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恋は僕を盲目にさせる

片想いをして5年ほど経っただろう。でもその彼女は去年結婚した。
とうとう想いを伝えられなかった。

ご飯を食べながら君は、今度結婚するんだ。と呟いた。どんな思いで伝えてくれたんだろう。
少し寂しげな君の表情は僕を困惑させていた。

君と初めて出会ったのは専門学校。たまたま同じクラスになった。3年間クラスメイトは変わらないのだけれど、僕が君と初めて話したのはたしか2年生だった。
1年生のころは連んでいたグループが全く違い、話す機会も全くなかった。正直、名前も顔も全然分からなかった。笑

初めて話した時のことをよく覚えている。クラスメイトで仲の良かったR君とKPOPの話をしていて、この子も好きなんだよって紹介されたのが初めての会話だった。
最初の印象は天真爛漫と言う言葉が1番だろう。
常に元気で、誰に対しても優しく、何より笑顔が可愛い。一目惚れだった。

それから、学校へ通うと話すようになり、仲良しの4人グループがいつの間にかできていた。
KPOP好きで物知りなR君、誰が見ても美人な優しいAちゃん、いつも元気で笑顔が可愛いSちゃん、そして僕。
この4人で休み時間になるとすぐに集まり、お喋りをして、お昼の時間になると購買へ4人で走って買いに行き、廊下で机を出してくだらないけど楽しい話を永遠と喋りあっていた。

いつしか学校へ行くことが目的じゃなくて、3人に会えることが楽しみになっていた。

僕の学生時代といえば、ずっとスポーツ漬けの毎日だった。しかも高校は男子校。
だから僕にとって、専門学校時代はマイセカンド•アオハルだった。
学校へ行けば3人に会える。他愛も無い話で盛り上がり、常に4人で行動をしていたので他のクラスメイトも先生からもあの4人は本当に仲がいいと有名だった。


やがて専門学校も卒業となり、4人で会う機会はほとんど無くなってしまった。
でも、Sちゃんとは頻繁に連絡をとり、2人だけで遊ぶことが増えた。
2人の好きなラーメン屋さんへ行き、そのあとはスタバでお茶をすることがいつしか2人の定番になっていた。

僕は彼女と待ち合わせをしている時間がとても好きだった。彼女よりも少し早めに着いて、人混みの中を彼女が僕のことを探している姿がとても可愛くて愛おしかった。
僕を見つけると笑顔で走ってきてくれて、ごめん!待った?と毎回聞いてくれる、ちょっとしたことでも気を遣ってくれる彼女に僕は虜になってしまった。

僕は今日、彼女に思いを伝える決心をして家を出た。
今日こそ好きって気持ちを伝えるんだ。そう決めていた。
いつも通り、少し早めに待ち合わせ場所に着き彼女を待った。
数分後、ごめん!待った?と小走りで駆け寄ってきた。今日も天真爛漫な彼女は可愛かった。でもどこか寂しそうな表情をしていたのは、彼女自身も決心していたのだろう。

「結婚するんだ。」お昼ご飯を食べながらそう呟いた。
僕は今日、好きって気持ちを伝えるんだ。と思っていたが先を越されてしまった。
「え、あ!そうなんだ! 結婚おめでとう!」かなり引きつっていた顔だったと思う。笑顔をどう作っていいか分からなくなっていた。

その後の会話はほとんど覚えていなかった。頭に入ってこなかった。
いつも通りスタバへも行ったが、何を話していたか全く覚えていなかった。
結局、思いは伝えられなかった。

その日の夜は悔しくて、自分が情けなくて寝付けなかったことはよく覚えている。

しばらく彼女には連絡ができなかった。


1ヶ月後、彼女から連絡がきた。
「久しぶり!来週ご飯食べ行こ!」いつも通りの誘いだった。連絡がきて嬉しい反面、どういう顔して会えばいいだろうか。そういうことを考えていた。

当日、待ち合わせ場所に彼女が先に着いていた。
「今日は早いね。珍しい」とちょっといじわるなことを口走ってしまったが、彼女は「たまにはこういうのもいいでしょ」と屈託のない可愛い笑顔でそう言った。
その笑顔でつまらないことばかり考えていた自分が恥ずかしかった。

結婚はしてしまったけど、たった1人の大切な人には変わりないんだ。

正直、結婚を諦めてくれればいいと思ったこともある。
どこかへ連れ去ってしまいたいと思ったこともある。
いつも元気で、天真爛漫で、誰に対しても優しくて、笑顔が可愛くて、そんな彼女を幸せにできるのは僕しかいないと本気で思っていた。授業中、いびきをかきながら爆睡してる彼女、授業が終わっても全く起きない彼女、何でも器用にこなしちゃう彼女、気を遣っていないように見えて実は誰よりも人に気を遣う優しい彼女。 
強い人間に見えて、実はとても繊細な彼女。僕が体を壊した時に、大丈夫!と一言笑顔で言ってくれた彼女。
そんな彼女を必要としていたのは僕でした。

でも結局心の中で思っているだけで、彼女の前では素直になれませんでした。
あんなにそばにいて、いつでも言えると思っていた一言が結局一度も言えませんでした。 
たった一言が言えませんでした。

僕は、彼女のことが好きでした。


君の幸せだけを願っている。
君が日々を笑って暮らせることを祈ってる。
幸せになるんだよ。


結婚を機に遠くへ引っ越してしまったことで君と会うことは無くなってしまった。


Sちゃん
僕が人生で1番好きだったのは君でした。
君以外考えられなかった。
どうか、どうか、毎日を笑って暮らしてください。

20代の青春をありがとう。

大好きでした。

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