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100日後に死ぬ父。85日目。

 今日も夜に父が出かけて行った。お爺ちゃんの家に行くと言っていたけれど、流石にもう無理のあるいい訳である。
 二日後に病院に行くのだから、明日また出かけるようなら流石に止めなければならない。

 父が帰ってきたのは、夜の十一時くらいだった。母はもう寝ていて、僕はまだ起きていた。父の機嫌が悪いのは、階段を上がる足音でわかった。酔っているのかどうかは分からないけれど、何やらブツブツと独り言が聞こえてくる様子から、少しは飲んでいるのかもしれなった。
 父が自分の部屋に戻ると、ブツブツとした独り言は、大きな独り言になり、怒鳴り声までとはいかないにしても、大きな声で怒りを露わにしていた。何を言っているのかはわからいけれど、父がこれほど怒っているのは久しぶりなことだった。
 怒りの原因は分からない。けれど出かける前はいつも通りに見えたのだから、出かけた先で何かあったのは間違いない。

 大きな独り言はしばらくすると聞こえなくなったので、どうやら父は寝てしまったようである。僕はというと、いろいろ気になってしまって眠れなかった。これまでの経験で、父の怒りが寝て収まることはなかったので、明日は父の扱いが難しい日になりそうだった。

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