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つくっちゃえばいいんだよ、ZINE

はじめに


ZINEという文化は、ここ数年でだいぶ浸透してきた。ここ宮崎県も例外ではない。

宮崎県でZINE文化を浸透させるきっかけとなったイベントがある。

それが「Zine it!」。
2022年は11月20日に開催が予定されている。今回で13回目。宮崎県では名の知れたZINEイベントだ。今年のエントリーはすでに終了しており、参加表明をしているのはこれまでで最多の90名。

僕がZINEの存在を知ったのも実はこのイベントだった。2014年か2015年のころだったと思う。一度イベントに行って、その表現の自由さに衝撃を受け、宮崎でもクセがあっておもしろいことを考えている人、表現しようとしている人がこんなにもたくさんいるんだと驚いた。そして、“このレベル(褒めてる)”なら自分もできると自信が湧き、翌年からお手製ZINEを出すようになった。それ以来、Zine it!には毎年出展し常連となった。

今でこそ「Zine it!に出している人」という認知をしてもらうようになり、これから出そうと思っている人たちにZINEのつくり方や、出展するZINEのクオリティについて質問されるようになった。みんな「ちゃんとした」ものをつくりたいらしく(作品群のなかで恥をかきたくない?)、どの程度なら大丈夫かみたいなことを気にしている。

そのたびに「つくっちゃえばいいんだよ」と回答している。
相手は拍子抜けをするか、憑き物が落ちたような表情をする。「ああ…」というような声が聞こえてきそうな口の開き具合で。

ZINEは自由だ。自分の好きなことや熱中していること、普段から行っている表現などを紙に落とし込んでしまえばいい。絵でも写真でも詩でも文章でも、はたまた音楽でも。あなたなりの発想で紙面上に表現してしまえばいいのだ。

どんなZINEをつくればウケるか、売れるかよりも、己のほとばしるパッションを紙に叩きつけたようなZINEのほうがおもしろい。それはつくり手にとっても受け手にとっても。ZINEにマーケティングなんて不要だ。

もっとラフにつくれ。
それが僕のメッセージ。

そんでもって、以下に続く文章は2021年のZine it!で販売したZINEにつけた付録の手紙である。
ここにだいたいの僕のZINEに対するメッセージが含まれている。

これからZINEをつくってみたいと思う方は参考にしてみてください。


付録:Zine it! だけの手紙


買ってくれたあなたへ

お買い上げありがとうございます。
めちゃ数あるなかから選ばれるとは…。嬉しいです。ほんとだよ。

なんでこんなZINEをつくったのか、買ってくれたあなたにつらつら語りたくて手紙を記しました。

最近ZINEをつくる上で念頭に置いているのは、極力文章を入れないこと。
僕はエッセイもののZINEから出発して、しかも数年間もの書きの仕事をしているので、「文章の人」っていう印象がついちゃってます。

このZine it!でも最初の3年は文章もののZINEを出品してました。
だけどイベントでいろんなZINEに触れ刺激を受けるなかで、僕自身文章ZINEに飽きてしまったところもあるし、ものを書く人っていう印象もぬぐいたいなと思うようになって、そこからひたすら自分の好きなようにつくることを毎年のテーマとしてやってきました。

その結果として「自分の人生に影響を与えたもの」「自分の好きなおっさん」「パーソナルカラー」なんてテーマでこれまでつくってきました。そして、文章を主題とするつくり方を避けてきました。ある意味、もの書く人間として文章が人より「うまい」のは当然かもしれない。それは日々の訓練の賜物なので。

でも見てほしいのはそこじゃあないし、それじゃあつまらないなと。
僕は文章を見てもらいたいんじゃなくて、僕の世界観とか自分の内側でうごめいている「何か」を感じとってほしくて、それを表に現したくてZINEをつくっているんです。だからそれはイラストじゃないと伝えられないかもしれないし、写真じゃないと伝えられないかもしれないし、言葉じゃないと伝えられないかもしれない。
いろんな表現方法をZINEってやつで試行錯誤、実験しているんです。

それから、ZINEをもっと気軽につくってほしいという気持ちも、今回こめてつくっています。
ZINEのつくり方を結構質問されるようになりましたが、みんななんだか立派なものをつくらなければいけないように捉えているところがあって。そのイメージのせいで、つくりたいけれどつくれない、イベント出品したいけど出品できないってことが起きているなって感じます。
めちゃくちゃデザインされてるとか、ちゃんと製本されているとか、それはそれでいいんだけど、それに囚われるとそもそもの「つくりたい」っていう熱量が冷めてしまう。

もっとラフにつくればいいのにって。この10年くらいのZINEブームでマニュアル本やネットの情報も増えて、それらのハウツー通りにつくらなければ「正解」じゃないみたいな。
いやいやもっと遊ぼうぜと。DTPソフト使わなきゃいけないわけではない。ちゃんと製本できなきゃいけないではない。ちゃんと文章書けなきゃいけないわけではない。ちゃんと写真撮れなきゃいけないわけじゃない。ちゃんとイラスト描けなきゃいけないわけじゃない。

今の僕は、仕事としてそういった技術はある程度身に付けなければいけなくなってしまった。

けれど、ZINEについてはラフにつくりたいと思っています。そう思うきっかけを与えてくれたのは、東京の渋谷にあるユトレヒトという書店で見つけたZINE。それに衝撃を受けたんです。
スカーレット・ヨハンソンやビヨンセなど海外セレブのおっぱいやアンダーヘアをイラストで紹介するという内容。ちなみにすべてつくり手の妄想。そのテーマにも笑ったけれど、そのZINE、なんと普通のA4コピー用紙にイラストをモノクロ印刷して製本しただけ。それで価格は800円(税抜)。どんだけ強気なんだよとも思いましたが、あとになって「あ、それでいいんだな」ってストンと腑に落ちるものがあった。

(ちなみにこのZINEは宮崎市内のACTORS SQUARE COFFEEに寄贈しています)

それ以来、ちゃんとつくることをやめました。でも手はいっさい抜いてないです。
熱量持ってつくろう。万人ウケしなくていい。こいつヤバいって思われたら勝ち。変人上等。
好きなことを好きにつくるってことだけを考えて、集中して。

今回のZINEは文章こそ入れてはいるけれど、オプションみたいなもんです。エッセイとかコラムはもともとnoteに書いてたものを転載しただけだし。それに印刷だって雑だし、使ってる紙だって上等じゃあない。ページの組み方だって考えてはいるけれど、そこまでこだわっていない。製本だって簡単に。とにかく自分がしたいことだけを詰め込みました。

周りと比較したり、意識してしまうと、正解や最適解を求めがち。そして、それに対する回答も溢れている。
それよりは自分にとって「最善」だなって思えるもん選びたいし、つくりたいじゃないですか。

ZINEをつくるのは楽しい。
イベント前や入稿〆が迫ると苦痛なときもあるけれど、基本楽しい。

これ読んで「アタシもつくりてぇ〜(→「つくりたい」と「つくり手」のダブルミーニング!)」と思ってくれたら嬉しいし、そうじゃなくても僕のウザさが伝われば嬉しいし、とにかく僕は買ってくれた人読んでくれた人大好きですアイラブユー月が綺麗ですねと言いたいんです。

ではまた。



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