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社会問題の解決を仕事にする若者たち ~大阪でホームレス支援するNPO~


終わってみればあっと言う間に過ぎた2週間。
東京オリンピックでは僕より一回り~二回りも年の離れた
新世代の選手たちが感動的な活躍を見せてくれました。

古くは戦前・戦中を体験している東洋の魔女*1や前畑秀子*2の頃、
オリンピック選手は"国家の威信ために"成果を出す責任を負い、
いまとはスタンスも違うスパルタ訓練で鍛えられていました。
体育会にはまだ理不尽な習慣が残っている様ではあるものの...
いま、若きアスリートたちは年々レベルの上がる国際競技に挑みながら、
楽しさや喜び、感謝の気持ちを失わず輝いています。
 *1 昭和30年代に活躍した女子バレーボール日本代表チームの呼び名。
 "2 和歌山県出身の水泳選手。日本人女性初の五輪金メダリスト。


団塊ジュニアの僕らが、若かりし10代~20代の頃には、
学歴やそれに伴う報酬、名誉といった価値が幅を利かせていましたが、
時代と共にその価値観は変化し、成熟していっている様に思えます。
ソーシャルビジネス*3やNPO法人*4で働く若者が増えたのもその一部。
 *3 利他の心を持って、金銭よりも社会的な利益を追求するビジネス形態。
 "4 株式会社や合同会社などと異なり、利益を目的とせず、
  ボランティアに近い活動を行う法人。またその制度。

大袈裟な視点では、戦後日本はまず満足に食べることが優先課題でした。
それから世界の先進国にならぶ物の豊かさ(経済成長)を目指し、
先人のがんばりは国民総中流という大きな目標をクリアしてきました。

そして現代、「いまどきの若いのは」と心配する年長者たちを後目に、
世のため人の為に働くことを探してまで選ぶ時代になっています。
若い力で育んでくれているその空気は澄んで見えるし、
心から奔走する若者たちには敬意すら感じます。

そんな魅力を増す時代に、果たして自分の在り方はベターであるか?
人生の折り返しを迎えたいまこそ、自身のこれからを再定義するつもりで、
現代的生き方から刺激をいただき成長したいと思っています。

そういった興味を抱くなかで知った、大阪の地に根付く若者たちの活動。
こちらの一冊から僕なりに抜粋し皆さんにシェアさせて頂きます。
"ホームレス状態から脱出したいと望んだら、誰もが脱出できる社会"
をテーマに、大阪でHUBchari(ハブチャリ)事業などを展開する、
認定NPO法人Homedoor代表の川口加奈さんの取り組みです。

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14歳で"おっちゃん"と出会ってから、
 15年考えつづけてやっと見つけた 川口加奈
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川口さん  (活動も初期のころ)
 「なんで、ホームレスになったんですか?
  勉強していたら、がんばっていたらホームレスに
  ならなかったんじゃないですか?」

~そんな私の質問にも、おっちゃんは優しく答えてくれた。~

おっちゃん
 「わしの家には、勉強机なんてなかったんや。
   勉強しとったら、働きなさいって怒る母親やった」
 「わしの家は、田舎でな。貧乏やった。
   ずーっと畑仕事させられてたわ。
   高校はもちろん行かせてもらえんで、
   中学出たらすぐに釜ヶ崎に働きにやってきたんや」

~ホームレスになったおっちゃんたちの中には、
  勉強できない環境にあった人が多い。そんなことに気づいた。~
                    - P37 -

 昭和40年代の学生闘争を経験した団塊世代の親から、
 "ルンペン"という言葉を聞かされたことを思い出しました。
 ホームレス状態にある人を少々さげすんでいる印象のある言葉です。
 ですがリアルを知ると、世の認識には長年の誤解がある様に感じます。
 ホームレスに陥った方々のほとんどは真面目で仕事をしたがっています。
 建設関係もいれば料理人やデザイナー、会社経営者の経験談もあります。

 やむを得ずホームレス状態に陥ると脱出を阻む定番の壁があるそうです。
 ・住所や連絡先を失うと、雇用はおろか呼び出しもしてもらえなくなる。
 ・仕事のない期間が続くと仕事に向けて心身を整えるのが難しくなる。
 ・路上生活は意外とコストが掛かるため部屋を借りる貯金もできない。
 
 川口さんは、ホームレス状態にある方々が仕事や住居を手に入れ、
 社会復帰していくための階段作りを仲間たちと試行錯誤し続けています。
 その一つが、働いていない人が働く感覚を取り戻せるよう、
 就業のリハビリができる"ハブチャリ"レンタサイクル事業。
 仕事を見つけるのに必須の"住所"となる「アンドセンター」などです。

 その様な良い支援の甲斐あって壁を越えたおっちゃんたちは、
 次々に仕事を見つけて社会に復帰していくのです。


 ところで、家を失ってしまう方々の事情や状況には多様化がある様です。
 続く、本文からの抜粋をご覧ください。

ここ数年、ホームレス問題に変化の兆しが見られる。
・虐待されて家に帰れなくなった10代。
・DV被害で家を飛び出さざるを得なくなった女性。
・職を失い、帰国することもできなくなった外国人労働者。
他にもさまざまな要因で「家を失って」しまう。
特に、私と同い年の女性が相談に来たときには、本当に考えさせられた。
                                              - P6.はじめに -

 "ホームレス状態にある"と一見して分かるケースばかりでは無い様です。
 厚労省の2020年度調査では全国の路上で生活する人の数は3,992人。
 しかしこの厚労省の統計に集計のルール上含まれていない、
 "安定した住居がない状態でネットカフェ等を利用する方々"は、
 2018年度の東京都内だけの調査でも一晩に4,000人と推計されています。
 行政のセーフティネットでは対応できない複雑なケースも多いのだとか。
 
 川口さんが通学電車の車窓から見た大阪のホームレスの方々への関心は、
 収入や損得を考えたらなかなか進めない道であったことでしょう。
 何かできないかという思いから集った仲間たちと共有し議論し続け、
 ひとつひとつの課題をクリアして来られました。
 ときには生活資金のためにアルバイトをして凌いだ期間もあります。
 そこでは、有能さは勿論、真っ直ぐさや人望が大いにプラスに働いて、
 人の人生を変える素晴らしい事業に結び付いてきたように思います。

 この取り組みから刺激を受ける人がどれくらいいることでしょう?
 世のため人のため実践して動き出せる人がどれほどいるでしょう?
 いま正に何かをしたいと持っているあなたにお奨めできる一冊です。
 日本中の"選手たち"の活躍がこれからも楽しみです。

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