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病気や生理の話が「タブー視されない」世の中はいいが「話さなきゃいけない」世の中になるのはちょっと辛い

私は昔、祖母の介護をしていた。介護が終わった後、燃え尽き症候群と対人恐怖症になり、パニック障害もひどくなって引きこもり期間を過ごす。

そうなった理由の1つが「祖母が生前、周囲の人に言っていたこと」を、周囲の人から聞かされてショックを受けたことだ。

孫はろくでもない仕事しかしていないから、介護につかってもいい

上の言葉は、他のnoteなどでも書いたことがある。そして、もう1つなかなか衝撃的だった内容がある。

孫は生理が重くてしょっちゅう寝込むから、働けない。仕方なく内職程度のことをしている。

※※内職も立派な職業だし、仕方なくすることではない。その点でも大変失礼な発言ではあることはお詫びいたします

年に1度会うか会わないかの親戚や知人から、人も大勢通る道の真ん中で
「あんた、生理痛がひどいんだって?」
「寝てばかりいるんだって?」
と言われて、どれだけショックだったか。

今にして思えば、そんなことを聞く方も聞く方だし、祖母も「ちょっと体調を崩し気味で……」と言えば済むところを、「生理が重い」なんて言う必要があるだろうか?

まだ30歳になったばかりだった私は、悔しい、恥ずかしい、という思いが強かった。やがて「ろくでもない仕事」「生理痛で寝込む」という人間だと、みんなが笑っているんじゃないかという不安が強くなり、だんだんと誰にも会いたくなくなっていった。

病気や生理の話がタブー視されない世の中になるのは、いいことだと思う。ただし、「発言したい人が発言できるようになる」のはいいが、「言いたくない人は、言わないという選択ができる」「秘密にしておきたい人の秘密が守られる」こともまた、同じように認められて欲しい。

私は、メニエール病の人のためのWebサイト乳腺外科での話を公開している。これは先生方とも話をして、自分から「やろう」と決めてやっていることだ。自ら発言していることだ。

「言わない」と決めている部分だってある。それを「病気や生理の話はタブーじゃないよ、ほらほらあなたも話なさい」と強制されるとしたら、とても私は生きづらくなる。

私は今、「『ろくでもない仕事』『生理が重い』と言われて精神が削られた」という話も含めて、隠すことはしていない。でも、そうなれるまでに時間と治療と、社会復帰という段階が必要だった。

病気のことを公表して、キラキラ輝いて生きている人は、純粋にすごいと思うし、勇気がある人だとも思う。でも、病気にかかった人、生理痛が重い人、全員が「公表してキラキラ輝いて生きるべきだ」と強要される世界も、なんだか違う。

闘病の記録を公開すること、病気を抱えていると打ち明けることにも、リスクはある。公開するならちゃんと、リスク対策も考えて行うべきだし、私も自分の経験をもとに、「公開するリスク」に関する相談に応じている。リスクを考えて「公開しない」という選択も尊重されてほしい。第三者があれこれ噂したり、推測をするのも、できれば心の中でだけしていただいて、発言するときには少し考えてほしい。

河野陽炎の本とコンサルティング




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