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工作舎の隠れ推し本#11 アジアの森羅万象を映す 『多主語的なアジア』

note連載企画「工作舎の隠れ推し本」の第11回は、日本を代表するグラフィックデザイナー杉浦康平氏の言葉の選集『多主語的なアジア』です。記事の最後に、プレゼント企画の詳細が書いてあります。ぜひご応募ください。


『多主語的なアジア』 杉浦康平

『多主語的なアジア』がインドを旅した

 旅(行)をする時は、工作舎の本を一冊持って行くようにしている。
それにしても、工作舎の本は重い。本は石だ。
もう随分前の事に思えるが、昨年9月に夏休みを取り、5年ぶりにインドに行って来た。
話は逸れるが、工作舎の夏休み取得システムは数年前から、7月〜9月の中で5日取れるようになっていて、これは最高だと思っている。(絶対変えないで!)
 
インドに行く時は、杉浦康平氏の『デザインの言葉シリーズ』を持って行くことにしている。
ある時は『アジアの音・光・夢幻』を、寝台列車でインド工科大学のナイスな学生三人がカレーのお弁当を食べている横で読んで、お土産にクルタやマハリンガムの音楽を買って帰ろう!となり(安直…)、列車のガタガタという音がこの本を読むリズムに合っていた。
話はまた逸れるが、この大学生に「日本でラマヌジャンチャンドラ・ボースの本を出してる所で働いてるねん」と言ったら、大変好感触で嬉しかった。(ただ、このチャンドラ・ボースが新宿中村屋の方だと思われていたかもしれない)
 
で、今回は『多主語的なアジア』を持って行くことにした。この中からテキストをここで引用したい。

◎私や、私を取り巻く世界を拡張しようとする欲望は、まさに生存の営みであるのですが、その一方で、このような自己、自我だけに焦点をあてた自分だけの生存圏の拡張行為が、いろいろな意味で有限な地球に破綻をもたらしている…というのが現代社会の姿であると思います。
 
◎多視点的というのかな、「世界は自分だけのものではない。犬も主語をもっているし、森羅万象、ありとあらゆるものに主語がある。「オレが、オレが」の世界ではない全存在を知ろう」ということです。
世界を埋めつくす一つ一つのものの身になってみる。そうすると世界がどう見えるか。見えた世界の全体を自分の眼とともに理解する、という訓練ですね。

旅(行)中はリュックの中に常に本を入れて持ち歩き、時折、本と景色を撮影してみたり、美味いライムソーダと一緒に少し読むだけで良く、全く本の事は忘れている時が殆どであった。それでも、この本に書かれている「多主語的」を知り、胸に頭に腹に入れておくと役立つ視点であり、自分自身も訓練したいと思う。
また石のような本を背負って、どこかに行きたいなあと思っている。
とても「オレ的な」テキストでした……(佐藤)

『デザインの言葉シリーズ 多主語的なアジア』
旅(行)に持って行く推薦度★★★
サイズ:A5判変型(210mm*140mm)
重さ:500g


著者紹介

杉浦康平(すぎうら・こうへい)
1932年、東京生まれ・東京藝術大学建築学科卒。グラフィックデザイナー。 現在、神戸芸術工科大学名誉教授、同大のアジアンデザイン研究所所長を歴任。2011年秋、それまでの半世紀余にわたるデザイン作品の寄贈先である武蔵野美術大学美術館・図書館が「杉浦康平・脈動する本」展を主催。ブックデザインの集大成といえる作品群が一堂に会した。引き続きデザインアーカイブ特設サイト「デザイン・コスモス」が構想され、2021年に公開。さらなる更新を計画中。主な受賞・受章に、1997年の毎日芸術賞および紫綬褒章、2019年の旭日小綬章がある。 2018年に『太極球・誕生』と題されたフリッカー本を制作。1990年代からの構想だった「太極図の立体化」が明かされた。

書籍情報

『多主語的なアジア』
杉浦康平
●本体2800円+税 ●A5判変型 284頁
2010.7刊行

本書目次

【1】 「生命記憶」、そして「照応しあう」こと…
アジアのカタチ・アジアの心
生命のざわめきに 聴き耳をたてる…
生命記憶を形にする…

【2】 見えないものが、この世界を支えている—杉浦日向子さんとの対話
主張する模様 —日高敏隆さんとの対話

【3】 光る眼
唐草文(からくさもん)、生命樹(せいめいじゅ)の吐息
「天の火・地の水」 荒(すさ)ぶる神輿(みこし)
天の双龍(そうりゅう) 古鏡(こきょう)が語る宇宙図

【4】 「オームの波動」宿す
アジアの森羅万象をみたす多主語的なもの
アジアの多主語的世界に魅せられて—聞き手=津野海太郎


プレゼント応募方法

X(旧:twitter)facebookで「#工作舎の隠れ推し本プレゼント」をつけて投稿した方、あるいはメール(saturn@kousakusha.co.jp)でご応募の方に、最大3名様に抽選で『多主語的なアジア』をプレゼント!
当選した方には、DMメッセンジャーメールにて連絡いたします。期日は「2024年6月13日(木)」まで。皆様、どしどしご応募ください!

次回の紹介書籍は森を切り開くことから文明は始まった『森の記憶』です!


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