見出し画像

今、蒼い時/山口百惠「蒼い時」

女にとっての自立を私は、こう考える。生きている中で、何が大切なのかをよく知っている女性。それが仕事であっても、家庭であっても、恋人であってもいいと思う。(「引退」より)

山口百恵さんは、もはや説明不要の、言わずと知れた昭和を代表する歌姫であり、女優です。
俳優の三浦友和さんとの結婚を機に、21歳で惜しまれつつ引退しましたが、その引退コンサートは今も伝説になっています。


「蒼い時」は、そんな百恵さんが、歌手の山口百恵としてではなく、一般人の山口百惠として綴った自叙伝です。百惠さんの出生、生い立ち、恋、仕事や芸能界引退についてが赤裸々に語られています。

この本はこんな人におすすめ

①昭和のアイドル、懐メロが好き
②女性の生き方について考えたい
③新たな決断をして、一歩を踏み出したい

それでは、この本の魅力を紹介していきたいと思います、ぴょん!

*過去の自分を切り捨てるための自叙伝

この本の中で百惠さんは、芸能活動中、心ない言葉を投げつけられたり、容赦なくプライバシーに踏み込まれることが幾度となくあったと語っています。マスコミに活字によって傷付けられたこともあり、本書の中では「活字で自分を表現していくということは、苦痛を伴う作業だった」とも語っています。

なぜ、そうまでして自叙伝を書いたのか。
それは、スターとして生きてきた過去を切り捨てるためでした。出生、生い立ち、恋。それらを赤裸々に綴る百惠さんは、歌手でも女優でもなく、一人の若い女性です。ページをめくるたびに、百惠さんを飾っていた肩書きが剥がれ落ち、一人の女性としての姿が表れてくる気がしました。

特に、「随想」の章では、中学生の時に新聞配達の仕事をした思い出、「プレイバック part2」を歌った時の化粧の思い出、好きな色のこと、髪型のこと、金銭感覚のことなどが綴られています。より百惠さんを身近に感じられ、その凛とした考え方に感動しました。

*女性の生き方とは

百惠さんが引退を発表した当時、「結婚したら仕事を辞める」というスタンスを、批判されたこともあったそうです。
令和の時代になった今、「結婚しても家庭に入らず仕事を続ける」「仕事を辞めたくないから結婚しない」という女性の話をよく聞きます。

けれど、仕事をする女性が、家庭に入る女性より偉いのでしょうか。
女性の活躍が叫ばれる今こそ、読んでいただきたい本です。

*「倖せになります。」

この本の最後は、この言葉で締めくくられています。
「幸せ」ではなく「倖せ」となっているところに、「人」によって幾度も傷つけられた百惠さんが、愛する「人」のために、スターでありながら芸能界を退き、ひとりの「人」として一歩を踏み出していく決意を感じました。

この本を読み終えた後、私は、この原稿を書いている百惠さんの姿が、目に浮かぶような気がしました。原稿用紙に紺色の万年筆を走らせ、几帳面な行書の字で言葉をしたため、自分の過去と向き合う姿。きっとその様子は、とても凛然としたものであったと思います。

また、読了後、百恵さんの「さよならの向う側」を聴くと、その歌詞の意味をより深く味わうことができ、心が揺さぶられました。

この本を読んで、ぜひ山口百惠さんという一人の女性の生き方に触れてみてください。
その潔さ、凛々しさに感動するはずです、ぴょん!


(2021年6月23日にはてなブログで公開した記事を、一部加筆修正しました。)

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?