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箱根駅伝にこびりつく思い出。市民ランナーになって思うこと

もはや正月の風物詩である箱根駅伝。1月2日と3日の朝からお昼にいたるまで、食っちゃあお尻をぽりぽりと掻きたい、そんなダラダラと過ごしていたい時間にうってつけ。お餅を頬張りながらテレビの前でエキサイトする。そんな正月ルーティンをもう何年と過ごしてきただろう。

実家でテレビを見ながらこれを書いている。ちょうど10区のランナーが走り出したところだ。繰り上げスタートは何度見ても辛い。すぐそばまでたすきを渡しにランナーが近づいている場合はなおさら辛い。

10代までまったく興味のなかった箱根駅伝を見るようになったきっかけ。それははっきりしている。

僕は20歳になる年に進学のために上京した。進学先は東洋大学。しかも2008年のこと。その年の経済学部にあの柏原竜二さんが入学していた。多くの人がご承知の通り、2009年正月の箱根駅伝で柏原さんは5区の山登りで8人抜きの偉業を達成。「山の神」「山の神童」と呼ばれた。そのまま東洋大学は初の総合優勝。翌年の2010年も総合優勝を果たす。

2009年の1月2日は自分のアパートだか、数駅先で暮らす兄弟の家だか、どちらかで過ごしていた。テレビのチャンネルはたまたま箱根駅伝だった。そこで柏原さんの走りをはじめ、ランナーたちの勇姿や自分の通う大学の優勝を目の当たりにした。友人たちと交わすメールでも「うちの大学すご!」みたいな会話が繰り広げられた。その高揚感もあり「箱根駅伝おもしろ!」と感じたことを覚えている。

箱根駅伝以来、自分の大学名を告げると「ああ、箱根駅伝のところじゃん!」というふうにすぐに認知してくれることが増えた。それは地元である宮崎においても一緒だった。箱根駅伝に自分はまったく関与していないのに、なんだか誇らしげだった。走ったランナーたちとたまたま同じ学校に通っているというだけなのだが。

その時期の東洋大学はスポーツ分野で注目が浴びることが多かった。駅伝のほかにも野球やらなんやら活躍していた。そんな大学が爆発していた時期に在学していたため、大学全体がとくにスポーツでフィーバーしていた空気、その雰囲気をリアルタイムで味わっていた(2012年のロンドンオリンピック・ボクシングで金メダルを獲得した村田諒太さんが大学職員をしていた時期でもある)。大学の卒業式、たまたま座った席の目の前が柏原さんだったのはいい思い出かつ光栄な出来事だった。

そんな空気もあり、新年といえば箱根駅伝だよね、といった感じで毎年テレビに釘付け、あるいは移動中でもソワソワと東洋大の順位を気にするようになる。

それから時は経て、地元宮崎へ帰ってきてからは自分もランナーのはしくれになった。なんの因果か。大学生時代に自分が走ることに興味を持つなんて想像できただろうか。

市民ランナーとしてマラソンにも出るようになってからは箱根駅伝もただただ母校を応援するだけはない、ただ感動を味わうだけではない楽しみを得るようになった。

駅伝ランナーたちがいかに速いペースで走っているのか、彼らのフォームの綺麗さ、体幹の強さ、履いているシューズのメーカーなどなど。いちいち細かいところまで見るようになった。自分が走る人間になったからこそ、彼らの凄さ、怪物さがわかる。1kmを2分50秒切るようなスピードで走るってどういうことよ、それを20〜23km続けるってどういうことよ。その距離を1時間ちょいで走り切るってどういうことよ。

そこに至るまでどれだけの練習量とストイックな生活を続けてきたのだろう。

どうしても順位ばかりが目につくが、走っているランナーたちはみんな化け物級。そう感じるようになってから、ランナーたちにはリスペクトしかない。

この時点で、青山学院大学が1位でゴールした。監督やランナーたちの顔につられて少しウルっとする。続いて駒沢大学のアンカーが大手町を疾走してきた。待ち構える仲間の顔がこれまたじんわりくる。城西大学も初の3位おめでとう。

ランナーたちはみんな何を思いながら走っていたのだろう、何を背負いながら走っていたのだろう。たすきを渡したとき、受け取ったとき、そしてゴールをくぐったときに何を感じているのだろう。一人一人の表情からは滲みでてくるものがある。

自分がランナーになってからというもの、箱根駅伝を見るたびに走りたくてウズウズしてくる。毎回、それはなんでなんだろうと考えるが答えがなかなか出ない。走りたい、という欲求以外のものが出てこない。

箱根駅伝を走ったランナーの皆様、本当にお疲れ様でした。
母校の東洋大学、総合4位おめでとう。


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