内に入って来て、人類が滅びるか分からない点とか。あのテンポ感でストーリーが展開していくので驚きです。

伏線というか考察要素の特徴として、謎が一つ解ける度に、さらに多くの謎が出てきますね。

女型捕獲後の壁中の超大型巨人とか。あれを初めて見た時の恐怖というか興奮を今でも思い出します。

あと、よく見かけるのが過去の記憶や回想を通して、考察要素を与える手法。

ショタエレンがグリシャを食べる記憶だったり、調査兵団が地下室の鍵を開けてからの、グリシャの過去編だったり。

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             (C)諫山創/講談社

こういう展開をよくしますね。


・BGMのススメ 主にアニメ一期から。

・『great escape』・・・後期ed ギターがカッコイイ!

・『夕暮れの鳥』・・・絵が怖いけど、なんか好き。

・『 巨♀~9地区』・・・アルミンの声がキコエル...キコエル。

・『Vogel im Kafig』・・・エレン巨人vs女型で流れてた。
            前半と後半の雰囲気の違いよ。

・『attack ON titan』・・・作曲者の澤野弘之は『UNICORN』と『RX-0』も作ったのか...天才か?

5まとめ

いつも通り要素を分析して終わります。

・時代背景反映型・・・現代の曖昧さと自分らしく生きるというテーマを反映
・遺志の(間接的)継承・・・「これはお前が始めた物語だろ」
               ex)グリシャ→エレン
・修羅の道、相対善・・・少数派である主人公側が目的達成のため多数派を
            倒す。ex)エレン(始祖の巨人化)vs世界 
            見方によってはマーレ側の方が相対善
・対大流・・・歴史認識問題や社会という大きな流れに巻き込まれていく
・精神讃歌・・・この世がいくら残酷でも精神の自由は不滅


ちなみに、私の推しはリコ・ブレツェンスカです。

最後までお読みいただきありがとうございました!





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