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100日後に死ぬ父。51日目。

 今日も母が家に居ないので、夕ご飯は昨日と同じ冷やしうどんを作った。父の分も作ろうとしたけれど、父は今日も飲みに出かけるらしく、夕ご飯はいらないと言われた。
 ひとりで夕ご飯を済ませ、食器を洗い、部屋に戻る途中、身支度を済ませた父に「お金を貸して欲しい」と言われた。昨日少し使いすぎたらしく、手持ちが心許無いのだそうだ。
 僕は一瞬貸すかどうか悩んだ。貸したところで飲み代に消えるのは間違いないのだし、息子にお金を借りてまで飲みに行こうとしている父を止めるべきだと思った。
 けれど僕がお金を貸さなければ、父はお爺ちゃんにお金を貰いにいくのは目に見えて分かっていた。お爺ちゃんがもう寝ていた場合は、お店のツケにするか、最悪の場合友達から借りるかもしれなかった。僕はお金のことで誰かに迷惑を掛けたくはなかった。だから僕は父にお金を貸すことにした。
 本棚に隠しておいたヘソクリ箱から、僕は父に二万円を渡した。殆どは父がギャンブルで勝った時に貰ったお金なので、僕はそれをただ父に返したと思うようにした。父はお金を受取ると、「ありがとう。すぐに返すから」と言って家を出ていった。
 父がお金をすぐに返せるとは思えなかった。それでも誰かに迷惑を掛けるよりはましである。

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